2025年 医療機関における賃金引き上げの状況

桃井 元気

税務・会計

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

賃上げ率2.41%にとどまる医療機関の現状
2025年、世間では賃上げムードが広がり、多くの産業で4~5%の昇給が行われました。物価高騰や人手不足に対応するための動きとして注目されています。しかし、そんな中で医療現場の賃上げ状況はどうだったのでしょうか?

6月6日に発表された、日本病院会など4団体による緊急調査によれば、医療機関の賃上げ率は平均2.41%。これは他産業の平均賃上げ率の半分程度にとどまっています。

賃上げの中身
調査対象となった全国の病院321施設のうち、約半数にあたる163施設から回答がありました。そのうち、実際に何らかの賃上げを実施したのは160施設。ほとんどの病院で賃金は上がっているものの、「定期昇給のみ」の施設が39%と最も多く、実質的なベースアップ(基本給の底上げ)は限られています。

また、賞与(ボーナス)の支給率にもばらつきがあり、「上がった」とする病院は17%、
「変わらない」が67%、「下がった」と答えた病院も16%にのぼりました。

賃上げ促進税制の恩恵を受けにくい構造
政府は企業の賃上げを後押しする「賃上げ促進税制」を導入していますが、これを実際に活用できた病院は全体の19%(31施設)のみでした。主な理由として、「制度上の対象外」「赤字経営のため適用できない」など、制度と現場の乖離が浮き彫りとなっています。

医療従事者の未来を守るには?
この調査は「医療は公共インフラである」という意識を改めて社会全体が持つ必要性を示唆しており、賃上げ率の数字以上に「なぜ医療の現場だけが置き去りにされるのか?」という問題を考える必要があります。

【参考資料】
【日本病院会・全日本病院協会・日本精神科病院協会・日本医療法人協会】2025年度 医療機関における賃金引き上げの状況に関する緊急調査(速報)
https://membership.mmpg.gr.jp/study_group/page.php?tid=257&p=149900

2025年6月12日

著者紹介

桃井 元気
税務会計コンサルティング部 税務会計2課

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