教えて!適時調査って何ですか?

長 幸美

医療介護あれこれ

皆さん、立入調査(医療監視)や集団的個別指導、個別指導など、似たような調査がいろいろとありますから、何が何だかわからない・・・ということ、ありますよね。

今回は、その中の一つである「適時調査」についてお話しします。

適時調査とは・・・?

適時調査とは、地方厚生局が施設基準の届出が適切に運用されているかどうか、点検に来るものです。
これは届出を出している施設基準について、周知徹底を図るとともに、適正に運用し適切な医療提供が行えるように管理できているかを、厚生局の職員が確認に来るものですので、例えば、適切な人員配置や実施要項等を適切にマネジメントしていれば特に問題になるようなことはない・・・と思います。

虚偽の届出や、届出と実態の相違があり、不正又は不当な対応等がないかどうかを見るもので、仮に不正等が行われていることが発覚した場合は、保険請求したものの返還や取り下げ、個別指導に切り替えられる場合もあります。

適時調査の医療機関はどのように選別されるか・・・?

例えば、〇〇床以上は3年に1回、とか、基本2年に1回とか、決められている都道府県もあるようですが、基本的には新しい施設基準を届け出た場合は半年から1年以内に実施し、それ以外は2~5年以内には実施するようにされているようです。都道府県によっても違うというのが現状です。

適時調査の実際

では、実際の適時調査はどのように行われるのでしょうか?

実施通知と事前準備

概ね3週間前には適時調査の案内が封書で送られてきます。
届出をしている内容が適切に運用されているか、管理されているかを確認されるためのものですが、基本的には書類上での管理状況等の審査となります。このため、事前提出の書類があります。

自院がどのような施設基準を届け出ているのかは、それぞれの厚生局のホームページで確認することができます。九州厚生局の場合はこちら ※九州厚生局「届出受理医療機関名簿」

事前提出書類

入院基本料関係や病院報告(患者票/直近1年分)などが主なものになります。
これらを期日までにExcelで送付することになります。

当日準備が必要な書類

上記事前提出書類の他、当日準備をするものもあります。
例えば、院内規定や委員会議事録、実際の計画書や報告書(感染レポート等)、職員の出勤簿等勤務状況がわかる資料、統計資料などです。取得している施設基準の中に示されている内容がわかるものが必要になります。

適時調査当日

当日は、複数人の厚生局の方が訪問され、挨拶の後、事前提出書類(事前に点検されています)や当日準備をしている書類をもとに、管理状況をヒアリングされます。ある程度の規模の病院さんだと、診療関係、看護関係、事務的な手続き関係と分かれて調査が行われます。医療機関の規模や重点的に調査を行う施設基準の多さにもより人数と時間が決められてきます。

適時調査時には、院内のラウンドも行われ、必要な情報が適切に掲示されているかどうかも見られます。事前に院内を巡回し掲示物や、不要なものが置かれてないか、も見ておきましょう。
また、自費請求している者や付き添い許可等のイレギュラーな対応をしているものについても、申込書や許可願い等により適切に行われているかどうかを見られますので、日常からの申請手順や請求手順なども確認し、説明できるようにしておきましょう。

講評と結果通知書

適時調査の結果については、調査終了後に調査官が意見交換され、講評が行われます。
軽微な改善点等はその場で口頭でお話しされることもあります。また、概ね1週間後に文書により、結果の通知書が送られてきます。
講評時に指摘された事項で、改善を求められるもの等は、改善計画書(報告書)の提示が必要な場合もあります。速やかに対応する必要があります。

返還金

明らかに不適切だとされるものについては、返還金を求められるものもあります。
返還金は前回の適時調査までさかのぼることとされています。
ここ数年は新型コロナウイルス感染症の拡大により「自己点検結果票」の提出により施設基準の要件を満たしているかどうか、報告を求められていました。このため、自己点検を正確に記載して提出していた場合は返還金は自己点検時まででよい場合もあるようです。しかし、自己点検時に確認をしていなかったり、いい加減な確認をしたりしていて実際には施設基準の要件を満たしていなかった場合は、その時点までさかのぼり返還を求められる場合がありますので、注意が必要です。

また、適時調査の途中で、悪質なケースであると判断された場合は、適時調査は中止になり、個別指導や監査に移行することもありますので、日ごろからの適切な管理が必要になります。

適時調査の結果と主な指摘事項

適時調査が行われた結果、どのような指摘事項があったのか、ということは、毎年地方厚生局のホームページに公開されています。
13枚程度の文書です。一度目を通していただき、どのような指摘が多かったのか、ご確認いただいて、自院の日常業務の中や施設基準管理を行う中で活用していただきたいと思います。

九州厚生局の場合は、こちら (令和5年11月17日確認)
※九州厚生局「個別指導及び適時調査において保険医療機関等に改善を求めた主な指摘事項について」

病棟関係が多いのですが、外来やクリニックでも、掲示物が不適切であることや、説明文書、カルテ記載などの指摘もありますので、一度ご確認ください。

おわりに

「適時調査」と聞くとドキッとされる方も多いと思います。厳しい指摘を受けていた時代もありますし、あまりいい気持ちはしないものです。
しかし、適正な質の高い医療提供を行ううえで必要だと思われる基準を決められています。
医療機関として患者様や地域に向けて適切な医療提供を行っていく中での、必要なこととお考えいただき、日ごろから適切な管理を行っていけば、恐れることもありません。
適時調査を機会に、点検項目を整理して、継続的に整備していく項目をリストアップしてみるのもいいかもしれません。適時調査は本来怖くはないものです。皆さん頑張っていきましょう!

<参考資料> 厚生労働省/令和5年11月17日確認

■厚生労働省/適時調査実施要領等

厚労省のホームページに、実施要領があります。また、重点的に調査を行う施設基準も掲載されていますので、ご確認ください。

■厚生労働省/保険診療における指導監査

■九州厚生局/適時調査における事前提出書類及び当日準備書類
 

2023年11月17日

制作者の直近の記事

コラム一覧に戻る
お問い合わせ

PAGE TOP