【医療介護あれこれ】接遇レッスン「アンガーマネジメント」

長 幸美

アドバイザリー

皆さん、「アンガーマネジメント」という言葉はお聞きになったことありますか?
文字通り「怒り」の感情を上手にコントロールすることをいいます。
人間は「感情の生き物」といわれます。「アンガーマネジメント」はこの豊かな感情を押し殺すことを意味しているわけではありません。怒りの感情と向き合い、上手に付き合う方法・・・といったらいいでしょうか。 怒りに任せて暴言を吐く、暴力を働くということではなく、上手に伝えることや怒りの感情をかわしていくことなどを意味しています。

【アンガーマネジメントとは…】
ウィキペディアによると、「怒りを予防し制御するための心理療法プログラムであり、怒りを上手く分散させることができると評価されている。」と書かれています。
ストレスを感じるときは、「不安、恐怖、辛い、悲しい、寂しい」などの一時的なネガティブ感情が起き、次に起こってくる二次的感情が「怒り」であるといわれています。また、自分自身を守るための防衛機能、ともいわれています。大きな苦難がにあったときに、この「怒り」の感情を乗り越えて、次の「受容」の段階に行くともいわれていますので、決して悪いことではないのです。

しかし、人はイライラすると、他の人や物に強く当たってしまい、ぶつけられた方は、理不尽さを感じてしまうことも多々あると思います。こういった衝動的な言動や行動・・・いわゆる「キレる」という状態が問題なのであって、この感情の爆発をコントロールしていくのか、アンガーマネジメントとして大事になっていくでしょう。
この「怒り」は放っておくと、ハラスメントに至るケースもあり、教育やビジネスの分野で課題意識が強くなってきています。

【怒りの感情はどうして起こるのか】
「怒り」の感情が起こる仕組みを見ておきましょう。
■「怒り」はネガティブ感情の裏返し
「怒り」の感情は、二次感情といわれています。人はストレスがかかった状態・・・つまり、不安や恐怖、辛い、疲れ、悲しい、寂しい、等の感情が強かったり、長く続いたりしたときに、「なぜ私だけが?」という感情に変わってきます。これが「怒り」の感情です。

例えば・・・
がんの告知を受けたときに受容するまでの心の変容を考えてみてください。
はじめは、吃驚し、悲しい気持ちになると思いますが、つぎに「なぜ?」と湧き上がってくる感情が「怒り」の感情ということになります。
新人教育の場面ではどうでしょうか?
教育の担当職員などに多く耳にする「なぜできないの?」という言葉ですが、何度も同じことを教えているのに・・・という繰り返しのストレスが原因ではないでしょうか?

■ネガティブ感情は誰にでもある
感情豊かな人であれば、喜びも悲しみも・・・ストレスも人一倍感じることになると思います。
また、受容の段階に進んでいくためには、「怒り」の感情も必要なものだといわれていて、決して怒りを感じることが悪いことではないと思います。
しかし、ストレスを感じる段階で、または怒りを感じる段階で、その感情をかわす方法を習得し、その感情をコントロールする術を知っているか、いないかで、ずいぶん違ってくると思いませんか?

【注意が必要な「怒り」】
「怒り」の感情は健康な証拠かもしれませんが、注意が必要な「怒り」というものもあると思っています。ここで、注意が必要な「怒り」についても見ておきたいと思います。
■「怒り」が持続する場合
もう何年も前のことをいつまでも怒って、言い続ける方もありますね。「怒り」の感情に折り合いをつけられていない例です。

■激しく怒り、攻撃的になる「怒り」
怒り出すと歯止めが利かなくなり、周りの人にも、ハラスメントや暴力行為(言葉も含む)、ものを破壊する、といった行動に出るパターンです。こうなると、よいコミュニケーションが取れなくなり、人間関係が破綻してしまいます。

■過敏型の「怒り」
周りが気付かない程度のことや、気付かないことに対し、頻繁にイライラしている状態です。
こうなると、神経が休まる場がなくなり、本人もとてもつらくなると思います。

【アンガーマネジメントの方法】
このように見ていくと、アンガーマネジメントの大事なことは、第一感情・・・つまり、「怒り」が起こる前の、「ストレスを感じた段階」で対処する方法が良いのではないかと思います。
■「怒り」の感情のデメリットを知る
「怒り」の感情には、デメリットが多くなり、怒りを爆発させた後、後悔にさいなまれるという経験をした人もいらっしゃるのではないかと思います。
デメリットを知り、負のエネルギーをうまく対処して、プラスのエネルギーに変えていきましょう!
<怒りのデメリット>
・ストレスにより自分自身の健康を害することになりかねません。
・周辺の方の心理的ストレスの原因になります。
・人間関係が悪化し、パフォーマンスが低くなるため、生産性の低下を引き起こします。
・ものにあたる方は、ものを壊してしまいます。

■自分の感情の癖を知る(自己覚知①)
少し勇気がいることだと思いますが、一度個人ワークをしてみてください。
① 大きな紙を用意し、これまで感じた「ストレス」と「怒り」を書いてみましょう。
誰かに見せる必要はないので、とにかく細かいこと・状況を書いてみてください。

② ①で書き出した「ストレス」「怒り」の横に、その時に起こした行動を書いてみましょう。
自分自身の「行動の癖」を知ることができます。

■ストレス感情を逃がす方法を練習する
個人ワークで、自分の「感情の癖」「行動の癖」を知ることができました。
この中から、行動を変えていく、ということが大事になりますが、その練習をしてみましょう。これは、リフレーミングという手法を使います。

リフレーミングとは、対象事象に対し、視点を変えてみることにより、不満やストレスに対し、それらの意味を変化させ、気分や感情を変えることです。
対象事象は、「事実」なので、変えようがありません。その「事実」に対し、マイナスの感情を加えると、ストレスにもなり、怒りの感情にもなります。あえて、プラスの感情に置き換えてみるというのが、リフレーミングです。

例えば、
「がん」になったということを、キャンサーギフトだという風にとらえると、「この経験をどんなことに使おうかな・・・と前向きになることもできるかもしれません。
新人教育の場面でできなかったことを、「なぜできないの?」ではなく、「この部分はできているよ、もう少し!」と置き換えることにより、つぎの行動へのアドバイスに繋いでいくことができますよね。
③ 皆さん自身の短所・欠点と思うことを書き出してみてください。(自己覚知)
今回も大きな紙を準備しましょう。箇条書きで、短所や悪い癖すべて書き出してください。私はこんな人間です・・・というつもりで書いてみてください。

短所・欠点をあえてプラス思考の言葉に変えてみましょう。
物事には裏と表があるように、長所と短所は背中合わせだと思います。

④ リフレーミングの練習
何か事象が起こった時に、「あ~よかった。(      理由       )」と良かった理由を考えてみてください。

【おわりに】
アンガーマネジメントは、様々に研究され、教育やビジネス分野をはじめとする場面で注目されていますが、日常的な生活の中でもとても大事なのではないかなと思います。
「怒り」の感情が芽生えたときに、効果的だといわれる手法は他にもいくつかありますが、今回は触れていません。
(深呼吸する、6秒数える、状況を面白がる、開放するルールを決める(タッピング法)、等)

今回は、「自己覚知法」と「リフレーミング法」により、「怒り」の感情が起こる前に注目してお話を進めてきました。皆さんも自分を知るところから始めてみませんか?

医業経営支援課

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