
併算定できるのに見落としがち!~生活習慣病管理料(Ⅱ)と同時算定可能な項目~
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
令和6年度診療報酬改定により、「B000特定疾患療養管理料」および「処方料・処方箋料に係る特定疾患処方管理加算」の対象疾患から、脂質異常症・高血圧症・糖尿病が除外されました。これに伴い、これらの疾患に対する管理は、「生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)」に一本化されています。
このうち「生活習慣病管理料(Ⅱ)」は、主に状態が安定している患者さんに対して、生活習慣の継続的な管理を評価する点数であり、許可病床200床未満の病院または診療所において、入院外の患者1人につき月1回算定可能です。
目次
生活習慣病管理料(Ⅱ)とは?
生活習慣病管理料(Ⅱ)では、検査・注射・病理診断料は包括されず、別途算定が可能です。また、情報通信機器(オンライン)を用いた診療では290点が算定できます。
患者ごとの療養計画に基づき、「栄養・運動・休養・喫煙・体重・血圧・飲酒・服薬」などの生活指導を実施することが前提であり、特定疾患療養管理料の代替点数として機能しています。
さて、改定から1年ほどたっていますが、生活習慣病(対象疾患)を主に診療されている医療機関から、インスリン導入前の患者さんの自宅での「血糖管理」や「栄養指導」について、包括になるため使いにくいというお話をお聞きすることがあります。そのほかにも実際に診療所で確認すると、算定可能な項目も算定できていないことがあることがわかってきました。
これには「算定できない」という思い込みが根底にありそうです。
そこで、生活習慣病管理料(Ⅱ)の包括範囲について、少し見直しをしてみたいと思います。細かな算定要件等は、以前のコラム及び診療報酬点数表をご確認ください。
<当社のコラム見逃した方はこちらからどうぞ!>
※令和6年度診療報酬改定速報~生活習慣病管理料について~ ⇒(こちら)
※令和6年度診療報酬改定~生活習慣病について②計画書を作ってみよう!⇒(こちら)
実は「算定できるのに、漏れやすい項目」がある!
生活習慣病管理料(Ⅱ)は“包括点数”とされていますが、すべての医学管理料が対象となるわけではありません。点数表の注2には、以下のような記載があります。
B001-3-3_生活習慣病管理料(Ⅱ)
注2 生活習慣病管理を受けている患者に対して行った
A001の注8の医学管理(外来管理加算),第2章第1部第1節医学管理料等(B001の9外来栄養
食事指導料,B001の11集団栄養食事指導料,B001の20糖尿病合併症管理料,B001の22がん性疼痛
緩和指導管理料,B001の24外来緩和ケア管理料,B001の27糖尿病透析予防指導管理料,
B001の37慢性腎臓病透析予防指導管理料,B001-3-2ニコチン依存症管理料,B001-9療養・就労
両立支援指導料,B005-14プログラム医療機器等指導管理料,B009診療情報提供料(Ⅰ),
B009-2電子的診療情報評価料,B010診療情報提供料(Ⅱ),B010-2診療情報連携共有料,
B011連携強化診療情報提供料及びB011-3薬剤情報提供料を除く)の費用は,
生活習慣病管理料(Ⅱ)に含まれるものとする。つまり、医学管理料の中の( )内にかかれているものは、「除く」と書かれていますので、算定ができると解釈できます。特に上記太字の項目については、算定ができるのですが、実際には算定できないと思い込み、算定漏れが多い項目ですので、再度確認していきましょう!
外来栄養食事指導料(B001の9),集団栄養食事指導料(B001の11)
生活習慣病の中でも、「栄養食事指導」に関しては、とても重要なものだと思います。運動だけではなく、食事習慣は生活習慣病治療及び予防において、大切なものになります。
この、「外来栄養食事指導」は医師の指示に基づき、管理栄養士が個別に栄養指導を行うもので、
「集団栄養食事指導」は医師の指示に基づき、複数名の患者を集めて、管理栄養士がテーマに沿って複数の患者に栄養や食事に関する指導を行います。糖尿病教室のように、同じ疾患を持つ患者が集まって、食事療法や生活習慣の見直しを学ぶイメージですね。
ニコチン依存症管理料(B001-3-2)
ニコチン依存症の患者が禁煙治療を受ける際に、保険診療で算定できる医療費です。この管理料を算定するには、一定の施設基準を満たし、「禁煙治療のための標準手順書」に沿った治療を行う必要があります。 つまり、禁煙治療プログラムに基づいて禁煙チャレンジを具体的に5カ月かけて支援していく・・・と言ったらわかりやすいでしょうか? 生活習慣病管理料とは別に算定ができます。
診療情報提供料(Ⅰ)(B009) ・電子的診療情報評価料(B009-2)
他の医療機関への受診が必要な場合や行政・介護事業所等への紹介を行う場合など、紹介・診療情報提供文書の交付 、そして、CT/MRI画像等の読影受け取り時など、情報提供する場面は意外に多いのではないでしょうか?
医学管理料の区分だから・・・と算定をされていないケースを見かけます。包括から「除く」項目に入っていますので、併算定可能です。算定が漏れがないようにしましょうね。
療養・就労両立支援指導料(B001-9)
「療養・就労両立支援指導料」は平成30年度診療報酬改定において創設されました。両立支援をより充実させるよう、改定の都度、見直しが入っています。令和4年度診療報酬改定では前回(令和2年度改定)から4点の見直しが行われました。①対象疾患の見直しが行われ、「心疾患、糖尿病、若年性認知症」も対象疾患となりました。そして②職場の衛生管理者にも拡大され、③情報通信機器を用いた支援にも拡大されています。さらに、対応する職種として「公認心理士」が追加されました。これは生活習慣病管理料(Ⅱ)とは別扱いとなり併算定が可能です。
がん性疼痛緩和指導管理料(B001-22)
疼痛患者の緩和ケア管理は、がんによる痛みの症状緩和を目的として、計画的な治療管理及び療養上必要な指導を行い、麻薬を処方した場合に、月1回に限り算定できる医学管理料です。当該薬剤(麻薬)を処方した日に算定するものとされています。これも、生活習慣病管理料(Ⅱ)とは併算定が可能な項目となっています。
血糖自己測定器加算の注意点~インスリン自己注射導入前の血糖測定~
生活習慣病管理料(Ⅱ)の対象患者において、「インスリンを使用していないから血糖測定加算はできない」と思い込んでいるケースが多く見られますが、それは正確ではありません。
実際には、以下の条件を満たす場合、血糖自己測定器加算が算定できるケースがあります。
<算定が可能なケース>
さて、ではどのような条件下で「血糖自己測定器加算」が算定できるのか、見ていきましょう!
①糖尿病の治療目的で血糖自己測定が必要と判断されている
②インスリン製剤を使用していなくても、SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬など、低血糖リスクのある薬剤を使用中
③あるいは、血糖コントロールが不安定で医師が測定を指示している
如何でしょうか、このような患者さんの治療で、日常生活において血糖の推移が見てみたいと考えられたことは無いでしょうか?このような場合は、生活習慣病管理料(Ⅱ)とあわせて、自己測定器加算が該当する可能性があります。
この場合、医師が必要性を診療録に記載し、測定指導を行うことが記録されていることが必要です。
血糖自己測定に関する説明や実施記録などの保存、指導記録等を残すことが必要ですね。
算定漏れがあるのは何故?
さて、なぜ「併算定できるもの」を見落とされるのでしょうか?
それは、管理料は併算定できない・・・つまり「包括されている」という意識が先行しすぎて、“すべての医学管理料が算定不可”と思い込んでいるところにあるのではないでしょうか?
それとともに、「診療情報提供料」や「就労支援指導」などについては、医療行為として意識されにくいということもあるかもしれません。
算定のポイントは「目的が異なるか」
包括されるかどうかを判断するには、「生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症)の指導・管理かどうか」が大きな基準となっていると思います。
たとえば、禁煙治療は目的が「高脂血症・高血圧症・糖尿病」とは直接的に影響があるとは考えにくいため、併算定が可能になるのではないかと思いますし、紹介状の交付や画像評価、がん疼痛への配慮なども、直接的には治療目的が異なっている為ではないかと考えられます。
自院が実施している医学管理料について、再度併算定が可能な項目に該当していないか、点数表で確認することが必要だと思います。分かりにくい書き方をされていると思いますが、「注2」のなかの、( )内の「除外項目」をしっかりと見直すことです。
おわりに・・・
包括項目の範囲に、どうしても目が行きがちですが、「注」に書いていることをしっかりと確認することが必要です。
その際には包括とされる範囲だけでなく、「除外されている項目」がないか・・・つまり、算定できる項目を意識することにより、不要な返戻の防止や正しい収益確保することができ、医療の質の適正評価につながっていると思います。ぜひ、この意識をもって、点数表をもう一度読み返してみましょう!
<参考資料> 令和7年7月7日確認
■医学通信社/診療点数早見表(令和6年度版)
⇒B001-3-3_生活習慣病管理料(Ⅱ) をご確認くださいませ!
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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