【医療介護あれこれ】接遇レッスン「スマートな敬語」
長 幸美
アドバイザリー前回、敬語の活用で、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」があることをお伝えしました。
一覧表を使って、「見る」⇒「あなたがご覧になる」⇒「私が拝見する」・・・と声に出して練習されていますでしょうか?
※接遇レッスン「敬語のい・ろ・は」をご覧ください。(https://www.sasakigp.co.jp/ssk/column/10014830)
先日ある医療機関様にお伺いした時に、受付で「この説明を拝見されてください」という言葉が聞こえてきました。どうやらインフルエンザの予防接種後の注意文書をお渡しされていたようですが、皆さんどう思われますか?
恐らく、敬語を使わなきゃと緊張されたのでしょうが、ちょっと残念な使い方になっていますね。この場合は「この説明書をよくお読みください」でよいのではないかと思います。
敬語は、あくまでも「相手の方への敬意を表す表現方法」のひとつです。
今日は受付でよくある使い方について、場面を想像しながら、少しおさらいしましょう。
【問診票を記入してほしいとき】
受付で、受付簿や診療申込書、問診票など、記載してもらう場面が多々ありますね。
こういったものに「書いてください」という場合は、依頼形を使うといいでしょう。
「お手数ですが、こちらの問診票にご記入いただけますか?」という言い方になりますね。
「お手数ですが」の代わりに「恐れ入りますが」という一言を加えてもいいでしょう。。
【保険証を出してほしいとき】
初診時及び毎月1回は保険証の確認をされていると思いますが、このような場合も、柔らかく、「保険証・医療証をお持ちでしょうか?」「確認させていただけますか」というといいですね。
【検温して手指消毒をしてほしいとき】
ほとんどの医療機関で現在「検温」「手指消毒」をされていることと思います。風除室や入口に職員さんが立ち、検温をされるケースがほとんどだと思いますが、黙って非接触型の体温計で測っておられるところはないと思います。
「すみません、皆さんに検温をご協力いただいております」「体温を測らせていただいてよろしいでしょうか」とお声をかけ、終了した時に「ありがとうございます。手指消毒をされて中へお進みください」とお声をかけるととてもスマートですよね!
【今日の受診目的を聞きたいとき】
皆さんこんな面白い言い方をしていませんか?「今日は診察の方でよろしかったでしょうか?」・・・これも医療機関だけではなく、よく聞く言い回しですが、何かおかしくないですか? 皆さんも考えてみてください。
ひとつは、「診察」は方角ではありません。
もう一つは、なぜ「よろしかった」と過去形にするのでしょうか?
シンプルに、「今日は〇〇先生の診察ですね」という方がとてもスマートですよ。
【待ち時間でのクレームをうけたとき】
「今日は患者さんが多いんです! 順番にしていますから!」先日伺った医療機関で、お聞きしてドキッとしました。
このシーズンになると、内科の待合室で待ち時間が長くイライラされている患者さんをよく見かけます。クレームとなる事例とそうではない事例がありますが、このように言われて引き下がる方はありません。患者さんは「忘れられているのではないか」という不安があります。また、「早く診察してほしい」というご要望もあります。
まずは「長くお待ちになっているのですね」と受入れましょう。そのうえで、「お待たせして、申し訳ございません。確認してまいりますので、少しお時間いただけますか?」とお声をかけ、あとどの程度の待ち時間があるか伝えてあげましょう。例えば、「あと3名の患者さんがお待ちになっています」とお伝えするだけで、待つ方も気持ちが楽になるものです。
また、待合室で腰かけて待っているのがつらい状況があるのかもしれません。患者さんの様子が悪いようであれば、看護師さんに声をかけ、対応をお願いするのもいいと思います。
特に今年はCOVID-19の影響もあり、待ち時間や三密を気にされる方も多くなっています。待合室の様子は気を配りたいものですね。
【相手に名前を名乗ってほしいとき】
「お名前頂戴できますか?」
恐らく丁寧な敬語を使いたいと思っていらっしゃるのでしょうが、私の前職の上司は、この言葉を言われるたびに「冗談じゃない! 私の名前は上げられません! 私の名前をもらってあなたは何をしようというのか?」と、仰っていました。
シンプルに「教えてほしい」ことを伝えたらいいと思います。例えば、「お名前をフルネームでお聞かせ願えますか?」「お名前と生年月日で確認させていただけますか?」といった方がよりスマートですね。本人確認のために、医療機関ではいま検査や処置においても名前をいうように求められます。もっと丁寧に言いたければ、「恐れ入りますが」と添えましょう。
【挨拶のときの対応】
ある医療機関に訪問した時に、受付がしんとしていて、不思議な違和感がありました。
その医療機関の受付では、患者さんとの会話が一切なく、テレビの音とときどき笑い声が漏れてくる・・・。ロビーで観察していると、患者さんが入ってこられても、「挨拶」がないのです。そして会計を済ませた方も黙ってお帰りになるし、受付も何も言わない・・・笑い声は職員同士の会話により生まれてきたものでした。待合の雰囲気は、変な緊張感がありました。
一方別の医療機関では、患者さんだけではなく、来訪者に「おはようございます、寒いですね。今日は診察ですか?」「こんにちは、雨で車が多かったでしょう」と声をかけてあり、会計が済んだ後も、「お大事に」「気をつけて帰ってくださいね」と、相手を思いやる言葉が出ていました。すると、不思議なもので待合室の居心地もよいのです。
話し込む必要はありません。挨拶とプラス一言!添えてみてください。
如何でしょうか?
「敬語は難しい」と敬遠しがちですが、そんなに怖がることはありません。自然に言葉が出てくるまでには、少し時間がかかるかもしれません。繰り返し「言葉の返還を練習」して少しずつ馴染んでいくといいなと思います。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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