
ベースアップ評価料の令和7年度計画書~準備は万全ですか?~
長 幸美
医療介護あれこれ2024年度診療報酬改定から導入された「ベースアップ評価料」は、医療・介護職員等の処遇改善を目的とし、賃金引き上げに取り組む医療機関に対して報酬上の評価を行う仕組みです。
この評価料を引き続き算定するには、毎年度、実施計画書の作成・提出が必要とされており、令和7年度に向けても、「令和7年度ベースアップ評価料実施計画書」の提出準備を進める時期に入ってきています。皆さん計画書の準備はお済みでしょうか?
令和7年度の提出期限は、令和7年6月30日(月)です。
本コラムでは、提出に向けた準備・確認ポイントを実務視点で整理します。
目次
Step1:令和6年度の実績を確認する
計画書を作成する前に、令和6年度のベースアップ評価料の実績の確認が必要です!
ベースアップ評価料収入の集計
まずは、レセコンから「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)(Ⅱ)」や「入院ベースアップ評価料」の収入を期間指定で抽出・集計しましょう。
レセコンの仕様により、月別集計が必要な場合は、Excelなどを活用し一括管理を工夫されるとよいでしょう!

職員へ支給したベースアップの支給実績の確認
次に、評価料によって実際に支給された賃金改善の金額も確認します。
定期給与や賞与への上乗せが含まれることもあるため、ベースアップを行った期間中の支給総額を明示的に一覧表化しておくと安心です。

Step2:差額の確認と処理
収入と支出の差額が生じている場合、そのまま診療所の利益とすることはできません。
次のいずれかで対応が必要です。
① 令和6年度内に「支給調整額」として支給
② 令和7年度のベースアップ計画に上乗せして支給

Step3:令和7年度 計画書作成のチェックポイント
令和7年度のベースアップ評価料の計画書を作成するにあたり、いくつかの重要な確認項目があります。以下の点を順にチェックしていきましょう。
賃上げの実施期間について
今回の計画書の実施期間は、令和7年度・・・つまり令和7年4月から令和8年3月までの1年間が対象となります。この期間を通じて継続的に処遇改善を行うことが求められています。
対象となる職種と人数
算定要件を満たす「医療職・介護職・事務職」等が正確に計上されているか、レセプトや人員配置台帳と整合がとれているかをチェックしましょう。
賃金の引き上げ方法
原則として「給与や手当」による毎月の支給が望ましいとされています。
賞与による反映も認められますが、継続性が重視されるため、定期支給に重点を置く計画が推奨されます。
職員への周知方法
ベースアップの対象職員には、どのような賃金改善が行われるのか、いつからどのような形で支給されるのかを明確に説明する必要があります。前年度と内容が変更される場合は、個別説明や文書通知を行うことが望ましく、職員の理解を得ることが信頼関係構築にもつながります。
また、これを機会にスタッフとの面談を実施し、院長先生の想いを伝えていくことをお勧めしています。単に「お給料が増えた!」ということだけではなく、これを機会にスタッフの皆さんとコミュニケーションをとってみられるのもよいのではないでしょうか?
Step4:計画書の様式と提出について
ベースアップ評価料の計画書には、厚生労働省が指定する様式を使用する必要があります。
ただし、取得している加算の内容によって使用する様式が異なりますので注意が必要です。
具体的には、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」のみを算定している場合は、記載項目を簡素化した“簡易版様式”を使用することができます。一方で、「ベースアップ評価料(Ⅱ)」や「入院ベースアップ評価料」も算定している医療機関は、より詳細な記載が求められる“従来様式”での提出が必要となります。
提出先は、医療機関または訪問看護ステーションの所在地を管轄する地方厚生(支)局の府県事務所となります。原則メールにて送付することが求められています。
なお、令和7年度の計画書の提出期限は、令和7年6月30日(月)です。この期限を過ぎてしまうと、令和7年度のベースアップ評価料が算定できなくなる恐れがありますので、必ず事前に余裕をもって準備・提出しましょう。
令和6年度の実績報告
また、令和6年度(2024年度)の「賃金改善実績報告書」の提出期限は、令和7年8月31日(日)が予定されています。こちらも併せてご留意ください。
詳細な手続きや様式については、厚生労働省の公式ウェブサイトをご参照ください。
まとめ
「ベースアップ評価料」は、処遇改善を通じた人材確保という観点から、国としても力を入れている施策です。一方で、計画書の提出漏れや記載ミスがあると、評価料が算定できなくなるリスクもあります。この為、今からしっかりと準備を進めておくことが重要です。
また、現場の職員に対して、処遇改善の内容や今後の賃金方針について説明することは、職場の透明性や信頼関係の向上にもつながります。計画書は単なる書類ではなく、職員の未来への約束でもあります。この機会に、職場全体で処遇改善の意義を再確認してみてはいかがでしょうか。
【参考資料】 令和7年5月25日確認
■厚生労働省/ベースアップ評価料等について ⇒特設サイトは(こちら)
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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