
受付は「安全の玄関口」~医療法に基づく「安全」を支える受付職員の役割~
長 幸美
医療介護あれこれ医療安全と聞くと、医師や看護師に関わること・・・と考えられがちですが、実際には患者さんと最初に接する受付職員も、医療安全を支える重要な一員です。
特に、医療法第6条の12(医療に係る安全管理のための体制確保)において、全ての医療機関には医療安全の確保が求められています。そして、その体制の一部を担うのが受付なのです。
今回はこの「医療安全」への受付職員のかかわりを考えてみましょう!
目次
受付の医療安全のかかわりポイント
受付職員は、まず初めに来院された患者さんの「受付」において、保険資格の確認や受診目的の確認を行います。本人確認を行い、紙カルテの場合は間違いなく「本人のカルテ」を用意し、電子カルテの場合は、チェックインすることで来院されたことを診療側に伝えます。
さらに、待合室で体調の変化(異変)や緊急事態になった場合は速やかな対応などを求められます。
まずは医療安全の視点から、受付職員の関わり方についてみていきます!
誤認防止は医療安全管理の基本
医療法施行規則に基づく医療安全管理指針では、患者誤認防止が明記されています。
誤認防止とは、患者の取り違えや、誤った医療行為を防止する取り組みのことです。具体的には、患者の氏名や個人情報を正確に確認し、誤った検査や治療を防ぐことを指します。例えば、患者にフルネームを名乗ってもらい、リストバンドやカルテと照合するなど、様々な方法で患者の確認を徹底することが求められます。
受付では、氏名・生年月日・診察内容(初診/再診)などを確実に確認し、本人確認を徹底することが、重大事故の未然防止につながります。特に同姓や同名がある場合は、マイナンバーカード・保険証・診察券・生年月日の複数確認を心がけていきましょう!
感染防止対策の“最前線”
医療法第6条の10(感染防止対策の体制整備)により、医療機関には感染管理体制の整備が求められています。受付はその“最前線”に立つ存在です。発熱や咳などの症状がある方に対し、問診票によるトリアージ、別室待機やマスク着用のお願いを行うことは、感染拡大を防ぐための大切な対応です。
体調異変への早期対応
医療安全対策指針には「医療従事者が患者の異常に迅速に気づく体制づくり」が求められており、事務職員といえどもその対象となると思います。待合室での様子や声かけの中で、「ふらついている」「反応が鈍い」など異常に気づいた場合は、速やかな医療職への報告が必要です。
日常的な観察力が事故予防に直結します。
緊急時対応と情報共有の体制
医療法の安全管理体制では、緊急時対応体制と職員教育も重要な要素です。
受付職員も、AEDの設置場所や緊急時の呼び出し手順、119番通報の判断基準を理解しておく必要があります。職員間の情報共有や、ヒヤリ・ハットの報告体制に関与することも、受付の役割の一つです。
年に1回程度は、BLS(Basic Life Support)の研修は必要だと思います。
せっかく「AED」を設置していても、その操作方法や一時救命(胸骨圧迫と人工呼吸(または胸骨圧迫のみ)など)が実施できなければ緊急対応ができません。
安全は“受付の日常業務”の中にある
受付職員の業務は、単なる案内や事務処理ではなく、医療法に基づく安全体制の一端を担っていると思います。正確な本人確認、感染対策の呼びかけ、異常への気づきと報告――それら一つひとつが、クリニック全体の安心と信頼を守る行動です。
「受付は安全の玄関口」。この言葉を胸に、日々の丁寧な対応を積み重ねていきましょう。
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント