セミナー報告~「どうする?ベースアップ評価料」

長 幸美

医療介護あれこれ

令和6年度診療報酬改定の目玉とされている「ベースアップ評価料」。
皆様の医療機関ではどのようにお考えでしょうか?

年度末の最終土曜日(3月30日)にWeb講座を開催しました。それも、告知して2週間の開催。
弊社に診療報酬のプロと人事のプロがそろっているからこそ、できた技だと思っております(感謝)。
今回、お客様・・・それもクリニックに限定したのは、クリニックには人材がいない中で、院長自ら改定対応にも奔走しないといけない現状があるから・・・少しでも先生方のご支援ができるならば、という思いのもとに開催しました。
メールでの告知後、あっという間に40件を超える医療機関から60名近くのお申し込み・・・。
先生方の困惑をひしひしと感じました。

ベースアップしたいけれど・・・どうしたものか?

一般企業でもベア4.5%を超える賃上げ情勢の中、事務職員をはじめ医療機関では人材不足に悩まれている医療機関が多いと思います。さらに、介護事業所には「介護職員の処遇改善加算」というものがあり、介護職員と看護職員との給与が逆転している現状も見受けられるようになりました。

そのような中で迎えた「令和6年度診療報酬改定」。
改定の最重要課題として挙げられたのが、「賃上げ」です。長く医療系事務職員を自負しておりますが、改定で「賃上げ」や「物価高騰」「ベア(ベースアップ)」が出てきたのは初めてです。
一般企業とは違い、診療報酬は「公定価格」が定められています。日本全国、何処で診療を受けても、診療報酬には差がありません。医療機関では利益率が良いとされる診療所でも、一般企業よりも厳しい経営状況があるのが現状です。

どうする?ベースアップ評価料

弊社のお客様は、ほとんどが中小規模の医療機関であり、特に診療所の先生方が多いのです。
診療所の先生方にとっては、「ベースアップといわれても・・・どうすればいいのか?」という方がほとんどのように感じます。そのような中の医療機関では定期昇給もままらならず、職員の確保に苦慮しておられる先生方も少なくありません。

佐々木総研では、「経営のよろず相談屋」をモットーに、地域の中でなくてはならない企業(医療機関もその一つ)に寄り添い、伴走者としてお困りごとに一緒に向き合ってきた歴史があります。

今回のWeb講座の開催では、「ベースアップ評価料」の基本的考え方について、関連会社である株式会社M&Cパートナーコンサルティング代表取締役で、診療報酬のプロである村上佳子代表に、そして、弊社の人事コンサルティング部部長である石井洋氏から、社会保険労務士の視点で話をするというWeb講座を企画し、開催いたしました。厚生労働省の説明会動画(YouTube)を見ても、よくわからない・・・という先生方のお声を耳にし、企画をしたしだいです。

先生方からのお声

参加した先生方のお声を一部ご紹介します。

「具体的な説明があり、サンプルと考え方を示してもらい、わかりやすかった」
「事務職員のうち、どの程度診療に関与している職員がベースアップ評価料の対象になるのか?」
「ベースアップの金額が賄えるのか?」
「丁寧な対応で、少し心が軽くなった」
「事務職員へのベースアップはできないのか?」

厚労省からもベースアップ評価料の試算ツールが出されていて、その中に診療所の実績(初診料や再診料、入院料等の算定患者数)を入れていくと、どの点数算定に該当するかが表示されてきます。
現状で「ベースアップ評価料(Ⅰ)」「ベースアップ評価料(Ⅱ)」の算定ができるのかどうか?もし、算定できるとすると、どの区分で算定できるか?という試算が出てきます
まずはそのツール入力し、自身の医療機関の現状をしっかりと見ていく必要があります。

めんどくさいからやらない(基準の届出をしない)というのも、ひとつの考えだと思いますが、様々なメディアでも「診療報酬に賃上げの考え方が入っている」ことは公表されています。職員の期待感も高まっていますので、「賃上げ」についてはやらざるを得なくなってきているのではないかと思います。
仮に、「賃上げ」を行わないとなると、職員の退職を止められない可能性も出てきますので、慎重に対応が必要でしょう。

Q&Aについて

先生方からの質問については、すべてお応えできるだけの厚労省からの情報はなく、さらに、細かな計画書や届出用紙を見てご不安を覚えておられる先生のお声もいただいております。幸いにも今年度の改定は6月改定と2カ月後ろ倒しになっていますので、その間情報を把握し、検討する余地があるのは幸いだったと、ポジティブにとらえ現状を見直すことをお勧めしたいと思います。

また、計画書については、作業内容が難しく先生方も苦慮されている様子もお見受けします。見込みで計画を立てるため、実際の診療報酬がどのようになるか・・・昨年と同等の患者数が見込めるかどうか・・・ということも不安材料の一つです。この為に、3月に1回報告書を提出し、算定内容を見直すこととされていますが、事務作業量の増加は目に見えています。

おわりに

開催前は、詳細な情報が出ていない中で、どれだけのご説明ができるのか、すでに厚生労働省からの説明会資料や動画がYouTubeに出されているので、必要ないのではないか・・・という講師の声もありました。しかしながら、これまでになく参加申し込みをいただき、ご質問をたくさんいただきました。
今回のWeb講座ですべてのご質問に対し、お答えが出せているわけではありません。
実際には、「まだわからない」「現時点では答えが出せない」ということも多く、企画をした者としても心苦しい思いがございました。

しかし、今回のWeb講座の後、複数の先生方からは、「一人で悶々としていて不安だった」「わからないことと、今できることが整理できてよかった」「少し気持ちが軽くなった」というお声をいただき、開催してよかった!と思いました。

現時点で「計画書の記載」や施設基準の届出」について具体的なお話ができていませんので、第二弾を企画・検討していきたいと思います。またご期待ください!
今後ともよろしくお願いいたします!

2024年4月2日


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