
「愛はステロイド」(2024年:イギリス・アメリカ)
森 𠮷隆
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個性的で、ある意味アクの強い作品を製作配給する映画会社A24。この題名では観賞する前は、どんな映画なのかイメージが沸かなかったのですが、原題は「Love Lies Bleeding」、訳すと「愛は血を流す」との事で、鑑賞後なるほど原題にも邦題にも納得した次第。やはりこの会社らしいインパクトのある、クセのある作品でした。
※以下、少々ネタバレがあります。
1989年のアメリカの片田舎でトレーニングジムで働く若い女性の主人公が、ボディビル大会で優勝を目指すムキムキマッチョの女性と出会い、お互いすぐに恋に落ちる…となるとこれはちょっと風変わりな同性同士の恋愛映画かなと思いきや、中盤から一転、バイオレンス要素あるクライムスリラー風になり、先の読めない展開となります。女性同士の友情や恋愛、それに犯罪が絡むとなると「テルマ&ルイーズ」(1991年:アメリカ)や「バウンド」(1996年:アメリカ)などの映画を彷彿とさせますが、それらの洗練された傑作より、むしろ粗野でざらつきのある質感が印象的な怪作といった趣。
登場人物達が煙草、男性、恋愛そしてステロイドに依存していて、そこからの脱却というのがこの作品のテーマでもあり、女性による、有害な男らしさに対する反逆や異議も感じつつ鑑賞していたら、クライマックスのあるシュールな場面に驚愕、かつ唖然…(ある意味、褒めてます)。まさにここで邦題の意味が判ると同時に、A24色を強く感じて思わずニンマリしてしまいました。
著者紹介
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人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)
「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。
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