自宅の火災が隣家に延焼したらどうする?

弓削 貴裕

リスクマネジメント

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

火災保険には、火事による自宅や家財の損害を補償する基本的な効果があります。しかし、自分の火災が原因で隣家や周囲の建物に延焼した場合、その損害はどうなるのでしょうか。

日本では「失火責任法」により、重大な過失がない限り失火者は損害賠償責任を負わないと定められています。つまり、うっかり火を出しても法律上の賠償義務は基本的にありません。このため、隣家が延焼被害を受けても、失火者の火災保険で自動的に賠償されるわけではないのです。

ここで役立つのが「類焼損害特約」です。この特約は、火災保険のオプションとして付帯でき、自宅から出火した火災が周囲に延焼した場合に、隣家や周囲建物の損害を補償する仕組みです。

特約を付けておくことで、万が一の延焼時に近隣とのトラブルを回避でき、社会的な信頼を守る手段となります。保険金は原則として隣家や損害を受けた建物の所有者に支払われますが、建物が対象であり、家財までは補償されない場合が多いため注意が必要です。

また、類焼特約の対象外となるケースもあります。地震や津波による火災、故意による火災は通常の火災保険・類焼特約では補償されません。保険金額も契約内容に応じて設定されるため、隣家の損害全額をカバーできるわけではない点を理解しておくことが重要です。

火災は誰にとっても起こりうるリスクであり、隣家への延焼は予期せぬ事態です。類焼損害特約は、法律上の免責により通常の賠償責任が発生しない場合でも、トラブル回避や生活再建の補助として有効な保険です。自宅を所有する方は、火災保険に加えてこの特約の必要性を検討することで、万一の際の安心感を高めることができます。

今一度ご自身の火災保険の補償内容を確認してみましょう。

2025年9月3日

著者紹介

弓削 貴裕
経営プランニング部 部長

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