電話が苦手な新人さんへの“安心を与える声かけ” ~院長・事務長の立場から~

長 幸美

医療介護あれこれ

前回の接遇レッスンでは、「電話が怖い」と感じている新人さんに向けて、エールをお送りしました。
今回はその続編として、そうした不安を抱える新人さんが「ちょっと頑張ってみよう」と思えるようになるために、院長先生や事務長、そして先輩スタッフの方々ができる“寄り添いのかたち”について考えてみたいと思います。

「電話が怖いんです」「失敗してしまいました…」

新人職員からこんな言葉を耳にしたことはありませんか?
LINEやチャットなど、文字によるやりとりが主流の世代にとって、“声だけ”で行う電話応対は、とてもハードルの高いもの。
そのような中で、元気のない職員に対し、どのように声をかけていますか?

「なんで?なんて言ったの?」と詰問する
「ちゃんとやってもらわないと困るよ」と叱る
「苦手なら無理しなくていいよ」と電話業務から外す

――さて・・・皆さんの医療機関で、こんな対応をしていませんか?

もちろん、少人数で仕事をしているクリニックでは、誰もが電話の対応をできないなければ、職員同士で負担や不満を感じてしまい、関係がぎくしゃくしてしまうことにもなりかねません。
それではどうすればよいのでしょうか。

答えは、「失敗を責める」でも「免除する」でもなく、“寄り添いながら育てる”ことが大事なのではないでしょうか。
院長先生や事務長(特に奥様の場合)の寄り添いつつ一緒に頑張ろうという気持ちのこもった一言が、新人さんの不安を解きほぐし、「また頑張ろう」と思わせる力になるのです。

◆ 1. 「怖い」という気持ちを否定しない

新人さんが「電話が苦手です」と打ち明けてきたとき、つい「慣れれば平気よ」「気合いだよ」と励ましたくなるものです。
でもまずは、その“怖い”という気持ちをまっすぐ受け止めてあげましょう。

「電話って最初は緊張するよね。私も昔そうだったよ」
「私も名前を聞き取れなくて、何度も聞き返して怒られたことがあるのよ」

そんなふうに共感を示すと、安心感が生まれます。
そのうえで、「こういう業者さんの電話がよくかかってくるよ」「こう答えれば大丈夫だよ」といった具体的なアドバイスがあると、より心強く感じてもらえます。

◆ 2. 小さな成長を見つけて、言葉にして伝える

はじめて電話を取った。名前を聞けた。保留をして電話を繋ぐことができた――
そんな“ほんの小さなできごと”でも、ぜひ声をかけてあげてください。

「今の電話、落ち着いて対応できてたね」
「メモをちゃんと取れてたの、良かったよ!」
「最後の声のトーン、明るくて素敵だったね」

努力を認めることで、新人さんは「ちゃんと見てくれている」と感じ、自信へとつながります。

◆ 3. 「失敗しても大丈夫だよ」という土台づくり

電話が怖い人の多くは、「間違えたらどうしよう」「怒られたらどうしよう」といった不安を抱えています。だからこそ、まずは「失敗してもいいんだ」と思える“安心の土台”を用意することが大切です。

「分からなかったら、すぐ相談していいからね」
「間違えても大丈夫。一緒に確認すればいいよ」

“責められない環境”は、新人さんにとって、挑戦するための心の安全帯になります。

◆ 4. 「そばにいるよ」が、新人さんの勇気になる

電話応対は、新人さんにとって“声だけの対応”・・・そして毎回が”本番”。そう考えるとどれだけ不安か、怖いか・・・想像できますよね。けれど、「そばで見てるからね」「一緒に練習しよう」といったサポートがあるだけで、安心感は大きく変わります。

「次の電話、私が横で聞いてるから安心して出てみよう」
「練習してから実際の電話に出てもいいよ」
「分からなくなったら『少々お待ちください』って言ってくれれば大丈夫」

ほんの一言、たった数分の付き添いでも、安心とやる気が芽生えます。

おわりに――あなたの声がクリニックの印象になる

電話応対は、単なる「作業」ではありません。
新人さんの声が、患者さんにとっての“クリニックの第一印象”になることもあります。
だからこそ、ぜひこう伝えてください。

「あなたの声が、このクリニックの“らしさ”をつくるんだよ」
「あなたにこの仕事を任せたいと思ってるよ」

そんな一言が、きっと新人さんの自信を支える力になります。

院長先生や事務長の「たったひと言」が、新人スタッフの未来を変えるかもしれません。
「あなたを見ているよ」「応援しているよ」
――そんな思いを、ぜひ日々の声かけに込めて届けてください。

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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