
医療事務職に誇りをもって働くあなたへ~「ただの受付」ではない、医療と人をつなぐ専門職として~
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
医療事務は、医師でも看護師でもない事務的な作業を行っているだけ・・・だって資格もなければ何もないのだから・・・と思っていませんか?
例えば受付職員の仕事内容にしても、この10年余りで大きく変わってきました。皆さんが目指す医療系事務職は、単に受付や会計をするだけの仕事では終わらないようなことが増えています。
医療機関に勤める事務職の仕事は診療報酬制度や保険制度を正しく理解し、診療行為を経営的な視点から支え、患者さんの不安を受け止める・・・。言い換えれば、「医療を運営する力」と「人を支える力」の両方を持つ専門職だと思います。けれど、皆さんは「事務なんて・・・」と思っていませんか?
今日は、医療現場に欠かせない「顔」であり「縁の下の力持ち」である「医療事務職の役割」を考えていきましょう!
目次
時代が求める「医療を支える多機能職」
ここ数年で、医療を取り巻く環境は大きく変わりました。
電子カルテ、オンライン資格確認、診療報酬の複雑化、感染症対策、患者からのハラスメント対応─これらすべてに事務職が参加しなければいけません。
こうした現場で、医療事務職員は「制度」「安全」「対応」の要としてフロントに立ち、正確に、そして丁寧に仕事をこなさなければいけないのです。事務職員は決して目立つ仕事ではないかもしれません。
でも、ミスが許されない緊張感と、誰かの力になれるという、やりがいがあるはずです。
レセプト請求事務~診療行為を正しく請求する~
電子カルテが発展してきた今、医療行為の大半は電子カルテの情報から自動的にレセプトコンピュータ(レセコン)に取り込まれてくるようになりました。医療機関の経営を支える重要な収入の柱が、正確な診療報酬請求(レセプト)の作成です。
診療報酬は年々複雑化し、施設基準や算定要件も増えています。誤請求や請求漏れは、経営に直接的な影響を与えるだけでなく、監査対象や信頼性の低下にもつながりかねません。だからこそ、制度を正しく理解し、最新情報を常にキャッチアップできる事務職員の存在が不可欠なのです。
★請求事務のポイント★
✔ 正確な算定・届出管理
✔ 経営指標の分析・改善提案
✔ 保険請求のスペシャリストとしての役割
地域をつなぐ~連携のスペシャリストとして~
外来や窓口対応にとどまらず、地域医療連携の窓口として活躍する事務職員も増えてきました。
病院であれば、地域連携室があり、専門職として社会福祉士やケアマネジャー、看護師、相談職員等が配置されていることが多いものですが、クリニックではなかなか専門職を配置することはできません。
しかし、かかりつけ医と専門医、病院と診療所、医療と介護など、多職種・多機関をつなぐハブとしての役割は求められ、調整力・伝達力・段取り力がとても重要となります。
★連携事務職員としての役割★
✔ 地域連携室・紹介・逆紹介の調整
✔ 情報提供書や診療情報の管理
✔ 医師・看護師の情報を地域に伝える「橋渡し役」
これからは「事務=内勤」という考え方も、少し変わってくるかもしれません。
「地域と医療をつなぐ顔」としての存在感が高まっています。新たなフェーズに入ってきた「地域連携」としての役割も求められているように感じます。
診療部門をサポートする~働き方改革の担い手として~
医師や看護師等の医療専門職の働き方改革、そしてタスクシフト/タスクシェア等が求められている昨今ですが、医師や看護師の業務負担を軽減し、医療職が本来の業務に集中できる環境を整える・・・これこそ、医療系事務職が今後さらに担っていくべきミッションのひとつです。
★医療系事務職員が求められるタスクシフト/タスクシェア★
✔医師の指示を代行入力(医師事務作業補助者)
✔カルテ作成補助、診断書下書き、面談スケジュール調整
✔看護師や技師の業務に関する間接業務の補完
現場の動きをよく理解したうえで、「先回りの支援」や「見えない負担の見える化」ができる人材は、まさに“医療チームの縁の下の力持ち”です。
おわりに・・・笑顔と専門性で、医療の価値をつなぐ
医療機関はサービス業だといわれています。サービスの評価は第一印象で決まります。
患者さんにとっては、不安な気持ちを抱えて訪れる診療所で、一番最初に出会うのがあなたです。
だからこそ、「優しい笑顔」と「確かな知識・判断力」が求められるのです。
それはまさに、「医療人」としての誇りにふさわしい役割ですよね!
そして今、求められるのは「ただの事務職員」ではありません。
医療における事務職員は、経営・地域・診療の3つの領域にまたがって貢献する存在です。
制度や診療内容の理解に加え、コミュニケーション力、ITリテラシー、調整力、提案力といった多様なスキルも求められています。
クリニックをはじめとする医療事務を担う皆さん!
「私はただの事務員です」なんて・・・もう言わないでください!!
皆さんは「医療を支えるもう一つの専門職」であり、患者と医療者の間を結び、医療機関を内側から支えるプロフェッショナルです。あなたは、医療を支える一員であり、地域の健康を守る立場にあるのです。そして、クリニックを運営するにあたって、無くてはならない存在であり、そのような行動が求められていると思います。
これからの医療を支える新しい担い手として、皆さんが活躍されることを心から期待しています。
いっしょに頑張っていきましょう!
令和7年6月2日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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