
事務職員として押さえておきたい~医療法人と個人クリニックの違いと日常業務での注意点~
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
同じ「クリニック」でも、経営の形には違いがあります。
それが「医療法人立」か「個人立」かという、開設主体の違いです。
普段の業務に大きな差はないように見えても、実はこの違いが、多くの場面で事務職員の役割に影響を及ぼします。
今回は、事務スタッフとして知っておきたい「医療法人立」と「個人立」のクリニックの違いと、それに伴う実務上の留意点を整理してみましょう。
目次
まずは基本:医療法人と個人立の違いは?
クリニックの開設は「医師であること」若しくは医師以外・・・つまり「医師個人」か「医療法人」等の法人が開設することがあります。
項 目 | 医療法人立クリニック | 個人立クリニック |
開設者 | 医療法人○○会 (理事長、病院管理者は院長) | 医師個人 (院長) |
経営主体 | 法人の理事会で運営 | 開設者個人の判断 |
名義・届出 | 医療法人名義(法人印) 法務局に登記されている | 医師個人名義(個人印) |
責任の所在 | 法人としての責任 (理事長が代表) | 医師本人が全責任を負う |
定期的な報告 | 決算時期が決められる 決算後に届け出が必要 登記事項の変更が生じた場合変更登記が必要(登記完了届を保健所に提出する) | 確定申告(年単位で計算する)(所得税) |
相続・承継 | 法人が承継する (院長交代ができる) | 承継するには、診療所の廃止・新規申請の手続きが必要 |
事務職員として押さえておきたい4つの視点
さて、何となく、医療法人と個人のクリニックとは違う・・・ということが理解できたところだと思いますが、では、事務職員として何を知っておかないといけないのでしょうか?
ポイントは4つ・・・一緒に見ていきましょう。
ポイント① 届出・変更手続きの「名義」と「決裁フロー」
医療法人の場合、変更届や施設基準届出などは法人名義となり、理事長の決裁や理事会の承認が必要なケースもあります。
個人立では、医師本人が開設者であり、意思決定が早く簡便です。ただし、決裁者が不在の場合に備えて事務手順を共有しておくことが大切です。
個人立の場合、院長が入院した場合はクリニックを休止したり、院長が急逝し別の医師が引き継ぐ場合などは、廃止・新規申請の手続きを踏む必要があります。
しかし、医療法人立であれば、理事会の決定により、別の院長を立て継続診療することができます。長期の院長の不在・・・例えば入院加療などに対しても、別の院長代理を立て継続することもできます。
② 行政からの立入検査・実地指導への備え
医療法人では、医療法に基づく法人運営全体の管理状況(理事会や社員総会の議事録・定款・運営体制など)まで確認されることがあります。
個人立の場合は、開設者である医師の個人責任が直接問われやすく、診療録・保険請求・安全管理の体制整備などを日頃から職員と共有しておくことが重要です。
例えば、
③ 文書管理・保存の体制整備
医療法人立では、法人規定に基づく医療機関運営が必要になるため、医療機関との。
個人立では、開設者の判断に左右されやすいため、事務職員主導での文書一覧表や保存マニュアル整備が現場の安定につながります。
④ 医師不在時の対応範囲とマニュアル整備
個人立クリニックでは、開設者である医師本人がすべての決定権を持つため、医師不在時(外出・手術・急病・出張など)に事務職員がどこまで対応できるかをあらかじめ整理しておくことが非常に重要です。
医薬品の緊急発注、患者からの苦情・申し出対応、業者とのやり取りなど、医師に確認すべきラインと、事務だけで完結できる業務を明確化しましょう。
「判断を代行しない・預からない」などの原則も共有し、リスク回避の体制を整えることが大切です。
まとめ:事務職員の視点で“違い”を見抜く
開設形態が違えば、対応すべき書類や体制、指示系統にも違いが出ます。
事務職員としては、単に「誰が開設者か」を知るだけでなく、実務の中でどう行動を調整するかまで見据えておくことが、現場の円滑な運営と信頼につながります。
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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