「また来たくなるクリニック」にするために~リピーターを増やす“ちょっとした接遇の工夫”~

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

「一度来た患者さんが、また来てくださる」――これは、クリニックにとって、とても大切なことです。医療の質や診療内容はもちろんですが、「またこのクリニックに来よう」と思っていただける背景には、実は“接遇”の力・・・が大きく影響しています。

今回は、患者さんがリピーターになるクリニックに共通する“接遇の工夫”をいくつかご紹介します。

「感じのよさ」は最初の10秒で決まる

人は第一印象の9割を最初の10秒で判断するといわれています。
受付での笑顔とあいさつ、目線、身だしなみ――ほんの数秒の対応が、患者さんに「ここは安心できそう」という印象を与えるか、「ちょっと無愛想だったな」と感じさせるかの分かれ道になります。

▶ポイント:挨拶は「笑顔」をそえて「丁寧に」!

「おはようございます」「こんにちは」と、「笑顔」+「一声(ひとこと)」でお迎えしてみましょう!
受付業務中でも、来院者に気づいたら、目を合わせて軽く会釈して、「気付いていますよ」とお伝えできるといいですね。

また、声のトーンは明るく、語尾まで丁寧に発声するように気を付けてみましょう!
爽やかな印象になりますよ!

患者さんの“名前”を呼ぶことの力

○○さん、お待たせしました」と名前を添えて呼ぶことで、患者さんは“自分を大切にしてくれている”と感じます。番号だけの呼び出しでは得られない、個別対応の印象が残ります。

個人情報保護の観点から最近の医療機関では「番号」による呼出しが主流となってきています。
しかし、受付に来られたとき、また、診察室や処置室で「〇〇さん」と呼びかけることで、患者さんに「間違えなく私(自分)が呼ばれた」ことが認識されますし、さらにそこで、「お待たせしましたね」「痛みますか」と一声をかけることで、相手には、ひとりの「個」として対応してくれている印象を持たせることができます。
これがとても大事なのですよ。

▶ポイント:「名前」+プラスαの一言を!

可能な限り、名前を「○○さん」と呼び+一言添えてみましょう!
カルテや問診票で読みづらい名前は、事前に確認しておく工夫も大事です。

「帰り際のひと言」が“また来たい”をつくる

診察後、患者さんの気持ちはほっとしたり、不安を抱えたり、さまざまです。
だからこそ、帰り際の「お大事になさってください」「今日は暑いですね、気をつけてお帰りください」などのひと言が、患者さんの心に残ります。

▶ポイント:

天候や季節を取り入れた“気遣いの言葉”を一言添える
患者さんの表情に応じて、声の明るさや柔らかさを調整してみましょう!

小さな不便を“気づき”で埋める

「ペンが書きにくい」「スリッパの並べ方がバラバラ」「待ち時間の目安がわからない」
・・・患者さんが感じる“ほんの少しの不便”を、スタッフが気づき、先回りして解消することが、クリニック全体の印象を底上げします。
これは、掲示物にも言えることです。フォントの文字に統一感がなかったり、掲示物の大きさがバラバラだったり・・・何となく雑然と見えてしまい、落ち着かない印象を与えてしまうことも考えられます。

▶ポイント:一歩先をいく気遣いを!

書類を渡す時に「こちらのペンをお使いください」と一言添えるのはどうでしょう。
椅子の向きや雑誌の整えなど、定時チェックを習慣にしてみましょう!

患者さんの“変化”に気づける目を持つ

「今日はご家族の方と一緒なんですね」「腰の痛みは、いかがですか?」
・・・こうした声かけは、患者さんの“変化”に気づくことで可能になります。記録には残らなくても、こうした気づきが「このクリニックは私のことを覚えていてくれる」と患者さんに安心を与えます。

私が以前勤務していた病院で、時間外に来院したひとり暮らしの高齢の患者さんに、自宅に帰り着かれるころを見計らって、電話されている看護師さんがいらっしゃいました。きっと自宅に帰宅できたかどうかの確認をされたのだと思います。夜間の救急外来専属の看護師さんでしたが、翌日退勤前にも、別に暮らしておられる娘さんに、昨日のお母さんの病状が伝わっていることを確認されていました。入院対象になる患者さんの病態だったとのことですが、連絡したことで娘さんや患者さんがとても感謝され、病院のファンになってくれたのは当然かもしれませんね。こうしたきめ細やかな対応がリピーターの増える要因なのです。

▶ポイント:患者さんが私の家族だったら・・・という視点で考えてみる!

前回の会話や診療内容を簡単にメモして、次回来院時に役立てることで話す内容が増えます。
体調や歩き方、表情など、全身を“観察”する意識を持つと相手の対応に変化が生まれます。

おわりに

クリニックのリピーターを増やす秘訣は、特別なサービスではなく、「目の前の患者さんにどう寄り添えるか」という“日々の接遇”にあります。
ほんの小さな心配りが、患者さんの「また来たい」という気持ちにつながっていくのです。

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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