新型コロナウイルス感染症に関する1 0月以降の見直し等について

長 幸美

医療介護あれこれ

令和5年5月8日に新型コロナウイルス感染症が感染症法上の分類で5類になり、約5カ月。
発熱外来の受診数も相変わらず多い状況が続き、内科・小児科を中心に医療機関の皆様はお忙しいことと推察しています。

そんな中、9月15日の審議会で新型コロナウイルス感染症に関する10月以降の見直しについて審議され、来年4月の改正に向けての議論も始まっています。今回、クリニックの先生方にも影響が多いと思われる事項を整理してみたいと思います。

基本的考え方

令和5年5月8日以降、夏の感染拡大を考慮しつつ、9月末に向けて「移行計画」を作成され、これまでの発熱外来や対応病床の確保が見直され、外来も入院も受け入れできる医療機関を増やし、「通常の対応」へ移行していこうという考えが出されていました。高齢者施設等を含め、対応できる医療機関を増やし、どの医療機関でも対応できるように、段階的に移行し、冬場の感染拡大に備えようというものです。

これにより、外来では「限定しない発熱外来」への感染対策をした診療に対し「院内トリアージ実施料(コロナ特例)300点」があり、自院の患者の発熱対応のみとした医療機関は147点など、差をつけるとことで「限定しないでね!」といわれていたのです。
また、入院先は原則医療機関同士で調整することになっていました。

病床確保料の見直し

国や都道府県は感染の拡大状況を見ながら3段階に分け即応病床の確保に努め、その経過措置について考え方を示されています。それと同時に、病床確保の補助単価の上限額も8割程度に見直されています。

(出典:厚生労働省/「新型コロナウイルス感染症に関する10月以降の見直し等について」詳細資料より_令和5年9月15日公表)

診療報酬上の特例の見直し

クリニックの先生方にとっては、この特例の見直しが一番影響が大きいと感じられる先生方も多いのではないでしょうか。
外来受診された新型コロナウイルス感染症患者(疑い患者を含み)について、感染対策ができ受け入れ患者を限定しないとしてこれまで公表し「院内トリアージ実施料(コロナ特例)300点」を算定していた医療機関は、300点からB000「特定疾患療養管理料の2で147点」を算定することになります
ちなみに公表せず、しかし必要な感染予防策を講じて対応を行なう医療機関の場合は、A000の9「夜間・早朝等加算点数(50点)」を算定することになります
さらに初診時のコロナ患者への療養指導・・・つまり家庭内感染の防止策や重症化した場合の対応等の指導について算定できていた147点については10月からは算定できなくなるなど、大きく変更されることになりました。
詳細は厚労省から出されている図表をご覧ください。

(出典:厚生労働省/「新型コロナウイルス感染症に関する10月以降の見直し等について」詳細資料より_令和5年9月15日公表)

また、「入院」では、重症度により算定できていた救急医療管理加算の倍率が変更になったり、回復患者のリハビリ受け入れ等の在宅へ向けた療養で算定が可能になっていた750点も500点に減額になるなど、点数が変更になってきます。

施設基準等の特例

平均在院日数や手術の実施件数等の診療実績等にかかる要件の特例が9月末で終了しますが、新型コロナウイルス感染症の受入れ等を行った月や平均夜勤時間数の変動や職員が一時的に不足した場合の特例などは、一定程度の期間継続することなどが出ていますので、令和5年9月15日事務連絡を一つ一つ確認する必要があります。

患者等に対する公費支援

コロナ治療薬や入院医療費の自己負担分にかかる公費支援については、患者の急激な負担増が生じないように配慮しつつ、見直しを行った上で継続することとされ、外来でも治療薬の一部負担金が発生することになります。自己負担の上限は医療費の自己負担割合に応じて段階的に実施するとされ、重症化予防効果のあるといわれているラゲブリオ等の薬価(約9万円)など高額なものが1割程度にとどまるようになっているとは言え、3割の方で9000円の負担増になります。事前の説明等が大事になってくると思います。

(出典:厚生労働省/「新型コロナウイルス感染症に関する10月以降の見直し等について」詳細資料より_令和5年9月15日公表)

今後の感染対策への対応

先日来、お会いする先生方から、「他の医療機関の感染対策どうしているの?」と聞かれることが多くなりました。感染症法上の分類が5類になったからといっても先生方の感染リスクが減るわけではないので、どこまでやろうか?というところを悩まれているようです。安全な感染対策には費用もかかるし、発熱患者さんは受けたくないなあ・・・というのが本音でしょう。
それと同時に、「そうだからと言って受けないわけにはいかないなあ・・・」と感じておられる先生も多いと思います。

コロナ対応で看護師をはじめ職員を増員させて対応された医療機関もあります。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症が感染症法上5類になったからとはいえ、感染症のリスクが減っているわけではありませんし、増員された職員を解雇しているという話は聞いていません。
「通常の対応へ移行しましょう」「すべての医療機関で受け入れ可能です」といわれても、感染対策をとらないわけにもいかず、ただ収入が減らされただけと感じておられる医療機関も多いと思います。

感染リスクは常につきものの医療機関だからこそ、基本的な感染対策・・・つまり「手指消毒」「マスクを正しくつける」等を継続しつつ、日常的な診療をしっかり行うことが地域医療を守っていくこと、地域住民の生活を守っていくことにもなると思います。
先ずは患者さんに向けて「感染対策」を地道にお伝えし続けることも大事な役割になると思います。

医療機関の皆さんを守ることにもなりますし、地域にお住いの方の身を守ることにもなります。
まずは身近なところ、できるところから・・・ですね!

<参考資料>  令和5年9月27日確認

■厚生労働省/新型コロナウイルス感染症に関する10月以降の見直し等について 

  ※詳細資料(令和5年9月15日厚生労働省公表資料)はこちら

■厚生労働省/新型コロナウイルス感染症に関する特例措置について

  ※概要版はこちら

  ※令和5年9月15日中医協資料はこちら

  ※施設基準関係はこちら

2023年9月28日

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