Q&Aより~「主病(主傷病)」って何だろう?

長 幸美

医療介護あれこれ

令和6年度の診療報酬改定の告示が3月5日に出てきました。今回の改定・・・一筋縄ではいかないな・・・と感じている方も多いのではないかと思います。その診療報酬改定を理解するうえで、「主病(主傷病)」そして「副傷病」について、整理しておきましょう。

「主病(主傷病)」とは?

診療報酬明細書(レセプト)の記載要領について、平成14年に一部改正され、その通達の中で、「主傷病」と「副傷病」を明確化することを求められてきました。診療報酬改定のたびに改定に合わせて一部改正されて新しいものが出されています。

記載要領の中では、「傷病名は厚生労働大臣の定める傷病名(別表第3に規定する傷病名)を使うこと」、さらに「主傷病、副傷病の順に記載すること」「主傷病名は原則として一つ」「副傷病は主なものを記載すること」「主傷病が複数ある場合は、主傷病と副傷病の間を線で区切るなど、主傷病と副傷病とが区別できるようにすること」などと規定されています。又、厚生労働省の用語の解説(説明)によると、入院の場合であれば「入院の理由となった傷病」外来患者においては、「主として治療又は検査をした傷病」を言うと規定されています。

 ■厚生労働省/「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正については(こちら)
  ⇒(15)「傷病名」欄について・・・19p~
 ■傷病名は厚生労働大臣の定める傷病名(別表第3に規定する傷病名)については(こちら)
  ⇒厚生労働省/「電子情報処理組織の使用による費用の請求に関して厚生労働大臣が定める事項
   及び方式並びに光ディスク等を用いた費用の請求に関して厚生労働大臣が定める事項、方式
   及び規格について」(令和2年4月 28 日付保発 0428 第3号)

さらに、「主病(主傷病)」は医療資源を最も投入した傷病名である・・・ということでも判断できるのではないかと思います。これはDPC/PDPSの考え方になりますが、主傷病に対する医学管理について認められている「医学管理料等」では、当然のことながら、医薬品や検査など、その治療管理について医療資源を一番使っている・・・ハズであると考えられているのではないでしょうか?

副傷病名とは?

副傷病とは、「主病(主傷病)以外で有していた傷病」・・・つまり、主病(主傷病)の治療中に派生した傷病や併存症などが該当します。例えば、整形外科で治療中に痛み止め等の投与により「胃炎」が発生してしまった場合、特定疾患療養指導料や特定疾患処方管理加算を算定し、査定されるケースがふえてきています。これは「主傷病」に対する治療や医学管理がレセプト上判断できないからです。

「特定疾患療養指導料算定」に際しての留意事項

「注1」には「別に厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対して、治療計画に基づき療養上必要な管理を行った場合に、月2回に限り算定する」と記載があります。この場合の「主病」とは「当該患者の全身的な医学管理の中心となっている特定疾患をいう」とされていますから、この「主病(主傷病名)」であるか否か、ということは、保険請求上とても重要になります。

事例

これまで「主傷病・副傷病」についてお話をすすめてきました。
では、複数の病態を示している患者さんの場合はどうでしょうか?

主傷病と副傷病を理解するために、弊社に寄せられたご質問の中から、事例を見てみましょう。

関節リウマチで定期的に通院され、鎮痛剤やステロイド剤加療中の患者さんの場合

これは整形外科からの質問が多い事例です。関節リウマチで変形や腫脹・痛みが強い場合、かなりの確率で胃薬を投与されています。どうしても消炎鎮痛剤などの長期投与となり、慢性胃炎の症状を呈し、胃薬の投与や胃潰瘍の予防・指導など生活上の注意・指導などを行われることもあると思います。
このような場合、「関節リウマチ」「慢性胃炎」のどちらも主病として、特定疾患療養管理料や特定疾患処方管理加算を算定されている医療機関があります。
このような事例で、「病名はついているけれど査定された」というご相談が増えてきました。レセプト上は問題がないように思えますが、整形外科の場合だと慢性胃炎や胃潰瘍について積極的に検査・診断を行い治療しているとは考えにくいですよね。慢性胃炎はお薬による副作用(副傷病名)と考えるほうが妥当ではないかと思います。

複数の病態を持った「糖尿病」の患者さんの場合

「糖尿病」の患者さんの場合、三大合併症に①糖尿病性腎症、②糖尿病性網膜症、③糖尿病性神経障害があります。その他にも、糖尿病の場合、血管の柔軟性が失われる「動脈硬化」や心臓病、脳卒中、閉塞性動脈硬化症、認知症、など、生命予後に影響がでるような病気等を引き起こすことでも知られています。
仮に、慢性腎不全や末梢神経障害、脳卒中などの病態で治療を開始した場合であっても、その原因になっている「糖尿病」の治療をしっかりしないと、対症療法だけになってしまい、診療報酬明細書(レセプト)請求上、主傷病に対する治療がないチグハグなレセプトになってしまいます。

イレウス(腸閉塞)を繰り返す患者さんの場合

イレウス(腸閉塞)とは、小腸や大腸等の消化管の中にある食物や便等が何らかの理由で通過障害を起こした状態です。その原因は様々で、麻痺性イレウス(手術等により腸の動きが悪くなる)なのか、炎症性腸疾患(IBD)で潰瘍が瘢痕となり狭くなっているのか、はたまた腫瘍ができてふさがれてしまったのか・・・その原因により、治療法も異なってきます。当然そのもとになった傷病に対し治療を行うことにより状態は改善しますので、もとになる傷病が主病になるケースが多いと思います。

まとめ

今回、「主傷病」について考えてきました。この「主傷病」という考え方は、特定疾患療養管理料をはじめとする「医学管理料」の算定判断をするうえで、そして「かかりつけ医機能」を考えていくうえで、とても重要なものになります。
つまり、単にレセプト上で「〇」や「主病」と記載するだけではなく、
実際に主傷病に対する治療が保険医療機関の中で行われていること
実際に主傷病を中心とした療養上必要な治療管理を行われていること
がとても重要になってきます。

「主傷病」とは、当該患者の全身的な医学管理の中心となっている疾患をいうものでもあるため、仮に「厚生労働大臣が定める特定疾患」に該当していても、対診や依頼による検査のみを行っている保険医療機関においては、特定疾患療養管理料等の医学管理料等は算定できないわけです。

病気の治療というのは、お薬を処方され服用しているだけではよくならないことも多々あります。日常の生活の中で気を付けておくことや体調の異常を感じたときの対処法、食事・運動、喫煙や飲酒、そして休養・睡眠など・・・様々な要素がありそれらを具体的に実践しやすいように伝えていくことも必要になってきます。

そして先生方や医療職の皆さんが、診療に関わった内容をしっかり把握し、適正な請求を起こしていくのは事務員の皆さんの仕事です。
まずは「主傷病」「副傷病」などを正しく理解し、適正な請求につないでいくようにしましょう!

<参考資料>  令和6年3月5日確認

■厚生労働省/「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について ⇒(令和4年度版)
  ⇒(15)「傷病名」欄について・・・19p~

2024年3月6日

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