健康保険証の廃止と新しい確認方法について~12月の混乱を防ぐために、今私たちにできること~
長 幸美
医療介護あれこれ本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、本記事に関する個別のお問い合わせは承っておりませんのでご了承ください。
皆さんの医療機関では、マイナ保険証の利用は増えていますか。
テレビでも連日「健康保険証の廃止」が報道されていますが、現場の準備は進んでいるでしょうか。昨年の12月2日、健康保険証の新規発行が終了した当日には、全国各地の医療機関で窓口が混乱しました。
令和7年12月2日以降は、これまでの健康保険証そのものが使用できなくなります。
今後は「マイナ保険証」または「資格確認書」での確認が基本となり、この移行をスムーズに乗り切れるかどうかが、医療機関の大きな課題となっています。
同じ混乱を繰り返さないためにも、いま何を準備しておくべきなのか、一緒に整理してみましょう。
目次
制度の変更の背景と目的
ここで、今回の制度の変更について少し整理しておきます。
この制度変更は、令和5年6月2日に公布された「マイナンバー法等の一部改正法」 に基づくものです。
この法律により、現行の健康保険証は令和7年12月2日をもって廃止され、「マイナンバーカードによる資格確認」の制度化が明記されました。
制度変更の背景
この制度改正は、令和5年6月2日に公布された「マイナンバー法等の一部改正法」に基づくもので、令和7年12月2日をもって現行の健康保険証が廃止されることが正式に決定しています。
健康保険証は昭和23年(1948年)から長きにわたり使用されてきましたが、デジタル化の進展や行政手続きの効率化を背景に、大きな転換期を迎えました。
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、行政手続きのオンライン化の必要性がより一層明らかになり、マイナンバーカードの普及促進と医療情報の連携による医療の質向上が求められるようになりました。あわせて、情報漏えいや不正利用の懸念も根強く、本人確認精度を高めることで、なりすまし等のリスクを減らすことも重要な目的とされています。
このように、制度の背景には「医療の安全性」と「行政の効率化」という2つの大きな軸があるのです。
目的
この制度改正の目的は、主に次の3点であると説明されています。
①行政手続きの効率化:オンライン資格確認により事務負担の軽減を図ること。
②医療の質の向上  :薬剤情報や健診情報を共有し、より適切な医療を提供すること。
③不正利用の防止  :本人確認精度を高め、なりすまし等のリスクを低減すること。
これからの保険資格の確認方法の変化
2025年12月2日以降、これまでの健康保険証は原則として使用できなくなります。
今後の保険資格の確認方法については、状況に合わせて、いくつかの方法が考えられています。
今後の確認方法と窓口での案内・対策できるように確認していきましょう!
マイナ保険証(マイナンバーカード)による確認
もっとも一般的になるのは「マイナ保険証」です。マイナンバーカードに保険証情報を紐づけ、顔認証付きカードリーダーで資格情報をオンラインで確認する仕組みです。薬剤情報や特定健診情報も共有できるため、診療の質向上にもつながると期待されています。
最近は、医療機関の窓口にある「オンライン資格確認の顔認証カードリーダー」を活用して、紐づけの手続きも簡単にできるようになっています。
資格確認書による確認
一方で、マイナ保険証を持たない方のために「資格確認書」という新しい証明書も発行されます。
「資格確認書」は、マイナンバーカードを持っていない方に保険者が発行する「保険証」に変わるもので、有効期限は最大5年で、「申請不要」で、令和7年12月1日までに自動送付される予定とされています。
高齢者や障害者等の特別な事情がある方は、マイナンバーカードを持っている方でも、申請することで「資格確認書」を受けることができます。
資格確認情報+マイナポータル(携帯端末)
さらに、令和7年9月19日以降は、スマートフォンからマイナポータルにログインし、資格情報を提示する方法も利用できるようになりました。
マイナンバーカードの情報をスマートフォンに登録し、医療機関側で資格情報を照合することで受診が可能になる仕組みです。デジタル機器に慣れている世代にとっては、今後この方法も広がっていくかもしれません。
巻末の参考資料欄にある「スマートフォンのマイナ保険証利用について」に仕組みの詳細が記載されています。ご確認いただければと思います。
医療機関に求められる準備と対応
この制度変更は、医療機関にとっても大きな変化です。
医療機関では、窓口で「保険資格の確認」を行う必要があります。「どのような対応方法があるのか」ということはもちろんですが、これまで同様に「保険証」を持参された場合の対応方法についても、事前に打ち合わせしておくことが大事になるのではないかと思います。
受付対応
まず大切なのは、窓口対応の見直しです。
マイナ保険証の読み取り機器や通信環境の整備はもちろん、「資格確認書」の取り扱いマニュアルを用意しておくことが欠かせません。通信障害や機器不具合はゼロにはできませんので、そのような場合にどう対応するのか、手順をあらかじめ整理しておくことも必要となってきます。
また、患者さんへの周知も不可欠です。
厚生労働省や保険者が用意しているチラシやポスターなどのツールを活用し、「12月から保険資格の確認方法が変わる」ということをしっかりと案内しておくことで、受診の際に起きる混乱を大きく減らすことができます。
職員教育
さらに、職員教育も忘れてはなりません。むしろこの点が最も重要でしょう。
新しい確認方法を理解するだけでなく、実際に職員が操作を体験し、つまずきやすいポイントを共有しておくことで、現場での対応力が高まります。特にスマートフォン提示による資格確認は、実際に操作してみると意外なところで戸惑うケースもあるため、事前に練習しておくことが大切です。
それと同時に、高齢者やスマホ操作が苦手な方への配慮も必要です。
ある医療機関で、高齢者だからマイナンバーカードは使えないだろうと、オンライン資格確認が開始された時に声をかけていなかったところ、90歳代の女性から、「マイナンバーカードならあるんだけど、ココでは使えないの?」といわれてびっくりしたそうです。
それ以降窓口で受診患者全員に「マイナンバーカードありますか?」と声をかけるようになったところ、1か月ほどで利用率が3割を超えたとお聞きしました。
後期高齢者だからマイナンバーは持参していないだろうと思いこまず、声をかけてみることが必要でしょう。
Q&A~よくある質問より~
ここで、医療機関の受診に際してよくある質問を見ておきたいと思います。
窓口では、以下のような質問がよく寄せられています。
| Q1 マイナ保険証が使えない場合は保険診療を受けられませんか?  | A1 資格確認書またはスマホ提示による資格確認で対応可能です  | 
| Q2 マイナンバーカードを持っていないけれど、どうしたらいいですか?  | A2 「資格確認書」が送付されてきますので、これまで同様に「資格確認書」をお持ちください。  | 
| Q3 「資格確認書」はいつ届くのですか?  | A3 保険者から12月1日までに送付される予定となっています。詳細は保険者ごとに異なりますので、ご確認ください。  | 
| Q4 従来の健康保険証はいつまで利用できますか。  | A4 原則令和7年12月1日までです。 有効期限が令和7年(2025年)12月1日より前に切れる場合や、転職・転居などで保険者の異動が生じた場合はその時点までとなります。  | 
| Q5 マイナ保険証になったら、限度額認定証や医療証は持参しなくてもいいのですか?  | A5 限度額適用認定証は、事前に保険者等に交付していただかなくてもマイナ保険証で限度額が適用されます。ただし、事前に保険者での申請が必要なケースがありますので、患者さんには一度保険者に相談するようご案内するとよいでしょう 医療証はこれまで通り、ご持参ください。  | 
まとめ~12月初めの混乱を避けるために~
マイナンバーカードによる保険資格確認には、不安や抵抗感を持つ方も少なくありません。
しかし制度改正は待ってはくれません。
12月2日の当日に慌てることがないよう、私たち医療機関がいまから準備を整えることが、混乱を最小限に抑える鍵になります。
窓口対応の整備(マニュアル作成等)、患者さんへの周知、職員教育などなど・・・。
どれも一朝一夕にできることではありませんが、今から取り組めば十分に対応できます。
スタッフ全員で情報を共有し、落ち着いて移行日を迎えられるよう、準備を進めていきましょう。
<参考資料> 令和7年10月10日確認
■厚生労働省/マイナンバーカードの健康保険証利用について ⇒(こちら)
   ⇒制度改正の説明はこちらをご確認ください。
■厚生労働省/「保険証廃止に関する案内」⇒(こちら)
   ⇒スマートフォンのマイナ保険証利用について
■厚生労働省/マイナンバー法等の一部改正法(PDF)⇒(こちら)
   ⇒令和5年6月29日開催/第165回社会保障審議会医療保険部会/資料5
■厚生労働省/「健康保険証廃止に関する案内」のチラシ⇒(こちら)
   ⇒健康保険証は12月2日以降新たに発行されなくなりました(令和7年4月発行のチラシ)
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
 
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