その仕事、本当に“クリニックのため”ですか?~“自分の仕事を守る”から“患者と先生を支える”へ~

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

クリニックで働く事務職員にとって、「自分の役割を果たす」ことは大切です。
しかし時に、「これは自分の仕事だから」と業務範囲を囲い込み、柔軟な対応を避けてしまうケースも見られます。

  「私はレセプトしかやりません」
  「電話は○○さんの担当です」
  「それは看護師さんに聞いてください」
  「それって私(事務)の仕事ですか?」

一見すると“業務分担の明確化”のようですが、こうした言動が続くと、患者さんの不安や診療の流れに影響を与えてしまいます。

あるクリニックでは、レセプトの病名修正や駐車場案内まで看護師が担い、受付事務はカルテ作成と会計処理のみを行っていました。逆に、事務職員が問診票の記載補助や歩行困難な患者の案内まで担っている一方で、先生が採血から処置まですべて一人で対応しているケースもあります。

いずれも「それぞれが本来の役割に専念できていない」状態ではないでしょうか?

“自分のための仕事”になっていないか?

日々の業務の中で、次のような視点で自分を振り返ってみましょう。

  ・形式だけのチェックに時間をかけていないか
  ・自分のやりやすさにこだわり、現場全体の動きを妨げていないか
  ・「関係ない」と言って、本来関わるべきことを遠ざけていないか
  ・チーム全体を見渡す視点が持てているか

こうした姿勢は、気づかぬうちに“自分の仕事を守るための仕事”になってしまい、チームの連携や患者対応に支障をきたすことがあります。

“クリニックのため”を考えるとは?

“クリニックのため”とは、単に業務をこなすことではありません。
先生や看護師の負担を軽減し、患者さんが安心して受診できるよう支えることです。

例えば・・・
先生の理念が「地域に寄り添い、相談しやすい医療を提供すること」だとしても、受付職員が時間ギリギリに来院した患者さんに対し、「もう診療時間は終わるんですけど…」と冷たく対応してしまえば、
その理念は患者に届きません。

また、残業を避けたい一心で、対応を急ぎすぎたり患者さんを断ったりする場面はどうでしょうか?
それは結果的に「自分の都合を優先した行動」となり、クリニック全体の信頼にも影響します。

“自分の仕事”から一歩広げてみよう!

  ・困っている患者さんに、職種に関係なく声をかけてみる
  ・先生が書類に追われているときに、下準備や印刷だけでも手伝う
  ・診療の流れをよく観察し、滞りがないよう調整する

そうした“ほんの一歩”の行動が、チーム全体を支える力になります。

たとえば、時間ギリギリの来院患者には、理由を聞いたうえで先生の判断を仰ぐことができればその行為は医療スタッフの助けとなります。
また、診療が長引く場合には、先生の診療スタイルに合わせて、事務・看護で役割を分担し、残業を抑える工夫ができるかもしれません。

実際、受付の順番を取るシステムを導入し、待ち時間の可視化と患者外出の自由度を上げたことで、待合室のストレスを減らし、職員の負担も軽減した・・・という、クリニックもあります。
仕組みを導入することで、「どの課題を解決したいか」を明確に出来た事が、成功への鍵でした。

むすびに・・・

事務職員の仕事は「目立たない」「評価されにくい」と感じることもあるかもしれません。
けれど、だからこそ“全体を見渡す力”と“支える姿勢”が求められます。

「誰のための仕事なのか?」という問いかけを忘れずに仕事に向き合う姿勢を持ち続けてください。
その先にあるのは、「ありがとう」と言われる機会の増加と、仕事に対する自信と誇りです。

皆さんの一歩が、クリニックの信頼と温かさをつくっていきます。
ぜひ、明日から少しだけ意識してみてください。

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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