【医療介護あれこれ】入院医療について「データ提出加算」①

長 幸美

アドバイザリー

前回のコラムでも、2020年改定は前回改定を踏まえ、「地域医療構想を後押しする改定」であること、それとともに「働き方改革」の考え方も入ってきていることをお話しました。

今回は入院医療について考えてみたいと思います。

【急性期入院基本料】
入院医療については、「機能分化」が強く推し進められているところで、急性期医療については、前回7対1から10対1へ緩やかに点数配分がなされて来たところです。しかしながら、7対1の病床数についてはなかなか減少しない・・・言い換えると10対1への移行は進んでいないのが現状ではないでしょうか?

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(出典:中医協_20190926_入院医療(その1)より)

7対1の病床としては、平成25年7月をピークに、徐々に減少傾向にあります。
前回の改定後、急性期一般入院料2に変更された病床は全体の3.2%です。
7対1を維持し続ける理由は、①施設基準を満たしているため(85.5%)、②医療需要がある(70.1%)、という理由が多くなっています。一部には、「他の病棟と比較して経営が安定する(35.2%)という意見もありました。
では、転換した理由を問うと、①重症度。医療看護必要度の基準を満たすことが困難、②看護師の確保が困難、という理由が多くなっています。
患者の動向をみると、自宅(在宅)から受入れ、自宅(在宅)へ帰るという流れが、6割を超え、多くなっています。

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(出典:中医協_20190926_入院医療(その1)より)

 

さらに、看護必要度の内容を分析されていますが、認知症患者・・・つまり基準②に該当する患者が4割程度いるという結果が出てきていました。
基準②とは、B14又はB15に該当しA1点かつB3点以上の患者を指します。

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また、この基準②の「A1点」に関しては、次の表のように、①心電図モニター、②呼吸ケア、③創傷処置、が多くなっており、B項目が3点以上に該当する場合は「診療・療養上の指示が通じる+危険行動」「移乗+衣服+指示」が多くなっていました。

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(出典:中医協_20190926_入院医療(その1)より)

実はこれらの細かな分析を「直前の状況と比較」したり、機械的な判定と比較をしたりことにより、実際に適切かどうかの議論が進んできているのが現状です。
特定集中治療室などに関しては、入院患者の評価指標の見直し、専門性の高い看護師の配置、早期からの栄養管理が重要であるとの判断から、早期の管理栄養士の介入などが検討されています。
そのほかは、総合入院体制加算(精神科、小児科等を含む総合体制)、抗菌薬適正使用支援加算(感染対策、耐性菌の発現を抑制するための取り組み)などの議論が行われています。

【療養病棟入院基本料】
療養病棟に関しては、看護職員及び看護補助者の配置が20対1をベースとして、現在経過措置となっているが、この経過措置の期間延長を検討してはどうかという議論が行われています。
それと同時に医療区分3の状態についても、現状では、「中心静脈栄養」に該当する状況が多くなっています。IVHを長期間留置している状況では感染リスクも高まります。
このため、どのように考えていくのか、ということが議論の中心になってきているように思います。

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(出典:中医協_20191122_入院医療(その2)より)

療養病棟については、地域包括ケア等の病床から転棟した場合に「在宅復帰」としてのカウントができなくなり、稼働が落ちている病院も多くなってきていると思います。
老健も同様だと思いますが、「地域と受け渡し」としての機能を持つ病床として、「何をして、どのように地域で暮らし続けることを支えていくのか」ということが問われているように思います。

【データ提出加算】
前回の改定において、回復期リハビリテーション病棟についても、200床以上の病院についてはデータ提出が必須となりました。また、回復期リハビリテーション病棟5.6や療養病棟においては、令和2年3月31日まで経過措置の対象とされています。
次期改定では、現在以下の内容で検討されています。

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(出典:中医協_20191122_入院医療(その2)より)

療養病棟についても、約29.5%の病院がデータ提出加算を算定しているという現状もあります。データに基づくアウトカム評価の推進の観点から、より適切な評価にするデータ提出は必要であり、施設基準の拡大については検討されていくものと思われます。

データ提出加算算定のスケジュール感としては、約6~8か月程度かかると考えていただけたらと思います。募集は1年度中4回となっています。試行データを提出し、その後本データ提出になります。届け出を行った後も、データの精度や内容に問題ありとされると、加算算定ができなくなり、データ提出が必須になっている入院料については、算定ができなくなりますので、注意が必要です。

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(出典:中医協_20191122_入院医療(その2)より)

うちは、療養型だし小さい病院だから・・・と思っていても、いずれはこれらデータについては提出を求められてくると思います。また、近年の基準の管理上、これらデータをしっかりと取扱いできることが、基準管理等に必要とされている時代となっています。
この機会に検討されることをお勧めします。

【地域包括ケア病棟】
地域包括ケア病棟の目的や意義は何でしょうか?
その名の通り「地域包括ケアシステムを支援する病床」ということではないでしょうか?

前回の改定で、サブアキュートへの対応について手厚く評価されてきました。
地域の中で、「在宅を支援する」ということは、読み替えると「生活を支援する」ということになると思います。「治す医療から支える医療へ」という前回の改定の中では一番の花形であったと感じています。
病床数は徐々に増加してきていますし、急性期からの病床変更も増加傾向にあるのではないかと思います。しかしながら、サブアキュートの機能や「生活を支援する」という機能を検討するにあたっては、どのような形で支援するのか、というところがポイントになってくるでしょう。

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(出典:中医協_20191129_入院医療(その3)より)

DPCによる算定を行われている場合は、以下の通りに整理されるのではないかと思いますが、今後、検討していくうえで、きちんと整理をされておかれる方が良いと思います。

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(出典:中医協_20191129_入院医療(その3)より)

また、病床数が要件に含まれる診療報酬項目が整理されたものがありましたので、添付します。参考までにご覧ください。

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(出典:中医協_20191129_入院医療(その3)より)

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