薬剤料の算定について①
長 幸美
医業経営支援医療事務基礎講座では、診療報酬にかかわる基本的なルールについて解説をしておりますが、今回は、「投薬」した場合の算定について2回に分けてお話をしたいと思います。
1回目は、基本的な投薬にかかるルール(療養担当規則)と、薬剤のカタチ(剤型)についてみていきたいと思います。
■投薬の方針・・・療養担当規則第20条第2号
まず初めに、療養担当規則に書かれている投薬に関する記載を見ておきましょう。
<療養担当規則第19条>
保険医は、厚生労働大臣の定める医薬品以外の薬物を患者に施用し、または処方してはならない
⇒つまり、使用する医薬品は薬価基準告示に収載されている薬剤である必要があります。
これは①先進医療、②治験にかかる診療、③薬事承認後薬価基準収載までの期間における当該医薬品の投与等についてはその限りではないとされています。
<療養担当規則第20条第2号>
「投薬は必要があると認められる場合に行う。」とあります。さらに、「治療上1剤で足りる場合には1剤を投与し、必要があると認められる場合は2剤以上を投与する。」こと、「同一の薬剤はみだりに反覆せず、症状の経過に応じて投薬の内容を変更する等の考慮をしなければならない。」とされています。
■内服薬は飲み方によりまとめていく!
「内服薬」は口から服用する(飲む)ことにより効果を得るものになります。
お薬の形状により、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、ドライシロップ剤などがあります。内服薬の1剤の考え方には、このお薬の形状等にかかわらず、服用するタイミングが同じものをまとめていくことになります。
つまり、「朝・昼・夜」の食後1日3回、「眠前」など、服薬時点ごとということになります。
■内服薬の種類を知ろう!
お薬の形状は同じように見えても様々あります。「言葉」を整理しておきましょう!
a) 錠剤・・・単位は、「錠」「T」と記載される。
似ているようですが、同じ錠剤でも、それぞれに特殊な加工が施され次のような種類があります。
① 裸錠(素錠)・・・薬の成分を圧縮しただけのもの
② 糖衣錠・・・飲みやすいように素錠の周囲に糖分の膜で包み飲みやすくしたもの
③ フィルムコーティング・・・光や湿気により薬剤の効果が減退することを防ぐためにフィルムでコーティング加工したもの
④ 腸溶錠・・・薬の成分が胃酸により減退することを防ぐため、胃液で溶けないよう
にコーティングしたもの。錠剤のまま服用する必要がある
⑤ チュアブル錠・・・かんだりなめたり、水なしで服用できるよう加工されたもの
⑥ 徐放錠・・・薬剤が溶け出す時間を調節できるよう特殊加工されたもの。
1日の服用回数を減らすことができる
⑦ 速崩錠(口腔内崩壊錠)・・・嚥下困難な患者でも服用できるよう口腔内で崩壊し
水なしでも服用できるもの
b) カプセル剤・・・単位は「cap」「C」と記載される。
粉末や顆粒をカプセル内に充填し服用させるもの(硬カプセル剤)と液体をカプセル状にした(軟カプセル剤)がある。
カプセル自体に徐放性、腸溶性の加工を施したものもある。
十分な水の量での服薬や寝たきりの方は飲み込みが悪く途中に引っかかり炎症の原因になることもあり注意が必要。
c) 散剤・・・単位は「g」「包」と記載される。
いわゆる粉薬(粉末状の薬)のこと。薬の量を細かく調整ができ、錠剤やカプセル剤に比べ、腸からの吸収が速いという特徴がある。
d) 顆粒剤・・・単位は「g」「包」と記載される
大きさのそろった小さな粒状で、散剤に比べて舞い散ることが少ない加工が施されたもの。コーティングの厚みにより成分が溶け出す時間を調整することも可能。
e) 液剤・・・単位は「ml」
薬の成分を水や少量のアルコールで溶かしたもの。子供でも飲みやすいように甘味や香りをつけたものもある。固形の薬剤に比べ、腸からの吸収も早い特徴がある。
f) ドライシロップ・・・「g」「包」と記載される。
甘味の付いた顆粒を水に懸濁して飲むシロップ剤のこと。
■頓服薬
頓服薬は1日2回程度を限度として臨時的に投与するものをいうと、定義づけられています。つまり、「痛いとき」や「発熱時」「発作時」など、何らかの症状を抑える場合に臨時的に服用するものです。
1日の服用回数が2回以上で、かつ、服用に時間的、量的に一定の方針がある場合は内服薬とすることとされています。
■外用薬
外用薬は、皮膚や粘膜に直接塗ったり貼ったりして使う薬剤です。
a) 軟膏・クリーム剤・外用液剤
皮膚の表面に塗る薬です。使用する場所や状態により、使い分けます。
b) 点眼薬
いわゆる目薬です。
c) 点鼻薬
鼻の穴に容器の先端を入れて薬を鼻粘膜に直接噴霧します。
d) 坐剤
肛門の中に挿入する薬剤で、痔の薬や解熱剤等があります。
e) 貼付剤
皮膚に直接貼って使う薬剤です。一般的によく目にするのは、湿布薬です。薬の成分を皮膚から浸透させて成分を与えるものです。
f) 吸入剤
吸い込んで気管支や肺に作用させる薬で、気管支喘息やCOPD,インフルエンザ等の薬剤があります。コツが必要なので、薬剤師による指導が必要な場合があります。
ここで注意してほしいのは、吸入薬です。なんとなく口から吸わせるので、内服薬と勘違いされている方も時々お見受けしますので、これは、吸い込んで直接気管支等の粘膜に作用させるため、外用薬の扱いになることを覚えておきましょう。
また、高齢者などは、錠剤をのむことができず、粉末にした状態や溶かして飲ませたりすることがありますが、徐放カプセルや徐放錠のように形態によっては粉末したり溶かして服用したりすることができないものも ありますので、薬剤師さんと相談することを勧めましょう!
沢山の薬剤のカタチがあります。先生方はこれらの特徴を考え、患者さまの症状や臨床所見、嚥下機能(飲み込めるか)なども把握しながら薬剤の調整を行われているのですね。
薬剤料は、内服薬、頓服薬、外用薬それぞれに算定のルールがあります。1剤や1調剤の考え方が違いますので、しっかり整理しておきましょう。
次回は、算定方法についてお話したいと思います。
<参考資料>
〇医学通信社「診療報酬早見表」 第2章特掲診療料第5部投薬(557p~)
医業コンサル課 長幸美
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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