Q&Aより:施設入所者のリハビリについて

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

高齢者のリハビリテーションは医療で算定できるか、介護保険の範疇になるのか、なかなか判断が難しいですよね。今回ある医療機関から、「特養(介護老人福祉施設)に入所している利用者さんを、外来通院させて医療保険のリハビリ(運動器リハビリテーション)で継続できますか?」という質問がありました。

回答としては、「原則は不可」となるのですが、様々な条件をクリアすると、算定できる場合があります。

ここからの解説は医療保険請求できるかどうかの判断として参考にしていただければと思います。
今回はこのような場合にどのように取り組むのが良いか、考えてみましょう!

高齢者のリハビリの算定の原則

介護保険施設入所中は介護保険での支援が基本で、同一の疾患については、介護保険のリハビリ利用へ移行するとその利用開始月の翌月以降は医療保険の疾患別リハの算定ができない、という給付調整ルールが示されています(※手術や急性増悪などで医療が必要となった場合を除く)。

特に今回は「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」入所中とのことですので、配置医師であるかどうかで給付の調整が分かれます

背景と根拠(2024年度改定を踏まえて)

「医療と介護」の給付調整の大原則

要介護被保険者に対するリハビリは、医療保険で実施⇒介護保険に移行した後は、同一疾患について医療保険の疾患別リハは翌月以降算定不可(急性増悪・手術等は例外)となります。
根拠は厚労省の「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項」です。

介護医療院入所中の受診や医療連携は、別途の整理があり、入所者の病状に応じた取扱いが定められています。

特養入所中は「居宅系リハ」は対象外

特別養護老人ホームは施設サービスであり、入所中は通所リハ・訪問リハ等の居宅サービスを原則使いません。それは、施設内の支援が前提となっており、医療保険の外来リハを継続・併用する仕組みにはしていない、という整理です。加えて、特養入所者に対する医療の取扱いを示した保医発0331002号通知では、配置医師の役割や、外部医師がみだりに診療しないこと等も明記されています。

2024年度(令和6年度)改定のポイント:施設内での一体的取組を強化

令和6年度改定は、リハビリ(個別機能訓練)・栄養管理・口腔ケアの一体的取組を施設内で推進する方向が明確化されています。様式・運用の通知や計画書の様式例が示され、施設内での多職種連携とPDCAが求められます。

さらに、通所・訪問リハに関するQ&A(Vol.5)では、リハビリテーション・マネジメント加算の「毎月270単位」の扱い(医師説明は3か月に1回以上あれば毎月加算可)など、リハビリに対するマネジメントのプロセス強化が示されています。
つまり、「外来通院で医療リハを続ける」より、施設内で多職種が計画的に関わるリハビリが効果的であるという流れが2024年改定で一段と強まってきたわけです。

実務で迷いやすいポイント

さて、ここから質問の多いケースをもとに整理していきたいと思います。

同一疾患での外来・医療のリハビリテーションを継続できますか?

× 原則不可。
介護保険によるリハビリテーションの利用開始月の翌月以降は医療保険の疾患別リハを算定できません。急性増悪・手術等の例外はありますので状況を確認する必要があると思います。

別傷病なら医療リハは?

△ ケースごとに確認。
「同一の疾患等」には該当しないが、実態として介護側での支援が基本です。主治医所見、リハビリテーションの目的(急性期/回復期/維持期)やタイミングを踏まえ、給付調整の解釈に沿って慎重に検討することが必要です。

今回、質問で寄せられた内容は、状況を確認すると、特養に入所し機能訓練は受けているものの、本人・家族が満足せず、「クリニックでのリハビリテーションを受けたい」という希望があったという事例で、「急性増悪」とは言えず、新たな症状も出てきていないことから、医療のリハビリテーションを受けることは難しいのではないかと思います。

特養入所中に通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションは?

原則対象外。
特別養護老人ホームは施設サービスであり、入所中は居宅サービスの通所・訪問系は使えないことになっています。

施設内のリハビリテーションの評価は?

施設内の「個別機能訓練」と一体的取組の評価として「口腔ケア」・「栄養管理」とセットで多職種運用のリハビリを提供することが求められ、評価が高くなっています。
介護保険のリハビリ(個別機能訓練)については、寝たきりにさせないため特別養護老人ホームでも評価が付いています。様式・運用は厚労省の2024年通知・様式に沿って整備されています。

医療機関の外来受診そのものは?

必要な診療は可能ですが、配置医師/協力医療機関の連携や通知に沿った算定の制約があります。
特に配置医師の算定制限や、外部医師の「みだりな診療」禁止等など、細かいルールがありますので、請求可能な点数・不可の点数については「厚生労働省/医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項」で確認することが必要です。

まとめ(現場への留意点)

特別養護老人ホームに入所中は、介護保険の枠組みで施設内のリハビリテーション(個別機能訓練)を中心に、栄養管理・口腔ケアとともに、一体として進めるのが基本となっています。
原則的には、外来の医療保険によるリハビリテーション(急性期のリハビリ)を継続ことはできません。つまり医療保険で請求することができない仕組みであることを理解しましょう!

もちろん、例外的に認められているものはありますので、その例外(手術後・急性増悪など)に該当するかどうかは「医学的な必要性」と「通知の要件」で判断することが必要です。

現場の事務員さんからは、「病名を新しくつけてもらったらいいですか?」「急性増悪でいいんですよね?」という質問を受けることが多いのですが、これまで説明してきたように、介護保険での請求との給付の調整がありますので、医療保険の請求には慎重に「医学的な判断」が必要になってきます。
保険請求を行う際は先生と慎重に対応を検討するようにしてくださいね。

<参考資料> 令和7年9月17日確認

〇厚生労働省/「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に
       関連する事項等について」の一部改正について ⇒(こちら)

〇厚生労働省/「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」の一部改正について
      ⇒(こちら)

〇厚生労働省/「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)(令和6年4月30日)」の送付に
      ついて ⇒(こちら)

〇厚生労働省/令和6年度介護報酬改定について ⇒(こちら)

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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