薬剤料の算定について②

長 幸美

医業経営支援

前回は、療養担当規則の投薬の方針や、様々なお薬のカタチ(剤型)があることを見てきました。先生方はこのお薬を組合わせて処方されるわけですが、今回は、医療機関での「投薬」の算定方法についてお話を進めていきたいと思います。

※前回の記事はこちら

■処方には二通りのやり方がある!
医療機関が処方箋を発行してお薬は保険薬局から受け取るパターンを「院外処方」といいます。また、院内でお薬を調剤してお渡しする場合を「院内処方」といいます。
医薬分業が進められ、多くの医療機関では院外処方を利用する場合が多くなってきました。
<院外処方の場合>
院外処方の場合は、医療機関では「処方箋」を交付して、患者が自ら保険薬局に持参し、保険薬局(調剤薬局)でお薬を交付してもらいます。
医療機関で算定できるのは、「処方箋料」と付随する「加算」になります。

【処方箋料】
保険薬局において調剤を受けるために処方箋を交付した場合に算定するものです。
1.向精神薬多剤投与の場合  28点
2.多剤投与及び向精神薬長期投与の場合 40点
3.1及び2以外の場合 68点

この1,2,3については、「処方料」の考え方と同様ですので、そちらを参照してください。
また、処方箋料に付随する加算については、以下のものがあります。
・乳幼児加算(3歳未満の乳幼児) 3点
・特定疾患処方管理加算
(処方期間28日未満18点月 2回、処方期間28日以上36点月1回)
・悪性腫瘍剤処方管理加算(月1回70点)
・一般名処方加算(7点、5点)
・向精神薬調整連携加算(12点月1回)
該当するかどうか、点数表で確認をとりましょう!

<院内処方の場合>
保険医療機関の中でお薬を調剤し患者さんに渡します。
算定は「調剤料」+「処方料」+「薬剤料」になります。月初めの場合は調剤技術基本料の算定ができます。

基本的なルールとして、同じ診療について同日で「院外処方」と「院内処方」を組合わせていくことはできません。ここは留意点として覚えておきましょう。

【調剤料】
薬剤師が処方箋をもとに薬剤を調合する料金です。
1処方につき下記の点数を算定します。
麻薬や向精神薬、覚せい剤原料または毒薬を調剤した場合は麻薬等加算として1点を加算できます。
・内服薬・頓服薬 ・・・11点
・外用薬 ・・・8点

【処方料】
簡単に言うと、医師が薬剤の必要性を判断し指示することに対する料金です。
処方する薬剤の種類により算定が変わります。
一般的には1処方当たり42点算定できるもの(下記③)ですが、以下のように向精神薬の多剤投与(下記①)、7種類以上の内服薬の多剤投与と向精神薬の1年以上の長期投与(下記②)に該当する場合は点数が下がります。
薬剤の種類や出し方によって点数が変わってきますので要注意です。
① 向精神薬多剤投与の場合・・・18点
「向精神薬多剤投与」とは、3種類以上の抗不安薬、3種類以上の睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬、3種類以上の抗精神病薬または4種類以上の抗不安薬及び睡眠薬の投与を行った場合を指す。
② ①以外の場合であって、7種類以上の内服薬の投薬を行った場合(※1)または不安若しくは不眠の症状を有する患者に対して1年以上継続して厚生労働大臣が定める投薬を行った場合(※2 向精神薬長期投与)・・・29点
③ ①及び②以外の場合・・・42点

ここで問題になるのが、「※1」「※2」に該当する場合です。「※1」については次の薬剤料で説明します。

※2 向精神薬長期投与の場合、直近1年間に精神科の医師からの助言を受けて処方している場合にはこれに該当せず、③の42点を算定することができます。「不安又は不眠にかかる適切な研修を修了した医師」若しくは「精神科薬物療法にかかる適切な研修を修了した医師」が処方する場合は、この精神科の医師からの助言を受けて処方しているものとみなすことができます。
ここで出てくるのが、「不安・不眠にかかる適切な研修を修了」しているかどうかということになります。医師会からの案内が配布されていると思いますが、この研修を受けていない場合は、精神科に定期的に受診し、薬剤の調整について助言をもらいつつ処方を行うことになります。該当する薬剤には、眠前薬として広く使用されているものもあります。点数表等でご確認いただいたほうが良いと思います。

また、処方料には、様々な加算があります。
・麻薬等加算(1点)、
・乳幼児加算(3歳未満の乳幼児3 点)、
・特定疾患処方管理加算(200床未満18点、68点)、
・悪性腫瘍剤処方管理加算(70点)、
・外来後発医薬品使用体制加算(後発医薬品の採用割合により5点、4点、2点)、
・向精神薬調整連携加算(12点) ・・・などです。
該当するかどうか、点数表の算定要件を確認してみましょう!

【薬剤料】
この薬剤料は、内服薬、頓服薬、外用薬により、算定方法(算定単位のカウント方法)が変わってきます。
・内服薬・・・1剤1日分
・頓服薬・・・1回分
・外用薬・・・1調剤

頓服薬は1回分毎の計算(カウント)なのでわかりやすいと思います。
外用薬も、「1調剤」ごと・・・つまり1度に調剤する薬剤の総量がひと単位になりますので、これも分かりやすいかなと思います。

さて、「内服薬」ですが、この「1剤」という考え方を整理しておく必要があります。
「1剤」とは、服用時点及び1日の服用回数が同一のもの、となります。つまり、朝昼夕食後1日3回服用する場合は、その薬剤をまとめて1剤としてカウントすることになります。
これが前述した「処方料② 7種類以上の内服薬の投薬を行った場合(※1)に該当するか否かで処方料も変わるし、薬剤料の計算も注意が必要です。つまり、この「7種類以上内服薬の投薬を行った場合」に該当してしまうと、薬剤料も満額いただくことはできず、薬剤の総点数に90/100を乗じた金額で算定することになります。
多剤投与するとそれだけ医療機関は収入が減り損をする仕組みです。
この仕組みにより、薬剤料についても安易に処方せず、必要なものを最小限で投与するという療養担当規則に則った算定方法になっているわけです。

但し、この服用のタイミングにより、剤数をカウントすることについては例外があります。
ア) 配合不適等調剤技術上の必要性から個別に調剤した場合
イ) 固形剤と内容液剤の場合
ウ) 内服上とチュアブル錠等のように服用方法が異なる場合
これらア、イ、ウに該当する場合は、そもそも個別にカウントして、薬剤を出したかにより、処方料の※1多剤投与に該当すると処方料が安くなるということになります。

これまで2回にわたり、お薬を処方する場合のルールについてみてきました。細かい内容は診療報酬点数早見表を見てご確認いただきたいと思いますが、考え方など、整理することに役立てていただけたらと思っています。

<参考>
■医学通信社「診療報酬早見表」 第2章特掲診療料第5部投薬(557p~)

医業コンサル課 長幸美

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