中小企業庁 100億宣言

内田 博史

リスクマネジメント

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

■100億宣言とは

「100億宣言」は、中小企業庁及び中小企業基盤整備機構が2025年に開始した政策プロジェクトで、「年商10億円以上100億円未満」の中小企業が、自ら“売上高100億円を目指す”と宣言し、その実現策を明文化する制度であり、中小企業庁(経済産業省)と独立行政法人・中小企業基盤整備機構が推進する、公的支援と成長戦略を結びつけた施策です。
売上高100億円を目標に掲げ、具体的な成長計画を持って宣言することで、補助金・税制優遇・ネットワークへの参加などが受けられます。

■政府による施策として位置づけられる理由や背景

日本経済は長年の低成長・デフレからの脱却が課題であり、経済の屋台骨を支える中小企業の成長が鍵とされています。政府は、「成長と分配の好循環」への転換を目指し、特に地域経済の活性化・良質な雇用創出に寄与する「売上100億円規模の企業」の存在を戦略的に重視しています。

■なぜ、今「100億円宣言か」

○経済構造の転換:引きこもり型のコスト削減経営から、投資・成長・分配を伴う経営へのパラダイムシフトが求められている。
○地域経済の持続性強化:地域企業が規模拡大することで若者の定着、地場産業の底力強化、稼ぐ力の向上などが期待される。
○危機的経営環境への対応:人手不足、物価高、グローバル競争など中小企業を取り巻く課題に対し、自己変革・成長戦略を引き出す仕組みとして機能。

また、売上100億円 という区切りは、賃金水準の向上、外需獲得、サプライチェーンや地域波及効果など、地域経済に与えるインパクトが大きい層として、政府が特に注目しているからです。

■宣言概要

①企業概要(現状売上高・従業員数など)
②100億円達成の目標と課題(期間・成長計画など)
③具体的施策(設備投資・海外展開・M&A・DXなど)
④実施体制
➄経営者の意思表明(コミットメント)

この宣言により、「見える化」された成長戦略としてポータルサイトで公表されるほか、様々な支援と連携しています。

■宣伝企業が得られるメリット

○中小企業成長加速化補助金(最大約5億円分の設備投資支援)
○経営強化税制(E類型など) の優遇措置
○経営者ネットワークへの参加(異業種&地域横断型の交流)
○公式ロゴマークの使用(外部対内PR、信頼性向上、人材採用向上等)

■プロジェクトの進捗

○2025年2月:制度開始の発表
○2025年5月8日〜申請受付 開始
○2025年6月9日時点:1,500件を超える申請、311件を公表
○2025年7月7日時点:公表企業は1,419社、全国約93,000社中約1.4%が宣言(約70社に1社)
○特に東京都に186社、大阪134社、愛知117社など都市部が多い一方、宣言率が高いのは鳥取県(3.12%)、熊本県(2.62%)など地方も存在

■最後に

「100億宣言」は、単なる目標数値の掲示ではなく、中小企業の成長戦略を公的に後押しする制度です。経営者自身が未来像を描き、それを外部に示すことで、補助金・税制・ネットワーク・ブランドといった多面的な支援につなげることを狙いとしています。
政府が日本経済を再興する「成長の起爆剤」として位置づけているこのプロジェクトは、2025年に始まったばかりですが、既に多くの企業が手を挙げており、今後の動向にも注目が集まります。

2025年9月5日

著者紹介

内田 博史
経営プランニング部 ライフプラン・リスクマネジメント課

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