地域における診療情報提供(共有)の実際~診療情報提供書の活用できていますか?~

長 幸美

医業経営支援

診療情報提供書料の算定について、クリニックでの算定状況を見ていて、誤請求や算定漏れがある項目なんだなあということに気付きました。皆さんと一緒に基本的なルールを見ていきましょう!

そもそも診療情報提供書とは?

似た言葉に「紹介状」というものがあります。この紹介状とは、患者さんの「氏名、年齢、性別、症状や傷病名」がかかれているもので、診療情報提供書とほぼ同義に扱われています。

つまり、「診療情報提供書」は、別の医療機関等に患者さんを紹介する場合に書かれる書類で、かかりつけ医の先生から専門的な治療や精密検査、高度な医療を必要とする場合などに医療機関等に患者さんの日頃の情報をお伝えし、かかりつけ医と他の医療機関との連携を図るうえで重要な書類なのです。

疾患によっては、日常的な診療をかかりつけ医が行い、専門的な診療を年に1~3回行うなど、地域連携診療計画に沿って治療を行いながら、治療効果の判定等に専門医療機関を受診する際などにも患者さんの治療の状況等を共有・相談する書類としても活用されています。

B009 診療情報提供料(Ⅰ)   250点

診療情報提供料(Ⅰ)の算定にかかる算定要件(通知)の中に以下の通り記載があります。
この通知によると、紹介状の書式については、紹介先の機関の特性により、書類が10種類もあるわけです。この書類の種類も、後ほど見ていきましょう。

通知

(1) 診療情報提供料(Ⅰ)は、医療機関間の有機的連携の強化及び医療機関から保険薬局又は保健・福祉関係機関への診療情報提供機能の評価を目的として設定されたものであり、両者の患者の診療に関する情報を相互に提供することにより、継続的な医療の確保、適切な医療を受けられる機会の増大、医療・社会資源の有効利用を図ろうとするものである。

(2) 保険医療機関が、診療に基づき他の機関での診療の必要性等を認め、患者に説明し、その同意を得て当該機関に対して、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に算定する。

(3) 紹介に当たっては、事前に紹介先の機関と調整の上、下記の紹介先機関ごとに定める様式又はこれに準じた様式の文書に必要事項を記載し、患者又は紹介先の機関に交付する。また、交付した文書の写しを診療録に添付するとともに、診療情報の提供先からの当該患者に係る問い合わせに対しては、懇切丁寧に対応するものとする。

厚生労働省/令和4年度診療報酬点数表_B009診療情報提供料(Ⅰ)_通知より
紹介先書式
別の医療機関に紹介した場合
(イ、ウ及びエ以外の場合)
別紙様式 11 又は
別紙様式 11 の2
市町村又は指定居宅介護支援事業者等別紙様式 12 から
別紙様式 12 の4まで
介護老人保健施設又は介護医療院別紙様式 13
保育所等又は幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、
中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校若しくは専修学校
別紙様式 14 から
別紙様式 14 の3まで
紹介先と書式の関係

紹介先の説明(注2)

診療を目的に医療機関向け(上記表の”ア”)の情報提供書は皆さんよくご存じだと思います。
この場合レセプトへの紹介元の記載は、特に必要ありませんが、医療機関以外のものについて(上記の「イ・ウ・エ」に該当する場合)は、紹介先・・・つまりどこに情報提供しているかということをレセプトにコメント記載する必要があります。
※レセプトコメント/算定日、情報提供先(医療機関以外の場合)

イ_市町村又は指定居宅介護支援事業者等

当該患者の居住地を管轄する市町村、保健所若しくは精神保健福祉センター、児童相談所、指定居宅介護支援事業者、指定介護予防支援事業者若しくは地域包括支援センター又は指定特定相談支援事業者若しくは指定障害児相談支援事業者をいう(以下「指定居宅介護支援事業者等」という。)と定義されています。

また、「保健福祉サービスに必要な情報」とは、当該患者に係る健康教育、健康相談、機能訓練、訪問指導等の保健サービス又はホームヘルプサービス、ホームケア促進事業、ショートステイ、デイサービス、日常生活用具の給付等の介護保険の居宅サービス若しくは福祉サービスを有効かつ適切に実施するために必要な診療並びに家庭の状況に関する情報をいう、と記載されています。

つまり、介護が必要になった方をはじめとする医療だけではなく、「介護保険サービス・福祉サービス」が必要な場合など、地域で暮らし続けるために必要なサービス提供のための情報提供について評価されています。

この他、訪問診療等の在宅医療を実施する患者さんに対し、適切な在宅医療を確保するために必要な「訪問薬剤管理指導」を行うにあたって提供される診療情報に対しても、算定ができます。ただし、この場合は、診療情報提供書を記載し、処方箋と一緒に調剤薬局に指示(依頼)を出す場合に算定ができるものです。交付した「診療情報提供書」と「処方箋」をカルテに添付する必要があります。
処方箋のみで依頼した場合は算定ができませんので、注意が必要です。

ウ_介護老人保健施設又は介護医療院

文字通り、「老健や介護医療院」への紹介について評価されたものです。
高齢者の在宅生活を行う中で、少しずつ状態が落ちていくことはよくありますし、何か急な医療提供等の治療により一気にADLが落ちてしまい、寝たきりに近い状態になることは考えられます。そのような場合に医療機関から在宅への橋渡しとして紹介される場合もあります。

エ_保育所等又は幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、高等専門学校若しくは専修学校

近年問題になってきている「アレルギー」です。主には食物アレルギーで給食等の食事提供時にアレルギー物質が入っていてアナフィラキシーショック等を起こし、危険な状態になる場合があり、このようなリスク回避のため、学校医あてに留意事項等を共有するための文書を発行します。これまでは、学校側から医療機関が依頼を受け無償で記載されていたと思いますが、令和4年度の改定で情報提供書料(Ⅰ)が算定できることとなりました。

加算の算定

この診療情報提供料(Ⅰ)の注8~注18にかけて、様々な加算があります。実はこの加算が算定漏れになっているケースが多いのです。点数表から加算の項目を抜粋してみましょう。
別の医療機関に対し、算定要件の内容に従って情報提供した場合に加算されるものです。

加算項目(注)加算の算定要件
8退院患者紹介加算(200点)退院月又はその翌月に、診療情報と退院後の診療計画を添付して、別の医療機関や精神障害者施設、介護老人保健施設、介護医療院に紹介した場合に算定する
※レセプトコメント/退院年月日(コメントコードあり)
9ハイリスク妊婦紹介加算(200点)妊娠中1回のみ算定可能
B005-4ハイリスク妊産婦共同管理料(Ⅰ)の届出医療機関に紹介した場合に算定する
10認知症専門医療機関紹介加算(100点)認知症の疑いがある患者を鑑別診断等のために専門医療機関に紹介した場合算定する
11認知症専門医療機関連携加算(50点)専門医療機関で認知症と診断された入院外患者の症状増悪により、当該専門医療機関に紹介した場合に算定する
12精神科医連携加算(200点)精神科を標榜していない医療機関が、うつ病等の精神障害の疑いがある入院外患者を精神科標榜医療機関に紹介した場合に算定する
13肝炎インターフェロン治療連携加算(50点)B005-8肝炎インターフェロン治療計画量を算定する専門医療機関で作成した治療計画に基づいて治療を行う入院外患者を、当該専門医療機関に紹介した場合に算定する
14歯科医療機関連携加算1(100点)患者の口腔機能管理の必要から歯科標榜医療機関に紹介した場合に算定(手術前の周術期口腔機能管理又は歯科訪問診療が必要な場合)
15歯科医療機関連携加算2(100点)患者の周術期口腔機能管理の必要から歯科標榜医療機関に予約の上紹介した場合に算定する
16地域連携診療計画加算(50点)連携医療機関において、A246入退院支援加算「注4」地域連携診療計画加算を算定して退院した患者について、退院時や在宅復帰後の状況等を退院月又はその翌日までに当該連携医療機関に情報提供した場合に算定する
17療養情報提供加算(50点)患者が入院・入所する別の保険医療機関・介護保険施設・介護医療院に対して、訪問看護ステーションから得た情報を添付して情報提供した場合に算定する
※レセプトコメント/訪問看護ステーション名(コメントコードあり)
18検査画像情報提供加算(退院患者200点、 入院外患者30点)施設基準届出医療機関が他の医療機関に患者を紹介する際に、検査結果や画像情報、画像診断の所見、その他主要な診療記録を電子的な方法で送付した場合に算定する
※レセプトコメント/退院年月日(コメントコードあり)
加算項目抜粋/B009診療情報提供料(Ⅰ)注より

上記の中で、「11_認知症専門機関連携加算(50点)」「13_肝炎インターフェロン治療連携加算(50点)」「16_療養情報提供加算(50点)」については算定漏れが多いのではないでしょうか?

認知症患者さんの場合だと、鑑別診断の場合は算定できることを意識されていることが多いと思いますが、症状の増悪の場面でも50点の加算が算定できますので、これは事務の方がよく把握しておく必要があると思います。

また、在宅の患者さんが入院や入所する場合にも、連携している訪問看護ステーションさんからもらっている日常的な留意点などを一緒に記載することで50点の加算が算定できます。これはよくあることだと思いますし、実際私の親を紹介された場合算定漏れがありました。

それと、「14_歯科医療機関連携加算1(100点)」です。歯科訪問診療が必要な場合にも算定ができること、皆さんご存じでしょうか? 高齢者は歯磨きを嫌がるケースも多いのではないかと思います。こういったときに、在宅で診てくださっている先生に訪問診療の相談をしてみるのもよいのではないかと思います。ご紹介いただけると、このような加算も算定ができるということを知っておきましょう!

介護系のサービス利用の際の情報提供

高齢者や障害を負ってしまった場合など、生活を行う上で介護系や障害者施設等のサービスを相談される場面もあると思います。地域で暮らしていくためにはなくてはならないサービスになります。

こういった場合に医療機関では十分な相談サービスが継続できず、指定居宅介護支援事業所や地域包括支援センター、若しくは精神保健福祉センター・指定相談支援事業所、若しくは市町村や保健所などの行政機関等に対し、支援を要請したり相談したりすることも多いと思います。

実はこのような場合にも、診療情報提供料(Ⅰ)が算定できます。

また、保険薬局に対し訪問薬剤をお願いするケースはありませんか?
これも知らなくて損をしている場面が多い項目ではないかと思います。特に、保険薬局に対し「在宅患者訪問薬剤管理指導」・・・つまり、保険薬局の薬剤師さんにお薬を持参(訪問)し薬剤管理指導を行ってもらうことに対し、診療情報提供書と処方箋を一緒にお渡しして訪問薬剤指導を依頼(指示)することで算定できるということは、クリニックの先生方が知らない場合が結構あります。

私も父の在宅生活では、この訪問薬剤管理指導や居宅療養管理指導を行ってもらったことで、ケアマネジャーさんや訪問看護師、小規模多機能事業所の方々に個別にお話をすることが無く、皆さん協働して、統一感をもって父の在宅生活を支えてくださったので、安心できましたし、本当にとても助かりました。
先日たまたまお会いした内科の先生は、最近、少しずつ通院中の患者さんが高齢化してきて、在宅訪問診療の件数が少しずつ増えてきた、といわれていましたが、訪問薬剤師さんに診療情報提供書でお願いできますよ!というとびっくりされていました。その先生は、訪問薬剤をお願いするときは処方箋に訪問希望と記載して渡していた・・・というのですね。だいたいそのあと、薬剤師さんから連絡があっていろいろとヒアリングされるからいいかなと思っているということですが、必要な事項を診療情報提供書として連絡をすることで、診療報酬もいただけますし、依頼を受けた薬剤師さんも手間が減りますので、喜ばれるのではないでしょうか?

まとめ

今回は診療情報提供料(Ⅰ)・・・特に加算の算定について主に見てきました。

こうしてみていくと、日常的に紹介するケースも多く、これまで無償で提供されていた場合もあるのではないかと思います。先生方にも知っていただきたいですが、何よりも事務職員さんは、よく点数表を読んで、このような加算について適切に算定ができるようにしましょう!

<参考資料>

別表第一_医科療報酬点数表_第2章特掲診療料_第1部医学管理料等_第1節医学管理料等(103p~105p

別添1_診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)(189p~194P)

◆別紙様式11~別紙様式14の3  /医科点数表_様式集 (25p~34p)
 ※(厚生労働省/令和4年度診療報酬改定_第3関係法令等【省令・告示】
  (2)2診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)
  (令和4年3月4日保医発0304第1号)

2023年7月13日

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