ジェネリック医薬品の推進と加算制度のポイント~「外来後発医薬品使用体制加算」と「選定療養」の動き~

長 幸美

医療介護あれこれ

医療費の増大が課題となる中、国は医療の質を保ちながら、持続可能な制度とするために、より安価で同等の効果が期待できる後発医薬品の使用を推進しています。2024年度の診療報酬改定では、「外来後発医薬品使用体制加算」が見直され、使用割合が一定以上の診療所では処方ごとに加算を算定できるようになりました。これは、医療機関における後発医薬品の導入努力や、適切な医薬品選定の体制整備を評価するものです。

外来後発医薬品使用体制加算とは?

「外来後発医薬品使用体制加算」は、院内処方を行う診療所が後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用を積極的に推進している場合に、処方ごとに加算される診療報酬です。この加算は、医療費の適正化を目的として設けられています。

加算の概要と点数(2024年度改定後)

2024年度の診療報酬改定により、外来後発医薬品使用体制加算の点数が引き上げられました。加算の区分とそれぞれの要件は以下の通りです。

加算区分後発医薬品使用割合カットオフ値点数
加算1 90%以上 50%以上 8点
加算2 85%以上90%未満 50%以上 7点
加算3 75%以上85%未満 50%以上 5点

※カットオフ値とは、院内で使用される全医薬品のうち、後発医薬品のある先発医薬品および後発医薬品が占める割合を指します。

使用割合とカットオフ値の計算方法

■後発医薬品使用割合:
後発医薬品の規格単位数量 ÷(後発医薬品のある先発医薬品 + 後発医薬品の規格単位数量)

■カットオフ値:
(後発医薬品のある先発医薬品 + 後発医薬品の規格単位数量)÷ 全医薬品の規格単位数量

※一部の医薬品(漢方薬や特殊ミルク製剤など)は、これらの計算から除外されます。

施設基準と届出要件

加算を算定するには、以下の施設基準を満たし、所轄の地方厚生局へ届出を行う必要があります。
施設基準の内容は以下の四点です。

①後発医薬品の使用割合およびカットオフ値が基準を満たしていること。
②後発医薬品の品質や供給体制に関する情報を収集・評価し、その結果を踏まえて採用を決定する体制が整備されていること。
③医薬品の供給が不足した場合に、適切な対応ができる体制が整備されていること。
④後発医薬品の使用促進に関する取り組みや供給状況による処方変更の可能性について、院内の見やすい場所およびウェブサイトに掲載していること。

なお、ウェブサイトへの掲載については、2025年5月31日までの間に限り、経過措置(猶予期間)が設けられています。

長期収載品の選定療養費化への動き

一方、近年のもうひとつの大きな動きが「長期収載品の選定療養費」です。

従来、患者が希望して先発医薬品を選んでも、保険診療の範囲で提供されていましたが、2024年度から一部の長期収載品については、後発医薬品があるにもかかわらず先発品を希望する場合、選定療養費として自己負担が発生するようになりました。

参考までに、昨年記載したコラムを案内します。
※コラム「先発医薬品をもらうとお薬代が増える?~長期収載品の選定療養について~」は(こちら)
※コラム「令和6年度診療報酬改定~長期収載品の選定療養②~」は(こちら)

つまり、医療機関には「後発医薬品の利用促進」が求められ、患者さまにとっては「自分自身の選択により薬剤を選ぶ」ということが求められるようになってきたのです。

おわりに・・・

後発医薬品の利用は、単に先発医薬品(長期収載品)の「代わり」ではなく、患者さまの「選択肢の一つ」として、より主体的な医療参加を促すものです。医療機関としても、選定療養に関する掲示や説明体制を整え、患者の信頼と安心につなげていくことがこれからますます重要になっていくでしょう。

また大事なことは、後発医薬品の安定供給が難しい状況に備え、代替品の迅速な選定や、近隣薬局・医療機関との連携体制を確保しておくことです。あわせて、後発医薬品に関する情報提供や説明体制を整備し、患者の理解と信頼を得る取り組みが求められています。

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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