【令和4年度診療報酬改定】適切な意思決定支援の推進

長 幸美

アドバイザリー

在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院の施設基準の見直しが行われ、より質の高い「在宅療養」の支援に対する評価が見直されてきています。
その一つとして、「適切な意思決定支援の推進」がありました。すべての在支診・在支病について、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた適切な意思決定支援にかかる「指針」を作り、しっかりと患者さんや家族に寄り添っていくことが求められています。

では皆さん、「適切な意思決定支援」というのはどういうものでしょうか?

これまで、医療機関では緊急時に蘇生をするかしないか・・・という意思確認を入院時やターミナルに近くなった患者様の家族に同意を得て、「No CPR」「DNR」などとカルテに書かれていたのではないかと思います。つまり、もしも呼吸が止まった場合は救命処置をしない・・・という意思確認をされていたと思うのですが、この「適切な意思決定支援」というもの、かなり色合いが違っています。

■適切な意思決定支援が必要なわけ
これは、多様な価値観を持った人々が、だれもが迎える人生の最終段階において、その生き様や置かれた環境等を配慮して最後まで本人の生き方・・・つまり人生を尊重し、医療・ケアの在り方を検討していくことが重要であるという考え方から整理されてきたものです。これはACP(アドバンスケアプランニング)とも表現される、人生の最終段階の医療やケアについて、本人が家族等や医療者・ケアチームとともに繰り返し話し合うプロセスのことを指します。

体の苦痛や「死」を意識した時の不安感をはじめ、本人も家族も「本当に正しい選択をしているのか」「これでよいのか」と悩み揺れ動く感情に寄り添い、その時々の選択を支援していくこと、を言います。

■人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン
平成30年に改訂が行われ、ACPの概念を盛り込んで、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセスを医療・介護の現場にも求められるようになってきました。
この中で、大事なポイントが三つあります。
1) 本人の意思は変化しうるものであり、医療・ケアの方針についての話し合いは繰り返すことが重要であることを強調すること。
2) 本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、その場合に本人の意思を推定しうる者となる家族等の信頼できる者も含めて、事前に繰り返し話し合っておくことが重要であること。
3) 病院だけでなく介護施設・在宅の現場も想定したガイドラインとなるよう、配慮すること。

これらを踏まえて、医療機関がどのような支援が必要なのか、考えていく必要があります。

■本人の意思確認ができる場合の医療者の支援
これは延命治療をやめさせるものではなく、安楽死を推奨するものでもありません。
疾患によっては耐え難い苦痛を伴う場合もあるでしょうが、それは緩和ケアによって解決すべき課題です。
その都度、どうしたいのかを確認し、可能な限り意思を尊重して、本人・家族の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療的ケアを行うことになります。

時間の経過とともに、心身の状態の変化、医学的評価の変化等に応じて本人の意思は変化していくものである・・・ということを前提に、家族の意向も考慮して、話し合いの場を持つことが大事になります。

■本人の意思確認ができない場合の医療者の支援
この場合、近しい家族に「本人の意思を推定して、本人にとって最善の方針」を考えていただくことになります。家族といっても本人の意思が推測できない場合もあるでしょう。その場合は本人に代わるものとして、家族と十分に話し合い、本人にとって最善の方針を考えていきますが、時間の経過や家族の思いの変化などにも寄り添っていく必要が出てきます。この場合家族の意見が一つにまとまらない場合もあるでしょう。
複数の専門家や別の方の意見も交えて話し合いを繰り返すことも出てくると思います。
これらのプロセスで話し合ったことは、記録として残していくようにしましょう。

■「もしバナゲーム」~医療者である皆さんが一度体験することが大事
「もしもの時のことをゲーム感覚で話し合う」体験が各地で行われています。以前、私のコラムの中でもご紹介した「老い活」もその一つです。実際に体験してみると、自分のものとして考えられ、医療者としてどんな寄り添い方が必要か、我がごととしてとらえることができるのではないでしょうか? その方の人生を生ききるために、どんな支援が必要か考えてみましょう!

医業コンサル課

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