令和5年度診療報酬改定~医薬品の安定供給のための特例~

長 幸美

医業経営支援

今回、令和5年4月に診療報酬の臨時改定が行われます。
改定の内容は、ずばり、「医療DXの推進」と「後発医薬品の使用促進」を強力に進めていくためのものではないかと思っています。今日は「後発医薬品の使用促進」について話を進めていきたいと思います。

■改定の趣旨
医薬品の供給が不安定な状況が発生していることを踏まえ、患 者への適切な薬剤の処方や、保険薬局の地域における協力促進などの観点から、保険医療機関・保険薬局に対する加算について、特例措置を講ずることとされました。
今回の特例措置は、令和5年4月から12月までの9か月間の時限的特例措置となります。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、必要な医薬品が不足するという事態になり、実際に患者さんの受入れを制限したというような事例を耳にしたことがあります。このような状況を重くみて、今回のような臨時的対応をされたのだと理解しています。

■後発医薬品の拡大促進により、医薬品の不足を補う
一般名処方・・・つまりお薬の有効成分を指定した処方指示を出すことや地域の中の保険医療機関・保険薬局がお互いに融通することにより対応していくことを目的とされています。一般名処方することにより、同じ成分の別のお薬を処方することが可能になります。
患者さんにとっては、お薬を切らすことなく加療継続することができますので、便利な仕組みでないかと思います。

■経済的負担軽減効果も期待できる
一般名処方は、後発医薬品を選択することにより、患者さんにとってはお薬の費用を抑えることができるというメリットがあります。お薬代は保険がきき一部負担金だけでもらえるとはいえ、継続診療を必要とする中では、負担に感じる方も少なくないと思います。
その反面、その時々でお薬の商品名が変わる場合もあり、不安を感じる患者さんもあると思います。その不安感に寄り添い対応することも必要かもしれません。

■診療報酬上の特例措置の全体像
保険医療機関や保険薬局に対し、一般名処方や後発医薬品について柔軟な対応をして適切な提供に協力してくれた場合に、「加算」という形で上乗せがされるものです。
全体の内容については、次のスライドをご覧ください。


(出典:厚労省「個別改定項目について」の補足説明資料(中医協_総-6_4.12.23)より)

この中で、要件が追加されております。
「医薬品の供給が不安定な状況を踏まえ、適切な提供に資する取り組みを実施した場合が対象」という部分なのですが、それぞれの場合に応じて要件の追加がされていますので、確認いただければと思います。

<一般名処方加算の場合>
外来で処方箋発行する場合の加算になります。
① 薬剤の一般的名称を記載する処方箋を交付する場合には、医薬品の供給状況等を踏まえつつ、一般名処方の趣旨を患者に十分に説明する
② 掲示が必要・・・①の取り組みについて

<後発医薬品使用体制加算の場合>
入院の場合は、後発医薬品使用体制にかかる加算になります。
① 後発医薬品使用体制加算にかかる届出を行っていること
② 医薬品の供給不足等の場合、治療計画の見直し等適切に対応する体制
③ 掲示が必要・・・①②の取り組みについて

<外来後発医薬品使用体制加算の場合>
外来の場合は、外来後発医薬品使用体制にかかる加算になります。
① 外来後発医薬品使用体制加算にかかる届出を行っていること
② 医薬品の供給が不足した場合に、医薬品の処方等の変更等に関して十分な対応ができる体制の整備
③ 掲示が必要・・・①②の取り組みについて

<保険薬局(調剤報酬)の場合>
保険薬局が地域において協力しつつ医薬品の安定供給に資する取り組みを評価する
① 地域支援体制加算にかかる届出を行っている保険薬局
② 後発医薬品調剤体制加算にかかる届出を行っている保険薬局
③ 地域の保険医療機関・同一グループではない保険薬局に対する在庫状況の共有、医薬品融通などを行っている・・・(地域の連携体制)
④ 掲示が必要・・・③の取り組みについて

詳細は末尾の参考資料(厚労省ホームページ)にてご参照ください。

追加要件等は、主に「一般名処方の趣旨や薬剤不足時の対応等の掲示」なのですが、入院と外来で掲示内容や表現方法が少し異なるものもあり、工夫が必要だと思います。
皆さまの参考にしていただけると幸いに存じます。

<参考資料>
〇厚生労働省「令和5年4月1日からの診療報酬上の措置について」より 2023年2月6日
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00043.html

医業コンサル課 長幸美

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