「刑事ジョン・ブック/目撃者」(1985年:アメリカ)
森 𠮷隆
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初見時は私が高校3年生の時。先日TV放送されていたので久しぶりに懐かしく鑑賞。
数多くの話題作、名作に出演したハリソン・フォードが唯一、アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされた(受賞は逃した)作品で、彼の演技が最も評価された作品という点でも代表作の1本といえるでしょう。
物語は、殺人現場を目撃してしまった幼い少年。捜査を担当するのがハリソン扮するジョン・ブック刑事。少年とその母親を護衛することになった彼は、犯人に狙撃され、重傷を負いながら母子の暮らす村に逃げ込みますが…。
話の骨格自体はよくあるサスペンス物ではあるのですが、各エピソードが実に丁寧に演出されていて印象に残ります。しかも我々日本人には特に当時目新しく感じたのは、母子が生活する村が「アーミッシュ」という、厳しい戒律の下、17世紀の移民当時の生活をそのまま営む、文明社会とは対極の宗教集団の存在。当然電気やガスや電話もない、自給自足の生活に主人公は戸惑いながらも、牛の乳搾りや、村人総出で納屋を建てる手伝いをするうち、この地に安らぎと共感を覚え、同時に少年の母親にも惹かれていきます。
この恋愛模様も実に繊細に描かれていて、異なる社会・価値観に生きる2人がお互いの心情に戸惑いながら、高ぶる想いを抑えようとする姿は、日本人の感性に近い慎ましさを感じました。
美しい撮影風景や当時のシンセサイザーを駆使した音楽も映画の世界観に大きく貢献し、それが見事に結実したようなラストの、村の老人が主人公に発するあるセリフも含めた一連のシーンは、不思議な感覚がありながら、絶妙な味わいのある余韻を与えてくれるのでした。
著者紹介
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人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)
「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。
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