2023年、人事分野の方向性について

石井 洋

人事労務

昨年2022年10月28日に発表された岸田政権発足後の2度目となる経済対策の中で、第3の柱として掲げられているのが「新しい資本主義」の加速です。その中では、①賃上げ、②労働移動の円滑化、③人への投資、という3つの課題があげられています。
この中で特に賃上げの方向性が強力に情報発信されているのは良くわかりますが、今回は③「人への投資」パッケージを5年で1兆円へ拡充して行う労働者のリスキリング支援に着目し、「リスキリング」について記載します。

「リスキリング」とは新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること(させること)とされています。(参照:2021年2月26日リクルートワークス研究所 リスキリングとは)このリスキリングは、昨年5月に経済産業省から発表された、「人的資本関係の実現に向けた検討会報告書(人材版伊藤レポート2.0)」でも触れられており、経営を取り巻く環境の急激な変化に対応し、新たな経営戦略を実現する上で障害となっているスキル・専門性を特定し、社員に「必要なスキルを獲得させる」ためのリスキル・学び直しを主導する必要がある旨を報告しています。具体的には「新しい資本主義」の発表資料においても「デジタル推進人材育成230万人拡大」という文章が入っており、特にデジタル人材が非常に不足している危機感を示しています。今後少子高齢化が想像以上に進行し、生産年齢人口が急速に減少していくのは、事実として確定しています。それを踏まえた上で、どう事業を維持発展させるのか、どういう経営戦略を練ってそれを実現するのか、その重要な要素の一つとして人材確保、又は人材が外部から獲得できない場合、社内での人材育成が必要不可欠なものとして欠かせません。伊藤レポート2.0には会社が期待するほどにリスキルが進捗しない原因として、社員が現職での多忙さを理由に優先順位を下げること、スキル転換に伴うキャリアの変化に対して不安を覚えることを原因としてあげています。

今後の会社にとって、「どういうスキル・専門性」が欠けており、「誰が」キーパーソンとして求められるスキル・専門性の学び直しを進捗させるのか、「どうやって」リスキルを社員に実現させるのか、またリスキルを達成した場合の処遇や報奨、リスキルにチャレンジした場合の人事評価の仕組みも含めた人事の考え方も再考が必要となるでしょう。
2023年も求められるであろう「賃上げ」。単に最低賃金を含めた賃上げに対応しないといけない、人件費が上がって大変、というだけでは先細りは明らかです。2023年に新たな取り組みとして少しずつ始めてみませんか。

人事コンサルティング部 部長 石井 洋

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