【医療介護あれこれ】在宅医療の最前線と未来を見据えてできること

長 幸美

アドバイザリー

福岡では立夏の声を聴いたと思ったら早くも梅雨入り宣言。
そんな5月の日曜日に「在宅医療ことはじめ」と題したセミナーが行われました。
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、オンラインセミナーが増え、このような遠方の方々のお話を家にいながら聞くことができる・・・という恩恵に感謝しています。
(コロナ禍における唯一の利点でしょうか・・・)

今回は、在宅専門医として東京を中心に活動されている先生と、大阪の管理栄養士さんと、名古屋の理学療法士さんの対談セミナーに参加しました。皆さん、「在宅を支える」ということを専門家の視点で極めておられます。そのセミナーで考えたことを記載します。

【管理栄養士の立場から】
介護報酬改定でも、診療報酬改定でも、「口から食べる」ということの重要性がクローズアップされてきている昨今ですが、在宅の「栄養支援」という観点で、活動を進められているとのこと。「高齢者の支援をしていくうえで、「生活の中での食事」は単に口から食べるだけではなく、ひとに必要な栄養成分がどんな構成になっているのか、ということを見ていくことが必要。それは高齢者も子供も、我々も変わらない。必要な栄養素がどの程度あるかということが分かれは、どんな形で何を補うのか、ということが必然的にわかってくるという言葉が印象的でした。

また、本人がどう暮らしたいのか、ということに寄り添うことが大事で、それは医療機関の中にいてはできないな、ということも感じました。高齢になってきても、「今まで通りに暮らしたい」という思いは同じだと思います。改定の中で出てきた「社会的処方」という言葉を思い出していました。

【理学療法士の立場から】
「リハビリテーションとは「全人間的復権」を目指すものである。」という言葉に冒頭ドキッとしました。介護保険改定の中でも、今回「介護保険法第1条」の文言があちこちに出てきます。「加齢に伴う心身の変化により要介護状態になっても、その地域で尊厳をもって暮らし続ける」そのための支援をすることが介護保険の基本理念であるということは頭では分かっているつもりですが、実際には如何なのでしょうか?
「全人間的復権」という言葉に背筋が伸びる思いです。
リハビリはつらいもの、その人本人の「人生観、障害観、人間観」というものに向き合うこと、障害はなかなか受容できずに苦しいことなど、その中でも、その人らしさを失わずに生ききることを支援できるのか、と問われています。ICF という考え方も新鮮でした。頭では分かっているつもりでも、なかなかできていない・・・

私も高齢の両親と一緒に暮らしていますが、父は認知症でだんだんわからなくなってきています。85歳を過ぎ、少しずつ機能も落ちてきて、できなくなることが多くなってきています。寝ている時間が長くなってきました。生活の支援をしていくということは、その個人のできることを見つけ、環境を変化させていくことなのかもしれないと思いました。

【在宅医の立場から】
健康寿命の延伸を言われて久しいのですが、健康寿命が延びても、男女ともに約10年間は、何らかの手伝い(介護・支援)は必要になる時期があり、その10年を幸せに生きていくための準備を我々はしないといけない、ということを言われました。
人はいずれ「死」を迎えます。本人が自ら選択した生活や人生をその人らしく、最期まで生ききるために、医療職もサポートを考えていかなければならない、という言葉がありました。医師(医療職)はどうしてもリスクを考え、「患者の行動に制限をかけてしまう」、在宅での生活の中で支えていくには、患者の「やりたい」「想い」を邪魔しないことが大事ではないかといわれ、ハッとしました。

【対談の中で感じたこと】
前日に実施した顧問先様向けのスキルアップセミナーで、「居宅療養管理指導」について話をしました。その中で、「医療と介護の連携」の視点、日常的な介護者との情報共有や支援についてお話をしましたが、現在は、薬剤師や管理栄養士の活用は進んでいないことが事実だと思います。しかし、高齢者の想いに寄り添い、実現していくためには、服薬や口から食べるということをはじめ、専門職がTeamで支えていくこと、それは介護者(ヘルパーを含む)にとってもとても大事な支援だということ、この支援がないと地域で暮らし続けることは難しくなるのだなあ、と感じました。
医療機関・・・特に急性期の病院では、「治療」「治す医療」が主体となり、最大限の力を注いでいかれていると思います。在宅医療はこの急性期の医療とは大きく違い、生活の中で寄り添うことが大事で・・・その環境は、医療現場の中に、たくさんありますね。
管理栄養士・薬剤師、その他の専門職が専門的な視点を持って、支えていけるコミュニティが作れると、どんなに素晴らしいか、ということを感じた対談でした。

医業経営支援課

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