「天国の日々」(1978年:アメリカ)

森 𠮷隆

その他

 今迄色んな映画を観賞してきましたが、その中で美しい映像が見られる映画は?と問われれば、やはりこの作品は1本として選ぶだろうなと思います。今回4Kで復元された形で再公開され、約40年ぶりに映画館で鑑賞できました。

 20世紀初頭のテキサスが舞台。貧しい青年(リチャード・ギア、当時さすがに若い!)は実妹と、周りに対して妹と偽った恋人とともに広大な麦畑に季節労働者として働く事に。そこで若く裕福な地主と知り合い、地主は青年の恋人に惹かれるのですが、青年は地主が病気で余命わずかという話を聞き…。

 物語展開は一見シンプルで、全体的に静かで淡々としていますが、特筆すべきは、農場を映し出す映像の美しさで、その風景はまるでミレーの絵画を再現したかのよう。「マジックアワー」といわれる日の出と日没前後のわずかな時間に見られる空が金色になるような柔らか味のある光景を多用し、どこか穏やかな雰囲気も醸し出しています。

※以下、少々ネタバレがあります。

 しかしその美しい映像に反して、特に後半、映画は登場人物達が悲劇に向かって行く様を描きます。その前触れになるかのように描かれる畑を襲うイナゴの大群のシーンも驚かされました。人間の営みをあざ笑うかのように一瞬で収穫物を食い荒らしていく非情さと、自然の前での人間の無力さをまざまざと見せつけられるような冷徹な視線が、美しい映像とは対照的に、いやそれ故に、ある意味残酷さと儚さを際立たせていました。

著者紹介

森 𠮷隆
人事コンサルティング部 労務コンサル課 シニアコンサルタント
(特定社会保険労務士)

「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。

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