知っておきたい「障害者総合支援法」あれこれ③~障害認定で広がる支援の輪~

長 幸美

医療介護あれこれ

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。

前回までのコラムでは、「障がい者医療費助成制度」の背景と、制度を利用するための対象者・申請の流れについてお話をしてきました。

今回はさらに一歩踏み込んで、障害認定によって受けられる“医療費以外”の支援について見ていきます。
「障害認定」というと医療費助成だけをイメージされる方も少なくありませんが、実は生活を支える大切な仕組みがたくさんあります。

障害認定を受けるメリット

障害者手帳を取得すると、医療費助成に加えて以下のような支援が受けられるようになります。
もちろん障害等級や収入によっても変わってきますので、詳細は行政の担当者と話をしていただく必要があります。

交通機関の割引

 JR・バス・タクシーなどの割引、福祉タクシー券の交付など

日常生活用具の給付・貸与

 車椅子、補聴器、特殊寝台など(自治体による支給制度)・・・生活に必要な福祉用具について、貸与を受けることができるようになります。

就労支援

 就労移行支援や就労継続支援(A型・B型事業所)など

介護・生活支援サービス

 ホームヘルパー、移動支援、ショートステイなど

このように、医療の枠を超えて日常生活や就労を支える制度が数多く用意されています。

税制上の優遇措置

障害者手帳や「障害者控除対象者認定書」を持つことで、税金面でも優遇を受けられます。

 ・所得税・住民税の障害者控除
 ・自動車税・自動車取得税の減免
 ・相続税や贈与税での非課税枠拡大(特定障害者扶養信託など)

これらは患者さんやご家族にとって大きな負担軽減となるため、制度を案内できると感謝されることも多いものです。詳細は行政の担当者や医療証発行時に窓口でお聴きいただくことが良いと思います。

障害年金の基礎知識

障害年金は、病気やケガで生活や就労に制限がある場合に支給される公的年金です。
種類は「障害基礎年金(国民年金)」と「障害厚生年金(厚生年金)」の2つがあります。

障害基礎年金(国民年金)

国民年金に加入している人(自営業・学生・専業主婦など)が対象です。
障害の程度が「1級または2級」に該当すると支給されます。
例えば、・・・視覚障害や内部障害で日常生活に著しい制限がある場合などです。

障害厚生年金(厚生年金)

会社員や公務員など、厚生年金に加入している人が対象。
障害の程度が「1級・2級・3級」に該当すると支給されます。医療証は発行されなくても(中等度以下)、「労働に制限がある程度の障害」でも対象になる場合があります。

ポイントは?

初診日にどの年金制度に加入していたかで、基礎年金か厚生年金かが決まります。
両方に加入している場合は、基礎年金に「厚生年金」が上乗せされる仕組みです。この為、障害年金を受給しようと思った場合は、「初めてその障害が発症した」ところまでさかのぼって診断書が必要になります。
私も病院勤務時代に初診で非常に疑わしい状況で専門病院に紹介した事例があり、過去のカルテに基づいた診断書を先生に書いてもらった経験があります。
「もう通院していないのに書かないといけないんですか?」という質問が出てきますが、受給要件を確認するうえでも必要なのですね。

医療機関にとって重要なのは、診断書の作成です。
記載の仕方によって年金受給の可否が左右されるため、制度の趣旨や書類の要件を理解しておくことが大切です。

医療機関としてのサポート

事務職員の皆さんが日常業務で意識しておくとよいポイントを整理しておきましょう。

患者さんから制度の質問を受けたら、市区町村の窓口や社会保険労務士などの専門機関へ橋渡しするための診断書作成依頼があった場合、医師に対して対象制度や提出先を確認して必要事項を正しく伝えることが大切です。

患者さんには医療証や障害者手帳の有効期限が切れそうな場合は、早めに声掛けを行うとよいでしょう。

こうした一つひとつの対応が、患者さんに安心を届ける「つなぎ役」としての役割につながります。

まとめ

障害認定によるメリットは、医療費助成だけにとどまりません。
交通・生活・就労・税制・年金など、生活のあらゆる場面を支える制度とつながっています。
医療機関の窓口は、患者さんが最初に相談する場所であることも多いため、こうした制度の全体像を知っておくことは大切です。

次回は、これまでの反響を踏まえて、「自立支援医療制度(更生医療・育成医療・精神通院医療)」をより詳しく取り上げ、診断書作成の実務的なポイントも解説していきたいと思います。

<参考資料>  令和7年8月15日確認

■日本年金機構/障害基礎年金・障害厚生年金 ⇒は(こちら)

 ・障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額 ⇒は(こちら

 ・障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額 ⇒は(こちら)

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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