
知っておきたい「医療広告のルール」①~うっかり違反にご用心!~
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
最近では、クリニックのホームページやSNSを活用して情報を発信することが当たり前の時代になりました。クリニックによってはSNSによる案内や職員募集にも活用されているケースが出ています。
その中には、受付スタッフや事務の方が更新を担当されている場合も多いと思います。
でも、ちょっと待ってください――
医療機関の広告には、実は「医療法」という法律に基づいた厳しいルールがあることをご存じですか?
今回は、スタッフの皆さんが「うっかり違反」してしまわないように、知っておきたい広告の基本ルールをやさしく解説します。
医療広告って、どこまでが対象なの?
医療広告というと、テレビCMや新聞広告をイメージされるかもしれませんが、実際にはもっと身近なものが対象になります。
たとえば・・・
・ホームページ(診療案内や院長紹介ページも含む)
・SNS(Instagram、Facebook、LINE公式アカウントなど)
・チラシやリーフレット
・看板・院内掲示物
・・・など、患者さんがクリニックを選ぶ判断材料になるものは、すべて「広告」とみなされる可能性があるのです。
さあ、そういわれると、少し心配になりますよね。
要注意!こんな表現はNGです
医療法では、次のような表現は禁止されています。
NGの根拠は、「医療法第6条の5第1項」・「ガイドラインⅢ-1」です。
NG表現の例 | なぜダメ? |
①「絶対に治ります」「100%効果あり」 | 効果を保証するのは誇大広告 |
②「県内No.1」「業界トップクラス」 | 他院との比較優良広告はNG |
③「芸能人の○○さんも来院」 | 有名人を利用した宣伝は禁止 |
④「患者さんの声:すごくよくなった!」 | 体験談は原則禁止 |
⑤「今だけキャンペーン価格で施術中!」 | 誘引性の強い割引表現は注意 |
このように、「ちょっとアピールしたいな」と思ってしまう表現ほど、実は危ないことが多いのです。
うまくいった話や「うちのクリニックの先生はすごいんですよ!」という話は皆さんに伝えていきたいというのがあるかもしれませんが、人の体質やたとえ同じ疾患であったとしても、個人差があり、同じ治療を行っても同じ結果が出るとは限りません。また、一部負担金等を免除したり何かのキャンペーンを行ったり、何らかの優遇をすることは認められていません。
SNSは特に気をつけよう!
最近トラブルが多いのが、InstagramやFacebook、LINE公式アカウントなどのSNS発信です。
手軽に情報を発信できる一方で、違反やトラブルに発展するケースが増えています。
(根拠:ガイドラインⅢ-2・個人情報保護法第2条)
たとえば・・・
「自由診療の施術風景」を投稿した場合は禁止されています。
→ ビフォーアフター写真・効果強調はガイドラインⅢ-2-(1)で禁止されています。
すべての患者さんに同一の効果があるかどうかわからないため行ってはならないとされています。
「この投稿にいいねすると割引クーポン!」や「プレゼント差し上げます」等も禁止されています。
→ 割引等で誘引する広告はガイドラインⅢ-2-(4)で原則NGとされています。
一部負担金は健康保険法でも「支払う義務」があり、療養担当規則でも、窓口で徴収することが
義務付けされていますので、ガイドライン以外にも注意することが必要です。
「今日の外来風景」を投稿する行為は特に要注意です。
→ 待合室に患者さんが写ってしまい、個人情報漏洩の可能性あります(個人情報保護法第2条)。
では、どのように伝えていったらいいの?
基本は、「事実を正しく、誇張せずに伝えること」になります。
例えば・・・
・診療科目や診療時間(広告可能事項に該当)
・医師の名前と資格(例:内科専門医)
・予約方法や連絡先
・健康診断や予防接種等の自由診療の実施及び金額
・九州厚生局に届け出ている施設基準、等
これらの内容は、過度な表現にならないように気を付けていく必要があります。
過度な表現とは・・・
①「このワクチンで絶対に感染しません」「この検査で100%病気を発見できます」
②「副作用は一切ありません」
③「最新型ワクチンで最先端の予防対策!」「この検査は最新機器を使っているので安心!」
④「今だけ!ワクチン(検査)料金が半額キャンペーン中」
等が該当します。
上記表現は、次のように表現をするといいと思います。
①「感染予防効果があると報告されています」 ⇒「絶対」や「100%」はあり得ませんよね
②「副反応が起きることがあります。詳しくは医師にご相談ください」
③「この検査では〇〇を調べることができます」「この検査機器は令和6年度モデルを使用しています」
④については、そもそも特典を付けることは認められていませんので、金額の掲載のみにしましょう!
そして、「これは大丈夫かな?」と思ったら、必ず院長や上司に確認しましょう。
SNSは便利だからこそ、発信前のチェック体制がとても大切ですよ。
最後に:スタッフの皆さんへ
広告違反は、たとえ悪気がなくても「知らなかった」では済まされません。
違反と判断されれば、保健所による行政指導や是正命令の対象となる場合もあります。
私たちスタッフの何気ない発信や表現が、患者さんにとって安心感になることもあれば、逆に不安や誤解を与えてしまうこともあります。
だからこそ、「伝える力」と「正しく伝える姿勢」を大切にしていきたいですね。
次回は、院長先生や管理者向けに「医療広告ガイドラインの責任と体制整備」についてご紹介します。
スタッフと管理者が一緒になって、安心して情報発信できるクリニックを目指しましょう!
【参考資料】 ※令和7年8月25日確認
■厚生労働省/医療法における病院等の広告規制について は(こちら)
■厚生労働省/医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針
(医療広告ガイドライン)(令和6年9月13日最終改正) は(こちら)
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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