一期一会 ~あなたの対応でいいでしょうか?~
長 幸美
医業経営支援「一期一会」とは、茶道の心得を表した言葉です。茶会に臨む際に、その機会は二度と繰り返されることのない一生に一度の出会いであることを心得て、亭主・客ともに互いに誠意を尽くす心構えを説いたものです。
このところ、有名人・著名人の訃報を聞くにつけ、また、高齢の年寄りと暮らしていると、何が起こってもおかしくはない・・・もしかしたら、帰りに事故にあって明日はないかもしれない、この桜はあと何回見ることができるだろう・・・等と考えることも増えてきました。
特に医療接遇を考える中で、この「一期一会」って実はとても大事なことではないかと思うようになってきました。
医療職側にしてみれば、たくさんの患者さまの中の一人かもしれませんが、その一人の患者さまは、あまたある医療機関から皆さんの医療機関を選んで足を運んでくださっているのです。つまり選ばれた医療機関なのです。
選んだ理由は様々かもしれません。
「近かったから」「他に知らんかった」という方もあるでしょう。
「通りかかったから」という方もいらっしゃるかもしれません。
「専門の有名な先生がいらっしゃるから」という患者さまもあるでしょう。
理由は何であれ、「あなたの医療機関を選んできてくださった」のです。
もしかしたら、何度も通院されることになるかもしれませんが、検査だけで何事もなく終了するかもしれません。また、何らかの異常が見つかり、他の医療機関へ紹介受診することになるかもしれません。そうなると不安は倍増し、押しつぶされそうになっておられる方もあるかもしれません。
医療機関は「待たされる」イメージが強く、待合室ではいつもごった返して、子供の泣き声が聞こえたり、鬱々とした表情の方が順番を待っていたりとあまり良いイメージはありませんよね。以前は3時間待ちの3分診療等と揶揄されることもありました。
患者様が多くなると、どうしても厳しい表情になり、目の前の作業をこなすことが最優先されてしまうことがあり、機械的に冷たいイメージを持たれることもあると思います。私自身も患者様やロビーに目がいかず、「機械的に処理されているようだ」とご意見箱に投書されたこともあります。
その際に「この医療機関を選んできてくださっている」ということを思い出してほしいのです。そうすることにより、目の前の方に対し少し余裕をもって対応することができるのではないでしょうか? また、患者様が増えてきたとき業務内容に集中できる環境を作っていくことも大事になります。
例えば、医療DXを取り入れることも一つです。予約対応もそうですし、マイナ保険証の導入・受付の自動化、電子処方箋の対応などもその一つになると思います。現在当たり前に実施している作業が本当に必要な作業なのかどうか、見極めていくことも必要です。
そして、「ヒト」が行わなければならないことに注力できる方法を考えていく・実行していくことが求められてきているように思います。
「一期一会」・・・何よりも選んできてくださったことに感謝し、心を込めて対応させていただくことは、デジタル化が進んできたこの時代だからこそ、「ヒト」が作り出す温かみや心遣いが信頼やつながりを育んでいくのではないか、と感じています。
忙しい時に、機械的になってはいませんか? 忙しい時こそ、一呼吸おいて「どうなさいましたか?」と一言かけてみてはいかがでしょうか?
医業コンサル課 長 幸美
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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