実績報告の準備は大丈夫?~令和6年度ベースアップ評価料、提出忘れにご用心!~

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

2024年度(令和6年度)の診療報酬改定では、「ベースアップ評価料」の導入が大きな注目を集めました。この評価料は、医療・介護職員の処遇の改善を支援する仕組みですが、評価料を受け取った医療機関には「実績報告」の提出が義務付けられています。

令和7年度(2025年度)も引き続き評価料を算定したい場合、「実績報告書」と「賃金改善計画書」の両方を期日までに提出しなければなりません。
今回は、厚生労働省の資料をもとに、「実績報告書」の概要とポイントをわかりやすく整理します。

 ※弊社のホームページでも情報提供しておりますので、見逃した方はこちらからご覧ください。
  ◆Q&Aより
    ~ベースアップ評価料(Ⅰ)の計画書・報告書はどうしたらいいですか?(2025.03.21掲載)
  ◆ベースアップ評価料の令和7年度計画書~準備は万全ですか?~(2025.06.02掲載)

提出スケジュール(令和6年度実績分)

最初に、今回のベースアップ評価料については、年度ごとの事業になっていますので、毎年3月に締めて、次年度の計画書を6月に、また、8月に前年度(今回の場合は令和6年度)の実績報告が必要になります。これが算定をするうえでの要件となります。厚生労働省が作成している特設ページにスライド資料がありましたので、添付します。

今回はこのSTEP3「賃金改善実績報告書」の提出がテーマになります。

出典/厚生労働省「ベースアップ評価料について」より

令和6年度の「ベースアップ評価料」実績報告について

令和6年度の実績報告を作成するにあたって、手順をご説明したいと思います。

令和6年度のベースアップ評価料報告対象期間は?

令和6年6月~令和7年3月末までになります。
これは、年度ごとの事業となりますので、本来は4月~翌年3月末までとなりますが、改定が令和6年6月改定となったため、令和6年度については少し変則となっていますので、ご留意ください。

「ベースアップ評価料の算定実績」を確認する

まずは、令和6年度に受け取ったベースアップ評価料の金額を集計します。
レセプトコンピュータ(レセコン)の統計(集計)機能を活用し、「診療項目(行為)別集計表」から、「ベースアップ評価料」の算定回数と金額を集計します。期間指定・・・例えば、令和6年6月1日~令和7年3月31日までの期間を指定して、一度に集計できるレセコンもあれば、1か月ごとに集計をかけないといけないシステムもありますので、ご留意ください。

賃金改善の実施内容を集計する

対象職員への給与改善(基本給、賞与、手当等)の総額を算出します。
支払った基本給与総額(ベースアップ前)とベースアップした金額を集計します。

基本給等総額は、毎月固定で支払う手当が含まれると考えていただいてよいと思います。
また、基本給をベースアップすることにより上がっている超過勤務手当等については、別途集計されていると、報告書に反映するところがありますので、準備された方がよいと思います。

よくある質問について

ここで、厚労省のホームぺージの中から、よくある質問について、見ておきましょう!

Q1:定期昇給も含めてよいの?

(A)いいえ。定期昇給は評価料による改善とはみなされません。
  評価料による“新たな改善”部分のみを実績額として集計し、記載することとなります。

Q2:賞与や手当に使ってもOK?

(A)はい、基本は月額の支給が期待されていますが、評価料は月給だけでなく、賞与や一時金、各種
  手当として支給しても問題はないと思います。使途の制限はありませんが、「ベースアップ評価料」
  として収入を得た収入分は全て職員の賃金改善に充てることが原則となります。

Q3:途中で職員の入れ替わりがあっても報告は必要?

(A)はい。職員の入退職があっても、職種区分ごとの「在籍職員全体の給与総額」で集計します。
  個別の職員単位での提出は不要です。

Q4:「基本給与総額」とは何を指しますか?

(A)残業代や賞与、各種手当を含まない、基本給ベースの給与総額を比較して、改善額を算出します。
  残業代等の変動する手当のアップ分や賞与については1か月額に換算して記載する欄があります。
  報告書欄を記載するときに留意していきましょう。

Q5:旧様式と新様式、どちらを使えばよい?

(A)原則「新様式(令和6年度版)」を使用してください。
  地方厚生局のページに従って記載するようにしましょう!

最後に

この報告制度は、単なる手続きではありません。
実際に処遇改善が行われているかを「見える化」することで、医療現場の人材確保・定着を支援するしくみです。

「うちは人数が少ないから関係ない」と考えず、制度の流れと意味を理解し、必要な準備を確実に行いましょう。提出期限直前に慌てないためにも、早めの集計・帳票準備をおすすめします。

<参考資料> 令和7年7月8日確認

■厚生労働省/ベースアップ評価料等については ⇒(こちら)
  ⇒ベースアップ評価料届出後の流れ(評価料Ⅰのみを届出している医療機関・ステーション用)
  ⇒ベースアップ評価料届出後の流れ(上記以外の医療機関・ステーション用)
 

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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