
皆さん準備はできていますか?~令和7年5月31日で経過措置が切れる施設基準について
長 幸美
医療介護あれこれ令和6年度の診療報酬改定に伴い設けられた一部施設基準の経過措置が、令和7年5月31日(2025年)で終了するものがあります。これにより、令和7年6月1日以降、引き続き該当する診療報酬を算定するためには、新たな届出が必要となります。
今回の届出は、保険医療機関及び保険医療養担当規則の掲示事項のWebサイト掲載を要件とする診療報酬など、医療機関にとって、影響は大きなものになると思われます。
今日はその内容について、みていきましょう!
経過措置とは・・・?
診療報酬における施設基準は、医療機関が一定の要件を満たすことで、特定の診療報酬を算定できる制度です。令和6年度の改定では、医療DXの推進体制を整備し、情報共有や業務改善を進めていくための方法として施設基準の中に、マイナ保険証や電子処方箋、電子カルテ情報共有システム等の活用に向けて、体制の整備をしていくことが求められています。また、それらの急激な施設基準の変更による医療現場への影響を緩和するため、一部の施設基準に対して経過措置が設けられました。つまり、施設基準を満たすように準備する期間が認められているわけです。
経過措置の終了による影響は?
経過措置により旧基準で算定していた医療機関は、新基準を満たした上で、所管の地方厚生(支)局へ新たな届出が必要です。届出が受理されない場合、該当する診療報酬の算定ができなくなります。
新基準を満たすために、施設の人員配置や設備、業務手順の見直しが求められる場合があります。
対象となる主な施設基準
経過措置の終了に伴い、様々な基準の見直しが必要ですが、入院料や特定入院料、機能強化型の在宅療養支援診療所(病院)など、数多くの施設基準が影響を受けます。
入院料等「通則7」
①意思決定支援の基準、及び②身体的拘束最小化の基準を満たしておく必要があります。
これまでは療養病棟入院基本料や地域包括ケア病棟入院料等では要件化されていましたが、診療所も含めてほぼすべての病床で、この「意思決定支援」及び「身体拘束最小化」について、ガイドラインの整備や手順書の整備が必要になりました。
急性期充実体制加算
外来における化学療法の実施促進体制の基準に該当する必要があります。
超急性期脳卒中加算
新設された基準・・・つまり、脳梗塞患者に対する経皮的脳血栓回収術の適応可否の判断にかかる連携医療機関との協議・手順書・助言に関する基準を満たしておく必要があります。
診療情報管理体制加算
令和6年3月31日現在、許可病床200床以上の医療機関は、専任の医療情報システム安全管理責任者の配置と院内研修を求める医療機関となります。
医療的ケア児(者)入院前支援加算
医療的ケア児(者)の入院医療について、十分な実績を有していること、が必要になります。
この点数は、医師の指示を受けた看護職員が、入院前に患家等を訪問し、患者の状態、療養生活環境及び必要な処置等を確認した上で療養支援計画を策定し、入院前又は入院した日に当該計画書を患者又はその家族等に説明し、文書により提供した場合に算定できるものです。
救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、等
特定入院料A300~A303について、医療安全対策加算1の届出医療機関であることとする基準ができました。
また、中でも特定集中治療室管理料「注7」特定集中治療室遠隔支援加算については、支援する被支援側医療機関に医療資源・医師数が少ない区域に所在する病院が含まれることとする基準が、経過措置終了となります。
回復期リハビリテーション病棟入院料1・2
在宅復帰支援を担当する専従・常勤の社会福祉士等の配置が必須となりました。
地域包括ケア病棟入院料
令和6年3月31日時点で届け出病棟・病室は、
①訪問看護の実績、訪問看護ステーションの併設、訪問介護・訪問リハビリ施設の併設等の基準、
②在宅復帰率の基準(算出方法)、自宅等からの入棟・入室患者の割合の基準(算出方法)について、
新基準による算定が必要になります。
機能強化型の在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院
訪問診療回数が一定数以上・・・つまり、各年度5月から7月の訪問診療回数が2,100回を超えた場合、翌年の1月までに在宅データ提出加算の届出を行うことが基準の中に入っています。
さらに在宅療養支援病院では、訪問栄養食事指導の体制整備にかかる基準を整えておく必要があります。
手術の「通則4」「通則18」
手術の「通則4」は乳がんセンチネルリンパ節加算を算定する場合に適用され、麻酔科標榜医の配置、病理部門の設置と迅速病理検査の体制、そして届出に関する事項等、そして「通則18」は内視鏡手術用支援機器を用いる場合などが該当します。
※通則4に掲げる手術(届出を行うこと又は施設基準を満たすことにより算定できる手術)
通則18に掲げる手術(内視鏡手術用支援機器を用いる手術) ⇒(こちら/保団連 )
医療DX推進体制整備加算
情報の掲示と公開など、新たな要件が追加されています。
これらの詳細については、厚生労働省の事務連絡「令和6年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の取扱いについて」を参照してください。(確認日/令和7年5月6日)
保険医療機関及び保険医療養担当規則の掲示事項のWebサイト掲載要件
療養担当規則の院内の掲示事項に指定されている内容を診療所のWebサイトにも掲載すること、医療機関のWebサイトがない場合は院内の掲示事項に指定されている内容を診療所のWebサイトにも掲載すること、医療機関のWebサイトがない場合はそれぞれの都道府県の「医療情報ネット」に掲載することが求められています。
精神科地域包括ケア病棟入院料
精神科にも地域包括ケアの考え方が入ってきました。
①地域の精神科救急医療体制の確保に協力する体制と実績、②精神障害者の地域生活に向けた重点的支援の体制と実績、③措置診察等の協力、④退院支援部門の設置・・・等の基準が必要となります。
今後の対応と留意点
経過措置終了後も該当する診療報酬を算定するためには、新基準の確認とともに、必要な書類を整備し、所管の地方厚生(支)局へ提出する必要があります。
提出期限は2025年6月6日(金)必着です。郵送で送付される場合、1日でも遅れると、1か月算定開始が遅れることになりますので、余裕をもって提出されるようにしてください。
また、関係者(各部署)との情報共有や連携もとても重要になります。
特に、回復期リハビリテーション病棟や急性期病棟、歯科診療所などは影響が大きいため、早急な対応が求められます。また、医療DX推進体制整備加算など、新たな要件が追加された加算についても、対応が必要です。
まとめ
令和7年5月31日をもって、経過措置が終了することにより、該当する施設基準については、新基準を満たした上での届出が必要となります。医療機関は、早急に自院の対応状況を確認し、必要な手続きを進めることが求められます。届出の遅れや要件の未達は、診療報酬の算定に影響を及ぼす可能性があるため、十分な注意が必要です。
詳細な情報や届出様式については、厚生労働省の事務連絡「令和6年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の取扱いについて」をご参照ください。
<参考資料> 令和7年5月6日確認
■厚生労働省/令和6年度診療報酬改定について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
・令和6年度診療報酬改定において経過措置を設けた施設基準の取扱いについて
(令和7年4月25日事務連絡)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001482059.pdf
・外来データ提出加算等について(令和7年度_説明会開催案内)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57322.html
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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