【医療介護あれこれ】医療の質の評価①入院医療
長 幸美
アドバイザリー令和4年度診療報酬改定から、3か月が経とうとしています。また、「骨太の方針2022」が出され、来年に向けて何をするのか、国の方針が明らかになってきました。
今回の改定は、これまでとは一味違い、「医療の質」の評価があちこちに見られます。これは令和6年度に向けて働き方改革を行ったうえで質を担保するという難しい命題でもあります。
今回から5回シリーズで、「医療の質の評価」と2年後の医療・介護同時改定に向けて、整理してみましょう!
今回は第1回目として「入院医療の質」について、考えてみましょう。
■ポイントは「地域全体の医療の質を上げていくこと」
令和4年度の診療報酬改定は、コロナ禍における急性期医療の体制の中でも、高度急性期がどんなものか、どんな患者を受けて、どんな地域支援をしてほしいか、ということが明確になりました。つまり 「超急性期(スーパー急性期)医療の在り方」について、評価・定義づけられたということです。
かなり厳しい内容ではありますが、指標としては「救急車の受入れ台数」とともに、「緊急手術の件数」による縛りや、「ICU/HCU」など、重症者を受け入れて高度な医療が提供できる体制が必要になります。
新設・再評価された、「急性期充実体制加算」「総合入院体制加算」、ICUに関しても「重度患者対応体制加算」が届け出できる医療機関が対象となります。
さて、これまでと違うところが1点あります。
この加算に必要な人員は、超急性期医療における経験を持ち、研修を受けた専従の看護師が求められ、それぞれの病棟の看護師として施設基準に係わる看護師数にはカウントできない縛りがあるのです。では、その看護師に、そして医療機関に何を求められているのでしょうか?
それは、地域医療のリーダーとして地域のために働くということです。つまり、地域全体の医療の質を底上げするために必要な人員を抱えて、引っ張っていってほしいというメッセージが込められているのだと思います。
もう1医療機関(自院)のことだけを考えておけばよいという時代ではないということでしょう。
■コロナ禍での反省・・・地域のかかりつけ機能と感染対策
新型コロナウイルス感染症の第4波~第6波を経験し、高齢者施設や小規模は慢性期病床をはじめ地域の医療機関でのクラスターの発生や、地域のかかりつけ機能を持っているはずのクリニックが発熱外来や検査、予防接種等の対応ができずに、大きな病院に患者が流れ、急性期医療がひっ迫するという事態になってしまいました。感染以外の病気での救急搬送に異常に時間がかかったということも、メディアでの報道などでご存じの方も多いと思います。
感染対策についても、クリニック等の小規模事業所も含め、地域ぐるみの対応が必要だということが今回の点数改正の中でも、議論されてきました。つまり、「外来感染対策向上加算」の新設と、「感染対策向上加算」の見直しです。
「感染対策向上加算1」については、びっくりするような点数が付きましたが、これも、基準の中の感染管理者は地域の中に出て、連携している医療機関・・・つまり地域のリーダーとして、医療機関の感染対策の底上げをしてほしいということが求められています。さらに、コロナ重点医療機関として、地域の保健所や医師会とも連携することを求められています。
また、地域のカンファレンスの開催だけではなく、年1回以上、感染発生時を想定した訓練を地域の医療機関等を巻き込んで行うことも求められています。
■「紹介受診重点医療機関」の役割
今回、超急性期病院の役割が明確になってきた中で、大病院の「紹介状なしでの受診」について、初診・再診時の実費徴収とともに、保険診療の一部をカットすることなどが決められ、令和4年10月から実施されることになっています。
つまり、大病院は地域からの紹介(連携)の上、高度な医療資源の提供を求められていると言えると思います。
ここで注目してほしいのは、「紹介受診重点医療機関」というのは、届け出だけでなれるものではなく、外来機能報告とともに、地域の協議の場で協議して決められていくものだというところです。つまり、手を挙げても、認められないかもしれない・・・それだけ実績が必要ということです。
「医療資源を重点的に活用する外来」のイメージとしては、「悪性腫瘍手術前後の外来」「外来化学療法や外来放射線治療」「紹介患者に対する外来(特定の領域に特化した機能を有する外来)」などが挙げられています。
■次期改定に向けて・・・
令和6年は診療報酬・介護報酬・障害報酬と報酬トリプル改定となります。さらに、勤務医の働き方改革では時間外労働の縛りが実質的に動き始めますし、第8次医療計画・介護計画が動き始めます。2025年問題も仕上げの年となります。
今回の改定は、その布石ともいうような内容だったと思います。
地域医療構想では、外来機能報告により、外来医療計画が盛り込まれてくる予定ですが、これは、何よりも、地域の住民が「過ごしたい場所で、暮らし続ける」ことを支えるための仕組み、つまり地域包括ケアシステムの中で、医療過疎をなくすための安心・安全の仕組みを超急性期病院が音頭を取って、地域を引っ張っていってほしいというメッセージがあちこちにちりばめられているように感じています。
次の改定に向けて、自医療機関の地域における役割と、そのための病床をどうしていくのか、病院を挙げて考えていく必要があるのではないかと思っています。
<参考資料>
〇令和4年度診療報酬改定の概要(急性期・高度急性期入院医療)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000943460.pdf
〇厚労省「紹介受診重点医療機関の検討について(社保審医療部会20220131)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000888678.pdf
医業コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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