
「ふつうの子ども」(2025年:日本)
森 𠮷隆
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昨年「ぼくが生きてる、ふたつの世界」が好評だった呉美保監督作品。この作品も好感の持てる作品に仕上がっています。
主人公は小学校4年生のごく普通の男の子。作文の授業で、まるでグレタ・トゥーンべリ風に環境問題を告発し、大人を糾弾した文を読んだ女の子を好きになります。主人公は女の子に気に入られようと、さらに少しやんちゃな男の子も加わり、3人で環境活動に取り組もうとするのですが…。
まず特筆すべきは主人公を始めとする子供たちの自然な演技。例えば教室での休憩時間に、子供たちの姿を捉えたショットは、まるで現実の教室を覗いているかのようなリアルさがあり(直近にドキュメンタリー作品「小学校 それは小さな社会」(2024年・日本)を観ていたせいか、余計にそう感じたのかもしれません。)、かつて私も小学生の時はこんな感じだったんだろうなと共感しつつ、時折子供たちの一挙一動が微笑ましく、クスッとした笑いを誘います。
※以下、少々ネタバレがあります。
しかし3人の活動が段々エスカレートし、ある事件に発展する後半から、少しずつ不穏な雰囲気に。そしてその問題を受けての3人の子とその母親、そして教師の三者面談のクライマックスは、前半のほのぼの感から一転、まるで法廷劇のような緊迫感。ここで子供目線の内容から、一気に大人の立場が介在することで、映画は大きなうねりを生み出します。しかし、その重苦しさを解き放つかのような主人公の最後の、シンプルだけれども力強い告白は胸を打ちます。なるほど、キャッチコピーにある「世界は「好き」でまわってる」の意味に納得させられました。
著者紹介
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人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)
「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。
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