「一般名で処方する」とは?~一般名処方加算をめぐる背景とポイント~

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

「最近、薬局で“この薬は一般名で処方されています”と聞いたけれど、それって何?」
こんな疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。医療機関に勤めている皆様はご存知ですか?

薬の名前には「商品名(例:ムコダイン®)」と「一般名(例:カルボシステイン)」の2つがあります。
最近では、この“一般名”で処方することを評価するしくみが設けられ、「一般名処方加算」という形で診療報酬にも反映されています。

一般名処方加算とは?

さて、先ほどの「一般名」とは簡単に言うと「成分の名称」ということになります。
つまり、「一般名で処方する」とは、その薬品の成分名を表示して処方し、同じ成分であれば銘柄は何でもいいですよ、調剤薬局で銘柄や金額等の説明をして、選択してください・・・ということです。

また、この一般名処方することに対し、診療報酬のルールで、加算が設定されています。
これが「一般名処方加算」です。処方せんに商品名ではなく、成分名(一般名)で薬が記載された場合に加算される点数です。令和6年度の診療報酬改定では、以下のように見直されました。

一般名処方加算1(10点):2品目以上の後発医薬品がすべて一般名で記載されている場合
一般名処方加算2(8点) :処方薬剤の中で、1品目以上が一般名で記載されている場合

つまり、できるだけ「薬の中身の名前」で処方しましょう!という動きが進んでいるのです。

なぜ一般名で書くの?

理由は、主に3つ考えられます。

理由①:供給不足時の対応力アップ

医薬品の出荷停止や供給不足による医薬品の入手困難な状況をなくすことができます。
例えば、あるメーカーの薬が一時的に品薄になったとしても、一般名処方であれば、薬局が別メーカーの同じ成分の薬を調剤できます。このように、患者さんの必要な薬剤が手元に届かず治療が継続できないという事態を防ぐことができるのです。

理由②:薬剤費の抑制(後発医薬品の活用)

後発医薬品は、先発医薬品よりも価格が安く設定されています。それは1から開発しなくてもよいというメリットがあり、高額な開発費がかからなくなるということが考えられています。
もし、経済的な事情で治療を継続できない状況があるとしたならば、安価な医薬品を検討することにより治療継続ができるようになります。
また、医薬品費が少しずつでも安くなるとしたならば、一般名処方により、後発医薬品(ジェネリック)への変更がしやすくなり、増大する医療費の削減にもつながり、社会保障費を抑えることができます。

理由③:患者さんの選択肢拡大

患者さんが希望する剤形(錠剤、粉など)や飲みやすさ等で、医薬品を選べる可能性もあります。
例えば、同じ成分の医薬品であっても、錠剤の大きさやカプセル、顆粒、等に形状を変えることにより、飲みやすい形のものを選ぶこともできるようになります。

医療機関に求められる体制

今回の改定では、「ただ一般名で書けばいい」ということだけではなく、説明と環境整備が求められています。つまり、受付の事務員さんについても、患者さんから聞かれた時に、ある程度の仕組みの説明はできるようにされたほうが良いと思います。以下のようなことが自院でできていますか?

 ・一般名処方の目的や背景を患者さんに説明できる体制があるか?
 ・院内に「一般名処方にご理解をお願いします」といった掲示物の設置ができているか?
 ・使用薬剤が厚労省の「一般名処方マスタ」に掲載されているものであるか?

また、加算1と加算2について、同じ一般名で算定できる場合と出来ない場合などが出てきて、患者さんからのお問い合わせにお答えできるように学んでおく必要がありますね。

最後に

診察室で「この薬、一般名で書いておきますね」と言われても、患者さんは「なんだかよくわからないな…」と感じることがあるかもしれません。でも、これは、より柔軟に、安心して薬を受け取れるようにするための取り組みであることをお伝えできるようにしましょう。

一般名処方の目的は、「安全で、安定した、効率的な薬の提供」にあります。医療機関と薬局、そして患者さんが協力してこの仕組みを活かすことが、持続可能な医療制度にもつながっていくのです。
医療機関の窓口の方は特に、はじめに患者さんがお越しになり対応します。そして診察を受けた後最後に対応するのも受付です。この為、不安なことやわからないことなど、受付さんにお聞きになるということもよくあることです。
このような仕組みについては、丁寧に説明できるように理解しておくことも、大事になりますね。
これを機会に皆さんで学んでいきましょう!

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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