活用していますか?「高額療養費制度」
長 幸美
医療介護あれこれ医療機関に入院した時や在宅医療の開始時に、「いったいいくらかかるのか心配」といったことや、請求書を見た患者さんから「本当に正しい請求ですか?」「なんでこんなに高いんですか?」といったような相談・説明を求められた経験・・・ありませんか?
コロナ禍でも、人工呼吸器(エクモ)や新薬の使用により、高額になる医療費の話がニュースになったことなど記憶に新しいものですね。新型コロナウイルス感染症の場合は新興感染症だったために、公費の助成を受けることができましたが、感染症分類が「5類」に変更になり、その診療費助成もなくなりました。
通常の医療費の場合、高額になった時など利用できる制度を知っておくことは、医療機関の事務職員であれば、必要な知識です。高額になるために、治療を諦める患者さんもたくさんいらっしゃいますが、この制度を知っておくことにより、手続きの案内ができると患者さんはとても助かると思います。
また、医療費が高額になることが事前にわかっている場合には、「限度額適用認定証」を発行してもらえば、医療機関では、その区分に従って上限額迄を支払ってもらうように、窓口で計算をすることができます。高額療養費制度は、所得に応じて上限額が決められています。
細かな内容は、持たれている医療保険により異なる場合がありますが、今回は、その制度の概要等を整理していきたいと思います。
目次
高額療養費制度とは・・・?
そもそも高額療養費制度とは何でしょうJか?
高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が後から、払い戻される制度です。この制度は、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月ごとに(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給するものです。
上限額は、年齢や所得に応じて定められており、いくつかの条件を満たすことにより、負担を更に軽減するしくみも設けられています。(世帯合算、多数回合算など)
高額療養費に含まれるもの
保険診療を受けて、窓口で支払った一部負担金が対象になります。
この際、入院時の食事療養費の負担額や差額ベッド代など、選定療養費は対象になりませんので、ご注意ください。
上限額は年齢や所得により決められている
現在、毎月の上限額は、年齢(70歳以上か、69歳以下か)と加入者の所得水準により、異なります。まずは70歳以上の方の場合を見ておきましょう。前年の年収が基準となりますが、毎月の標準報酬額若しくは、課税所得額がわかると計算ができるようになっています。大きく分けると、現役並みの報酬を得ている方と、一般の方、住民税の非課税世帯(所得が少ない方)に分けられます。
次に、69歳以下の方を見ていきます。こちらは少しシンプルになっています。年収に応じて5段階ですね。
さらに負担を軽減する仕組みもある
高額療養費制度は、同一の医療機関だけでなくても、いくつかの医療機関にかかっている場合、合算することができ、上限額を超えていた場合は、申請することにより、あとから払い戻しを受けることができます。
また、同じ世帯で、同じ医療保険に加入している場合は、「世帯合算」することや、「多数回該当」といって、直近1年間(過去12カ月以内)に3回以上上限額に達している場合には、4回目からさらに上限額が低く設定されており、高額の医療費による家計への負担を考慮した制度設計になっています。後期高齢者医療などでは、一度申請を出すと2回目以降は自動的に高額療養費の上限額を超えたものを振込してくださる場合もありますので、保険者の窓口でご確認いただいたほうが良いと思います。
高額療養費の申請
ご自身が加入している公的医療保険(市町村国保、公費高齢者医療制度や協会けんぽなど被用者保険)をご確認いただき、払い戻しの手続きをしてもらう必要があります。
その場合、それぞれの保険者に備え付けてある、「高額療養費の支給申請書」に病院等で発行された領収書を添えて出すことで、手続きができます。高額療養費の支給は原則本人の口座に振り込みとなりますので、振込口座の記載が必要になります。
また、高額療養費は収入の確認やレセプトとの突合などがありますので、申請を出して入金されるまでに、約3か月程度の時間がかかります。このため、あらかじめ医療費が高額になるかもしれないと予測できる場合は、「限度額認定証」の交付を受ける制度もあります。
高額療養費「限度額認定証」の交付について
医療機関の窓口で、保険証と一緒に「限度額認定証」の提示を受け確認することにより、医療機関の窓口で、上限額の計算をして一部負担金の上限額を計算して、請求することができるようになりました。この仕組みを活用することで、患者さんは窓口での支払い負担が減ります。
この仕組みを活用するためには、限度額認定証を事前に申請し窓口にもってきてもらう必要があります。
現在は、マイナンバーカードと保険証データを紐づけしている場合は、マイナ保険証の確認で、この限度額認定情報を得て登録することができるようになりました。窓口で、登録間違いも減り、とても便利です。
まとめ
高額療養費制度は必要な医療を継続的に受けていただくための負担を軽減する仕組みです。
いくつかの医療機関を受診している場合、一旦はそれぞれの医療機関で上限額までお支払いいただく必要もありますが、合算して払い戻しを受けることができることや、同世帯に複数の対象者がいらっしゃるときなど、家計への負担が少しでも軽くなる仕組みがあることを医療機関職員も知っておき、患者さまへの情報提供や相談に役立てていただきたいと思います。
以前は、外来等ではあまり経験がなかった「高額療養費制度」ではありますが、医学の進歩により、在宅医療や、抗ガン剤等の高額な外来治療、在宅自己注射等の在宅で実施できる治療(在宅療養指導)なども種類が増え、診療所でもこういった高額療養費制度の質問や相談を受けることがあります。
診療所としても、基本的事項は押さえていくようにしましょう。
事前に自院がどのような治療を行い、治療費の概算がわかれば、患者さまやご家族さまの経済的な不安や心配を少し軽くすることができるかもしれません。こういった機会をに、皆さんも仕組みを学んで情報提供できるようにしていきましょう!きっと頼りにされますよ!!
<参考資料> 令和6年1月30日確認
〇厚労省:「高額療養費制度制度を利用されるみなさまへ」 ⇒こちら
⇒改定等により、変更になる可能性がありますので、適応年月日をご確認ください。
2024年2月1日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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