【医療介護あれこれ】接遇レッスン「クレーム対応NGワード」

長 幸美

アドバイザリー

クレーム対応だけでなくても、反論するような言葉を言われていい気持ちにはなりませんね。このNGワード・・・最近街中でも、身の回りにも、よくあふれているように思います。
私が過去、経験した事例を通して、皆さんで少し考えてみましょう!

■クレーム対応NGワード:「だから(ですから)~~」「だって~~」「でも~~」
皆さん、意外と身の回りにあふれていませんか?
これらの言葉の後ろに続く言葉を想像してみましょう。

・「~~いやいや、ですから何度も言っている通り、~~こういうことです」
・「だって、あなたは~~こういったじゃないですか!」
・「でも、あなたは~~こうしたいわけですよね」

否定や言い訳、相手を非難するような言葉に聞こえてきませんか?
何となく、決めつけているような・・・、言葉尻をとらえて揚げ足をとられているような・・・
通常の会話でもあまりいい気持がしないものですよね。
私もクレーム対応のNGワードでは苦い経験があります。
ここで皆さんに紹介して、一緒に考えていきましょう。

■クレーム事例:保険証を持ってこない患者
ある医療機関に着任した私は、病院が抱えるいくつかの課題に対し、改善対策を図ることにしました。当時、一部の大きな声を出し威嚇してくる患者さんに対し、窓口対応は消極的で、「大きな声を出せば何とかなる」という風潮が根付いていて、他の患者さまに不愉快な思いをさせている状況がありました。同時に、保険証の提示を拒む患者が数名いて、保険証の資格喪失後受診の患者が多く、返戻が多いことも問題となっていました。このため、「保険証を確認する」ということを徹底したいと思っていました。
事務長と相談したうえで、保険証の確認ができない患者へは、文書にて「次回もってこない場合自費で一旦精算する」ということを通達し、院内掲示も出し、保険証の持参を呼びかけることとしました。
実際には2か月の準備期間を置き、いよいよ、自費でもらうその時に早速トラブルが起きました。準備は万全のはずだったのですが・・・

「俺は顔パス」が口癖の、かかりつけ患者さんです。3度にわたる説明にも関わらず、保険証を持参されていなかったため、受付時に自費になることを説明し、受診されました。
いざ会計をしようとしたときに、自費で請求したところ「俺を誰だと思っているんだ。毎月来ているんだぞ!」
こういうこともあろうかと事前にスクリプトを作成し、受付には対応を統一していたのですが・・・。受付の方から、何やら職員と言い争う声が・・・聞こえてきたのです。
私はあわてて事務室から飛び出していきました。
事情を聴き、丁重に説明をして、一旦は全額自費で支払いを納得され、会計を済ませたのですが、最後に「お気をつけてお帰り下さい」といった横から、対応していた受付の職員がひとこと「だから~私、何度も説明したんですけどね~」といったのです。
その後の展開は、ご想像にお任せします。

この後、受付でミーティングをして、どのような言い方で説明していたのか、どういう対応が良かったのか、事情をきいたところ、下記のような言葉が返ってきました。

最初は丁寧に自費の説明をしたが、なかなか聞き入れてくれず、大声で威嚇するように「3割負担にしろ」と言われたので、負けないように、大きな声で答えた・・・とのこと。(悪い予感) なんて答えたの?の問いに対し、帰ってきた言葉は・・・
だーかーらー、この前、保険証忘れてきたら自費になるって、説明しましたよね。ですから、今日の診療費は自費で〇〇〇円になります。」 ・・・《聞いてなかったの?と非難?》
でも、保険証を忘れてきたんですよね」 ・・・《あなたが悪いんでしょ!と責めるの?》
だって、自費で払ってもらうって、ルールですから・・・」 ・・・《突き放すの?》
だって、次回もってくるっていったじゃないですか。でも持ってこなかったから、自費になっても仕方がないでしょう!ルールなんだから!」・・・《あちゃ~》
・・・と。 このように言われて、引き下がる方、いらっしゃるでしょうか?

この後、急遽どんな対応が良かったのか、即席の対応研修をしたのはいうまでもありません。こういうトラブルは多かれ少なかれ、どこの医療機関でもあると思います。皆さんならどのような言葉で説明されるでしょうか? 少し考えてみてください。

私なら保険証の確認は法律で定められたルールだということを説明し、「本日は一旦全額のお支払いをお願いしますが、保険証とこの領収書をお持ちになった時点で7割分をご返金致します。それでご了承いただけませんか」と説明します。
ポイントは二つ。
① 大きな声を出してもだめだということを示す、
② 保険証を持ってくれば返金することを説明し、保険証の持参を促す、
・・・ということにあります。このことを示すためには、こちらは冷静に、淡々と説明する必要があります。もちろんその根底には、相手の方への敬意を表すことにあります。
この患者さんも、保険証の確認がルールになっていることを説明し、納得されていました。お互いに無駄にエネルギーを使う必要がなかったわけです。

皆さんも、相手の身になって(立場になって)考えて話をしているか?
よい機会ですので、考えてみてくださいね。

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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