イラっとした時どうしていますか?~職員同士編~

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

前回は「患者編」として、患者さんとの対応でイラっとした時のアンガーマネジメントをご紹介しました。
今回はその続編として、同じ職場で働く仲間とのやり取りでイラっとした時をテーマに考えてみましょう。

職員同士の良好な関係は、日々の仕事を円滑にするだけでなく、クリニック全体の雰囲気や患者さんへの接遇改善にも直結します。
なぜなら患者さん対応や職員間対応は、いずれも相手が感情を持つ「ひと」だからです。大切なのは「感情のコントロール」です。

少し重複する内容もありますが、それは重要なことだから何度も言わせてください。
視点を変えて、読み返してみてくださいね。

「背景があるかもしれない」と想像してみる

「またこの仕事を私に回された」「なんだか言い方がきつい」「そんな人格否定までしなくても」と感じたときはありませんか?

イラっとした背景には、実はこんな事情があるかもしれません。
  ・相手が急ぎの対応に追われていた
  ・患者さんから直接依頼を受けていた
  ・忙しさから言葉が荒くなってしまった
  ・他の医療機関のことなんか言われても意味がわからない

前回も触れましたが、大切なので繰り返します。怒りの背景には必ず「何か理由」があります。
そう考えるだけで、気持ちが少し落ち着きますよね。

イラっとしたときに「理由の想像」ができれば、少しは怒りの感情を抑えることができるのではないでしょうか。例えば「ムシの居所が悪かった」「大きな声で怒鳴る」「感情的になる」等、こんな感情や行動に出た場合は、結果として相手を傷つけたり、人格を否定されたように感じさせてしまうことがありますので、注意が必要ですね。

6秒ルールは仲間にも有効

これも前回に続いての大切なポイントです。怒りのピークは6秒。職員同士だからこそ、つい言い返したくなりますが、ここで一呼吸置くこと、つまり「6秒待つ」ことが重要です。

  ・深呼吸をする
  ・すぐに反応せず「後で話そう」と一旦置く
  ・メモに気持ちを書き出して整理する

そして、この6秒の間に考えてみてください。

  ・いま言おうとしていることは、患者さんのためになるのか?
  ・クリニックのためになるのか?
  ・どうしても今伝えなければならないほど緊急なのか?

そのように考えていくと、実はそこまで重要でない場合もあります。
たった6秒の思考が、職場の雰囲気を守ることにつながります。

言葉を選んで伝える

注意や依頼を強い言葉で伝えると、関係がこじれやすくなります。
先ほどの「6秒間」に考えてどうしたも伝えなければならない事柄だと判断した場合、次に行うことは、どう伝えるかを考えることです。

例えば・・・
 ×「なんでやってないの?」
 ×「それはあなたの仕事でしょう」
 ×「この前も言いましたよね」

こう言ってしまうと、「非難」しているように聞こえますし、これに「ため息」がプラスされたら、相手はどう感じるでしょうか?
相手の人格否定していることにもなりますよね。これではうまくいきません。

これを少し言い方を変えてみましょう!

×「なんでやってないの?」 どこで躓いたかな?分からなかったところを教えて!
×「それはあなたの仕事でしょう」どこまで終わってる?今日は一緒にやろうか
×「この前も言いましたよね」  説明がわかりにくかったかな? 
 やり方をもう一回確認しながらやってみよう!

このように、相手を気遣う言葉に置き換えることで、関係性は崩れにくくなりますし、相手も受け入れやすくなりますよね。

よくある場面と対応のヒント

職員間の人間関係には、「ハラスメント」が絡んでいることが往々にしてあります。
一緒に仕事をする時間が長いからこそ、「怒り」の気持ちを逃がしつつ、気持ちよく仕事をする関係性を保っていくことが必要になってきます。

◆業務の分担に不満を感じたとき

終業間際に「これ見直して!」とドサッと書類の束を渡されたら、「どうして私ばかり」「こんなにあるなら早くいってくれればいいのに」と思いませんか?
こんな時、仕事が量的に負担を感じるようであれば、感情的にならず、具体的に、「今の分担だと時間が足りないので、少し調整してもらえますか?」と伝えたり、「この仕事はいつまでに終わらせたらいいでしょうか?」と尋ねてみるのもいいかもしれません。

逆に、何も仕事を与えられない、何も指示が出ない、という不満を聞くことがあります。職務についている以上何も仕事が無いことは苦痛を感じます。初心者であっても、簡単な説明でできる仕事は沢山有るはずです。最初はいわゆる「雑務」といわれるものであっても、何も業務をしないことより良いのではないでしょうか? 新人から声をかけるのは難しいかもわかりませんが「何かできることありませんか?」と積極的に声をかけていくことで不満の解決につながることもあるでしょう。

◆言葉づかいや態度にカチンときたとき

同僚のちょっとした言葉にイラっとすること、ありますよね。
特に、以前「ハラスメントNGワード」で紹介したような、こんなフレーズは要注意です。

  ・「そんなことも分からないの?」
  ・「前にも言ったよね?」
  ・「普通これくらいできるでしょう」

悪気がなく、軽い気持ち(冗談で)言ったとしても、相手に「見下された」と感じさせやすい言葉です。こうした時こそ、すぐに言い返さず一旦落ち着いてみてください。

「さっきの言葉、少し理解出来ないところがあったのですが、どういう意味だったんでしょうか?」

と確認してみましょう。誤解が解けることも多く、また相手も「自分の言い方に配慮が足りなかった」と気づくきっかけになります。

◆忙しい時に追加の仕事を頼まれたとき

「今は無理です!」「出来ません」と突き放すより、順序を示して伝えると理解を得やすいものです。
こんな時は「今こちらの対応中なので、少しお時間をもらえませんか?終わったら取りかかりますね」と言ってみるとどうでしょう。

チーム全体で雰囲気を守る

個人のアンガーマネジメントに加え、チーム全体で感情を共有する仕組みも効果的です。

例えば・・・
  ・月1回の「振り返りミーティング」で気持ちを共有する
  ・「ありがとうカード」で感謝を伝え合う
  ・「お疲れさま」「ありがとう」「助かったよ」のひとことを習慣にする

小さな積み重ねが、イラっとを減らし、働きやすい職場づくりにつながります。

まとめ

職員同士のイライラは、放置するとチーム全体に広がり、患者さんへの対応にも影響します。
だからこそ、「背景を想像する」「6秒待つ」「言葉を選ぶ」この3つが大切なのです。

そして、言われた言葉で「イラっとした時」に思い出してほしい一言がこちら。
「さっきの言葉、どういう意味だった?」と問いかけることができればどうでしょう。

衝突ではなく「確認」で向き合うことが、関係性を守るカギになります。

次回は、「チーム全体にアンガーマネジメントを生かす」をテーマに、組織の雰囲気をより良くする工夫を考えていきましょう。

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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