Q&Aより「療養担当規則に基づく査定」とは?

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

レセプト審査の結果で、ときどき目にする「療養担当規則に基づき査定」という査定理由のコメント。「これはどういうことですか?」という質問を受けることがあります。

さて、この一見抽象的で、何が問題だったのか分かりにくいこの文言、実は保険診療の根本ルールにかかわる重要な指摘なのです。今回は、レセプト査定の背景や、返戻時にどう対応すべきか・・・
クリニックの医療事務として知っておきたいポイントを解説します。

そもそも「療養担当規則」とは?

「療養担当規則(正式には健康保険法第73条に基づく規則)」とは、正式名称を「保険医療機関及び保険医療養担当規則」という名称で、保険医や保険医療機関が保険診療を行うにあたって守るべき基本ルールを定めたものです。もとになる法律は、「健康保険法」の省令という位置づけになります。

具体的にどういったことが書かれているかというと・・・
 〇医学的に必要かつ適切な診療であること
 〇過剰な検査や投薬をしないこと
 〇診療録(カルテ)などに必要事項を記載すること
 〇自由診療と混在させないこと
・・・といった保険診療(診療報酬)請求の原則が盛り込まれています。

「療養担当規則に基づき査定」って何が問題?

これは、「医学的妥当性が疑問」「診療の必要性が証明できない」「記録が不十分」といった理由で、診療報酬の一部が認められなかった(=減点された)ということを意味しています。
ここで、よくある査定理由と事例を見てみましょう!

◉ 同じ検査を短期間で繰り返している

検査の必要性がカルテに記載されていない場合、過剰と判断され査定されることがあります。

 <例>
  〇 脳梗塞で、連日CT撮影を実施
  〇 骨折で3~5日に1回の頻度でX線撮影

◉ 長期処方・重複投薬がある

 <例>
  〇抗生剤を2週間以上処方しているが、培養検査の実施や記載がない
  〇血液製剤等を多用しているが、根拠となる症状や検査結果の記録が乏しい

◉ 頻回受診

 <例>
  〇同日に2回受診し、それぞれ異なる薬を処方されているが、病名の記載がない
  〇訪問診療と往診を同日に行っているが、病状変化の記録がない

◉ 傷病名と診療内容の関連が薄い

 <例>
  〇慢性胃炎で複数の胃潰瘍用薬を長期使用しているが、内視鏡検査の記録がない

返戻されるときは「疑義照会」もセットで!

審査支払機関が「請求理由を確認したい」「これはどういう目的で検査したり、治療したりしているのだろう?」と疑問視され、医師の考えを確認するという「疑義照会」・・・つまり「請求理由の詳記を求める」という流れになることがあります。なぜなら審査機関は疑義があれば支払いを行わないこともあるといった意見を言える機関だということです。査定や減点を受けないために、この段階では、再請求が可能ですので、丁寧な対応が大切です。

STEP1:返戻理由を読む

返戻理由を丁寧に読むことが大事です。

例えば・・・
「療養担当規則に基づき、検査の頻度に疑義があるため確認願います」・・・このように書かれていたら、明らかに「疑義照会」です。
病名を確認し、病名のみでは対応できない場合は、症状詳記が必要ですね。

STEP2:診療録(カルテ)を確認

記載されている病名、症状、検査の必要性の有無をチェック
この為には、診療録を確認することが大事です。
医師の記録の中に「症状が不安定なため、定期的に検査が必要」等の記載があるか?どうかがポイントになります。

STEP3:摘要欄などに根拠を記載

記録を確認して、必要に応じて、「摘要欄」に根拠を記載することになります。

例えば、「検査は疾患の再燃リスクのため必要と判断」など。
さらに、検査結果を記載し、その結果どう判断しどのような治療を行い「軽快」したのか、が書かれているとベストだと思います。

STEP4:再請求の控えを保存し、再発防止策を共有

再提出時は控えも残すようにしましょう! 返戻再請求は、控えや記録の整理も重要です。再請求が認められ復活し、医療機関の口座に支払われたことを確認するためには必要なことです。

レセプトを請求する際の事務としての心がけ

療養担当規則は、「診療報酬点数表のルールの前提」にあるものです。
つまり、点数を請求するには、まず“その医療行為が妥当であるか”を見られているということを意識して請求することが大切です。

  ✔ 医師の診療録とレセプト内容が一致しているか?
  ✔ 検査・投薬・処置に、明確な理由や必要性が示されているか?
  ✔ 返戻時に答えられる“根拠”があるか?

これらを意識しておくと、レセプトの精度がぐんと高まります。

まとめ・・・

療養担当規則に基づく査定」は、単なる記載ミスとは異なり、診療の“質”や“妥当性”そのものを問われる重要なポイントです。
医師の記録や判断と連携しながら、医療事務として“根拠のある請求”を行う意識が大切です。
一つひとつの対応が、クリニック全体の信頼につながっていきます。
請求業務で査定・減点を受けないように、根拠ある保険請求を行いましょう!

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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