リスキリング~私のステップアップ術~

長 幸美

医療介護あれこれ

さて年度末を迎えました。新年度目前で、新たなステージへの出発を決めた方、これまでのステージをより深めていこうと決心された方・・・様々なその方のステージへの進め方があると思います。
さらに、新年度も迎え、新しい環境でステップアップを図るために大学や高校へ入学する方、進級する方・・・様々なその方のステージでが広がっていることでしょう!

そんな皆様に、私の経験を少しだけお話ししたいと思います。

わらしべ長者

皆様は「わらしべ長者」というお話しご存じでしょうか?
日本のおとぎ話の一つですね。

昔、ある一人の貧乏な男がいました。毎日まじめに働いても暮らしは一向に良くなりません。何とか貧乏から逃れようと、ある時観音様へ願をかけたところ、「初めに触ったものを大事に持って旅に出なさい」とのお告げがありました。男は観音堂から出るや否やに躓き転んだとき、1本の藁しべに手が触れました。男はお告げの通り、その藁しべをもって道を進んでいったのです。ところが男の顔の周りを一匹の虻(あぶ)が飛び回り煩くて仕方がありません・・・男はその虻を捕まえ藁しべに結び付けてやりました。するとそばで大泣きしていた男の子が虻を結び付けた藁しべを見て欲しがるのです。その藁しべを男の子に譲り、そのお礼に蜜柑をもらいました。さらに歩いていくと、のどの渇きに苦しんでいる商人がいました。その商人は男が持っていた蜜柑を欲しがり、持っていた上物の反物と蜜柑の交換を申し出てきました。男は蜜柑を譲り反物を手に入れました。さらに歩いていくと、旅の途中で侍に出会います。その侍は愛馬が急病で倒れてしまいましたが、先を急いでいる為その馬を見捨てなければならない状況にありました。侍は家来に馬の始末を命じ、先を急いでいこうとしました。家来は困り、馬の始末を男に依頼しました。そこで、男は反物と馬を交換し、男は馬に水を飲ませたところ、馬はすっかり元気を取り戻して立ち上がったのです。男は馬にまたがりさらに旅をつづけていきました。しばらく行くと、大きな屋敷に行き当たりました。ちょうど旅に出ようとしていた屋敷の主人は、男に屋敷の留守を頼み、代わりに馬を借りたいと申し出ました。屋敷の主人は「三年たって、自分が帰って来なかったら、この屋敷は男に譲る」と約束をして、男の馬に乗って旅に出ました。しかし、屋敷の主人は3年待っても、5年待っても屋敷に戻ることはなく、男は屋敷の主人となり俗福な生活を手に入れました。
・・・というのが話のあらましです。

スキルアップと似ているところ

私はこの話が我々のスキルアップに似ていると思うのです。

医療系事務職員のスキルアップを進めていく中で、「私の仕事はここまで・・・」と仕事の範囲を決めてしまっている方が多くおられます。とてももったいないなあ、と残念に思います。
仕事の中には、隙間・・・つまり医療専門職の隙間を埋めていく仕事が数多くあります。誰でもできること・・・しかも何となく曖昧で明確でない仕事はやりたくない・・・という方が少なくありません。

この「わらしべ長者」に出てくる男は、何をやってもうまくいかないことを神様に相談しました。
何故うまくいかないんだろう・・・周りには成功して楽しく暮らしている人もいっぱいいるのに・・・。「わらしべ長者」に出てくる主人公は、神頼みしたのですが、その時の「ありがたいお告げ」に従い、たまたま転んだときに手にした藁をも大事に持って旅に出ます。そして、何か褒美を得ようとしたり、見返りを期待したりしたわけではなく、出会った人から「感謝されること」を続けていくことで、大きな幸せを掴んだというお話しなのです。

私たち医療系事務職員は、国家資格はありません。医療専門職の中で、誰もやらない小さな仕事、目の前の仕事をすることが多々あります。それは私自身のためというより、一緒に働く医療専門職の方のためであり、ひいては患者さんやそのご家族さんのことを思って動くことが多いものです。つまり、利他の精神で「何が世の中のためになるか」ということを考えて行動することが大事になるわけです。

リスキリング(Re-Skilling)~学び直し~

最近では、「リスキリング(Re-Skilling)」という言葉がよく聴かれるようになってきました。
「リスキリング(Re-Skilling)」とは、新しいことを学び、新しいスキルを身に着け実践し、そして新しい業務や職業につくこと」と定義されています。

私は、そんなたいそうなことを考えなくても、「リスキリング(Re-Skilling)」することはできるのではないかと思っています。日常の中にも、そのきっかけはたくさんあります。
新しい業務や転職しなくても、今の時代は「リスキリング(Re-Skilling)」はとても重要です。
なぜならば、時代の変遷に合わせて、その知識や技術を学び直すことは必要だからです。
そして令和6年度診療報酬改定を目前にした「今」、まさに「リスキリング(Re-Skilling)」だと思いませんか?

今年は「惑星直列」と称されるほど、様々な変化が重なる年になっています。
先ずは「トリプル改定」・・・診療報酬・介護報酬・障害報酬が同時に改定になる年です。
次に、医療DXの推進が本格化してきました。ネットワークを通じて地域の中で情報共有し、看取りや高齢者救急、感染症対策まで・・・マイナポータルを活用して様々な医療情報・介護情報等を患者さんを中心にしながら共有していく基盤が作られています。
そして、働き方改革・・・これは改正労働基準法の施行により勤務医の負担軽減、医療・介護従事者の処遇改善など、広く進められてきます。
これらの基盤になる、第8次医療計画、そして第4期医療費適正化計画・・・これらにより各病棟の医療機能の強化が図られ、外来・在宅の機能、かかりつけ医機能の深化もこの中に含まれてきますね。
こうした「改定」が定期的に行われ、その中でどちらの方向に向かっていくか・・・ということを検討するのは、まさに「リスキリング(Re-Skilling)」、学び直しが重要になってきます。

特にクリニックや中小病院の医療系事務職員さんや看護師さんをはじめ、コロナ禍以降の早いスピードで医療情勢も変化への対応はとても大変なことだと思います。これまでのように「苦手だから・・・」「ネットはちょっと・・・」と目をつぶっていてはついていけなくなってしまいます。
先駆者として先に駆けていく必要はありませんが、せめてこの仕組みについて行かないといけないなあと思っています。

まとめ~キャリアアップのために今すぐ実践してほしいこと

私の仕事人生の中で大事にしていることは、三つあります。

①小さなことでも一所懸命に心を込めてやりきること(諦めない)
②何事も楽しむこと(やってみよう!)
③感謝すること・リスペクトすること

仕事をするうえでは、こんな小さなこと・・・つまらないなと思うこともあるかもしれません。
しかし、その一つ一つが将来の糧になっていく、キャリアに繋がっていくということがとても面白いし、いいなと思います。
また、私がこれまで医療機関の現場で困っていたことは、ほかの医療機関で、同じように困っているんだな・・・ということも、経験してわかってきました。

つまり、皆さんが今、目の前で苦労している課題は、将来皆さんの役にたつということです。
無駄なことは何もない、そして相手にとっても「よいこと」をする(利他の心で)と、少しずつ好転していく・・・ということは「わらしべ長者」が教えてくれています。分からないことも、学んでいくうちに理解でき実践するうちに身についていくことも多々あります。現状の置かれた場の中でも少しずつ「リスキリング(Re-Skilling)」はできていくと思います。
まずは、躓いたところから立ち上がって、一歩進むことを考えてみませんか?
材料は、たくさん落ちていると思いますよ! 一緒に前にすすんでいきましょう!

2024年3月18日

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