コラム de スタディ

2018.11.16.NEW
救急病棟に勤務する准看護師が発症したくも膜下出血

平成30年7月6日、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律が公布されました。

また、同月24日には、変更された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定され、国が取り組む重点対策として、長時間労働の削減に向けた取組の徹底や過重労働による健康障害の防止対策等が項立てされるとともに、勤務間インターバル制度の周知や導入に関する数値目標等が盛り込まれるなど、長時間労働対策の強化が喫緊の課題となっています。

このため、厚生労働省では、「過労死等防止啓発月間」の一環として「過重労働解消キャンペーン」を11月に実施し、長時間労働の削減等の過重労働解消に向けた取組を推進するため、使用者団体・労働組合への協力要請、リーフレットの配布などによる周知・啓発等の取組を集中的に実施しています。

 

今回は、この「過重労働解消キャンペーン」にちなみ、「過重労働」に関する判例を紹介します。

この判例の特徴は、救急病棟に勤務する准看護師が勤務中に発症したくも膜下出血と看護業務との間に相当因果関係があるとされた事件です。

 

■I総合病院事件 名古屋高裁 平成14年4月25日判決

【事件の概要】

I総合病院の救急病棟において准看護師として勤務していたXが、勤務中にくも膜下出血を発症したことについて、公務に起因するものであるとして、地方公務員災害補償法に基づく公務災害の認定を申請したところ、地公災基金三重県支部長は、公務外災害の認定処分をした。Xは、これを不服として控訴し、因果関係が認められた。

 

【判断】

■  Xの従事した業務自体の過重性について

I総合病院は、Xが従事していた看護業務の勤務実態が、同種の看護師の勤務実態と比較して過重であったとはいえない旨を主張する。

確かに、Xが従事していた看護業務は、本件病院のICU及び救急病棟に勤務していた他の看護師と比較して過重であったとは認めないし、他の総合病院におけるICU及び救急病棟に勤務する看護師と比較して過重であったかどうかも本件証拠上は明らかではない。勤務が過重であったか否かの判断に際しては、同種の職種との比較が重要であるが、ICU及び救急病棟に勤務する看護師が特別の資格を必要とするものではないから、同種の職種と比較する場合には、外来患者を担当する日勤のみの看護師を含めた看護師全体と比較すべきである。

ICU及び救急病棟での看護師勤務は、常時容態に注意を払う必要のある重症患者を相手としたり、迅速な対応を必要とする患者を相手としたりと、病状も多様であるので、他の病棟における看護師業務に比べて、精神的な緊張感が強く、かつ、頻繫に巡回する必要があるため、体力的にも負担であり、救急病棟の看護師の歩数は、全病棟の平均よりも多かったことが認められる。また、日勤を終えた後に翌日未明から引き続いて深夜勤をすることは、身体的に相当な負担をかける業務であり、Xは、月平均4.6回行い、本件発症前の1ヵ月間においても、このような勤務形態の深夜勤務を5回行っていた。また、発症の前年夏以降は、救急病棟における看護師の減少や夏季休暇により、一人当たりの患者受け持ち人数が大幅に増加していた。これらの業務内容や勤務の実情を考慮すると、休日の日数は確保されていても、Xの従事した看護業務は、一般的な看護業務と比較しても、負担の重いものであったといえるし、発症前2週間からは、明らかに過重な看護業務であったといえる。

 

【ポイント】

過重労働とは一口で言ってしまうと「働き過ぎ」です。

時間外労働や休日労働が大幅に上回ると、心と体が蝕まれていきます。その度合いが強くなると、うつ病などの精神疾患になり自殺したり、脳血管疾患・虚血性心疾患を発症して過労死になるのです。

 現在、過労死ラインは80時間とされています。これは、健康障害の発症2~6ヶ月間で平均80時間を超える時間外労働をしている場合、健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすいという目安です。また、発症1ヶ月前は、100時間を超える時間外労働をしている場合も、同様に健康障害と長時間労働の因果関係を認めやすいとされています。ただし、これは、あくまで目安であって絶対的なものではありません。過労死ラインを超えていないと、健康障害が労働災害と認められないわけではありません。時間だけで労務の重さを判断するのは難しく、業務内容等の総合的に判断する必要があります。

 無理に強いられた過重労働は、企業で働く従業員たちを精神的な病に陥らせたり、身体の健康にも被害を与えたりと、体にも心にも様々な悪影響を及ぼす原因となります。企業は働きやすい環境を整えるために労働者の働く時間と健康を管理して、安全な職場を作るための責任を果たすことを第一優先としなければならないでしょう。

 人事労務課

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