Q&Aより「関節腔内注射時の麻酔は算定できない?」

長 幸美

医業経営支援

査定について以下のような質問がありました。
今日は、関節腔内注射に関連する算定について考えてみましょう。

質問内容

「変形性膝関節症」の患者さんに、膝の関節穿刺をして水を抜いた後に、アルツを注射しました。
関節穿刺の時に、局所麻酔剤を使用して、その後水を抜いて、アルツを注射したので、
  診療区分50・・・局所麻酔+キシロカイン
  診療区分40・・・関節穿刺
  診療区分30・・・関節腔内注射+アルツ
を算定したところ、局所麻酔と関節穿刺が査定されました。何故査定されたのでしょうか?

関節腔内注射とは?

変形性膝関節症などで、軟骨やヒアルロン酸が減ってしまい、痛みが出てくる患者さんへ「痛い」といわれる関節内に注射をおこなうものです。体には複数の「関節」がありますが、その関節1か所ごとに1日につき、80点算定ができます。

ここで注意してほしいのが、似たような手技が処置や検査にもあるということです。それぞれに点数が違いますし、同日に合わせて算定できないルールがありますので、内容(目的)をよく把握して算定する必要があります。

注射(33)_G010 関節腔内注射 80点

痛みを訴える関節に直接針を刺し、局所麻酔剤やヒアルロン酸(アルツやスベニール等)を注射します。

処置(40)_J116 関節穿刺(片側) 120点

膝などの関節に液体(水)が溜まり、針を刺してたまっている水を抜く処置になります。この場合、傷病名に「水腫」や「血腫」など、液状のものが貯留していることがわかる傷病名が必要になります。

実はこの水を抜いたときに、注射針は刺したまま注射液が入っている注射器にとり替えて、薬剤を注入する場合があります。この場合も関節穿刺の点数を算定します。
「水を抜く」という行為と「注射をする」という行為を行いますが、この場合、主たるもののみの算定を行うルールになっています。

検査(60)_D405 関節穿刺(片側) 100点

上記のように関節穿刺を行ったときに、この抜いた水を検体として、検査に出す場合があります。
この場合の検体採取料が検査の項目の「関節穿刺」になります。

しかしながら、針を刺すのは、はじめの1回だけになりますね。このため、この「関節に針を刺す」という手技料については、いずれか一つ・・・つまり主たるもののみの算定しかできないということになります。

ただし、いずれの場合であっても使用した薬剤料は算定ができますので、忘れずに算定しましょう!

質問にあった「局所麻酔」は算定できる?

麻酔の通則及び通知を見てみましょう。

通則6
第1節に掲げられていない表面麻酔、浸潤麻酔又は簡単な伝達麻酔の費用は、薬剤を使用したときに限り、第3節の所定点数のみにより算定する。

令和4年度診療報酬点数表_第11部麻酔通則6より

通知3
検査、画像診断、処置又は手術に当たって、麻酔が前処置と局所麻酔のみによって行われる場合には、麻酔の手技料は検査料、画像診断料、処置料又は手術料に含まれ、算定できない。ただし、薬剤を使用した場合は、各部の薬剤料の規定に基づき薬価基準の定めるところにより算定できる。

令和4年診療報酬点数表_第11部麻酔の通知3より

つまり、簡単な麻酔に関して、または検査や処置等に関する麻酔の手技料はその中に含まれているという考え方で、麻酔の手技料として算定はできないと解釈できます。

今回質問事項の正しい算定は?

今回の質問の中では、傷病名は「変形性膝関節症」の患者さんに「膝の関節穿刺をして水を抜いた後に、アルツの注射をしました。関節穿刺の時に局所麻酔剤を使用してその後水を抜いた」とありますので、算定は以下の通りとなります。

     J116_関節穿刺(片側)  120点
      + キシロカイン(麻酔薬)
      + アルツ   (使用した薬剤料)

もし、水を抜いた後、検査に出していれば、検体検査の料金が算定できるということになります。
但し、この場合、傷病名にも注意が必要になります。関節穿刺が査定されている理由は、「水腫・血腫」などの病名が不足していたからかもしれません。

皆様いかがだったでしょうか?

この「主たるもののみ算定する」という解釈については、質問事項が多い項目でもあります。

また、ヒアルロン酸の傷病名としては、対象疾患が限定的(肩関節周囲炎、変形性膝関節症、関節リウマチにおける膝関節痛)になりますので、ご注意ください。また、処置等を行っていた場合「外来管理加算」の算定もできなくなります。誤請求、算定漏れがないようにしたいものですね。

2023年7月13日

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