コラム de スタディ

2021.10.13.NEW
社労士モリの映画あれこれ~「空白」(2021:日本)~

本年の日本映画は年初からコンスタントに良作が公開されていますが、その中でもベストの1本として挙げられるであろう、ボルテージの高い秀作。

スーパーでの万引きを疑われ、店から逃げた女子中生、それを追いかける店長。その過程で彼女は車道に飛び出してしまい、車に轢かれ即死します。事件の真相を知りたい彼女の父親は、マスコミの報道にも振り回されながら、執拗に店長やその周辺を追い詰めていく…。

主役から脇役に至るまで人物造型と演技が見事です。父親を演じる古田新太の、仕事では部下ハラスメントまがいの言動、家庭では娘に対して高圧的でありながら、本人は無自覚ゆえにモンスター化していく姿は恐ろしくも痛々しい。そして彼の怒りの矛先を向けられる店長演じる松坂桃李。ほば同時期公開された「孤狼の血LEVEL2」のハードな刑事役から一転、ひ弱そうで大人しそうに見えながら、それ故か何を考えているか分からないような曖昧さも見事に醸し出しています。2人に絡む寺島しのぶ、藤原季節、田畑智子、片岡礼子等も見事で作品に深い厚みを加えています。

※以下、重要なネタバレがあります。

 

 

 

全編を通じて人間の愚かさや醜さが強調され、観客の心が折れてしまいそうなつらい場面の連続です。しかしながら一見悪者にも見える父親ですが、後半にかけて心境の変化が訪れます。その契機ともいえる、不幸にも娘を車で轢いてしまった女性の母親と対峙する場面はこの映画の白眉。物語はここから、生前の娘を理解していなかった父親の、娘に対する贖罪の行動へと移るのです。そしてラストは絶望的な展開の中、希望とまではいえないまでも、わずかながらの「救い」を主人公2人に与えます。これは祈りに近い願望かもしれませんが、その時映画は「性悪説」から「性善説」に転化するのです。

吉田恵補監督は、「ヒメアノ~ル」(2016年)も傑作でしたが、今年は「BLUE/ブルー」も公開され、こちらも良作でした。本年度の国内映画賞を賑わす予感がします。

筆者略歴:森 吉隆(労務コンサル課)特定社会保険労務士。
「WOWOW映画王選手権」2001年、2002年本戦連続優勝、2011年本選準決勝進出、2013年本戦準々決勝進出。2012年「スカパー!映画クイズ選手権」本選優勝。映画検定1級(2014年は首席合格)。

労務コンサル課

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