【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】透析医療について その②
長 幸美
アドバイザリー
2月の透析医療について告示前の情報をこのコラムの中で紹介しておりましたが、皆さん告示の資料はご覧になりましたでしょうか?
ご覧になりたい方はこちら→「透析医療について その①」
今回入院料のインパクトが強かったことと、連携に関する改定を読み解いていくほうに気を取られ、気が付くと、予想以上に厳しい内容の改定となり、驚いているのが現状でございます。
詳細は疑義解釈通知(Q&A)を見てみないとはっきりとは申し上げられない状況ではありますが、3月5日の告示内容を踏まえ、改定内容を見ていきたいと思います。
基本的な考え方としては、下記のスライドの通り、
(1) 糖尿病の方が重度化し、透析に移行することを予防する」というところで、透析の導入を押さえていくこと
(2) 腹膜透析や腎移植等により生活(QOL)を重要視した対応が必要ではないかというところ
(3) 施設の規模や実績に応じて、効率的な評価、適正化をしていくというところ
これらの三点が議論されています。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅱ (20180305:厚生労働省説明会資料)より
この中で腹膜透析への導入について高い評価がついてきました。腹膜透析は夜間帯に交換することになり、日中の活動については比較的影響がないものとして評価されています。
諸外国に比べ、日本では血液透析を導入することが多く、この腹膜透析を導入できる施設が少ないという現状はあります。
私が以前所属していた医療機関では、担当の医師の意向もあり、まずは腹膜透析にて管理することを勧められていましたが、周辺の医療機関ではほとんどがお勧めされていなかったのが現状でした。
この腹膜透析について、導入期加算の算定要件の中に「説明要件」入ってきたことと、実際に実施している医療機関ではさらに高い導入期加算が評価されています。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅱ (20180305:厚生労働省説明会資料)より
今回の改定のポイントで、重度化予防の観点でもしっかり対応をされているところには加算という形での評価がついてきております。それが次のスライドです。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅱ (20180305:厚生労働省説明会資料)より
さて、今回一番大きく変更になったところは、透析の基本料金の算定方法です。これは規模が大きな透析医療機関はロスが少なく、薬価や材料等の評価も下がったことから、見直しが行われたという、セミナーでのご説明がありました。
しかしながら、今回「コンソール台数 25台」を基準に評価を変えるということは、私自身想定外のことで、少なからずびっくりしております。かなりの打撃を受けることになるのではないのでしょうか?
まだ、疑義解釈通知が出されているわけではないので、断言的なことは言えません。
しかし、今回の新旧対照表等の告示内容及び審議会内容を見ていくと、かなりの医療機関で、大幅な減算に該当するのではないかと予測されます。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅱ (20180305:厚生労働省説明会資料)より
厚労省のスライドの施設基準の部分を抜き出したものです。
では、この計算式がどうなるのか・・・
平成30年3月5日に出された告示の追加資料の中に、施設基準の届け出に関する通知文があります。その中には、以下のように記載があります。
人工腎臓(慢性維持透析を行った場合1及び2に限る)にかかる透析用監視装置一台当たりのj038人工腎臓を算定した患者数の割合
ア 1月から12 月までの1年間の実績をもって施設基準の適合性を判断し、当該要件を満たしている場合は、翌年の4月1日から翌々年の3月末まで所定点数を算定できるものとする。
イ アにかかわらず、新規に届出をする場合(平成 30 年3月 31 日において現に人工腎臓を算定していた保険医療機関が、平成 30 年4月以降において当該点数を算定するに当たり行う届出を含む)は、届出前 12 月の実績(届出前 12 月の実績がない場合は届出前3月の実績)をもって施設基準の適合性を判断し、届出のあった月の末日までに要件審査を終え、届出を受理した場合は、翌月の1日から所定点数を算定することができるものとする。また、月の最初の開庁日に要件審査を終え、届出を受理した場合には当該月の1日から所定点数を算定することができるものとする。
ウ イに該当する場合は、所定点数を算定し始めた月の翌月初日から同年 12 月末までの実績をもって施設基準の適合性を判断(透析用監視装置一台あたりの J038人工腎臓を算定した患者数については、施設基準に規定する透析用監視装置の台数及び J038人工腎臓を算定した患者数の各月の合計を月数で除して得た値を用いて求める)し、当該要件を満たしている場合は、翌年の4月1日から翌々年の3月末まで所定点数を算定できるものとする。
エ アにかかわらず、届出前 12 月の実績をもって施設基準の適合性を判断し、適合する施設基準に変更が生じた場合は、変更の届出を行うことができるものとする。
<計算ルール>
① 1月から12月までの1年間の実績・・・満たしていれば翌年の4月~3月までの算定
② 新規に届出をする場合は、直近12か月の実績(12か月に満たない場合は3か月)
⇒今回 4月の届け出の場合は4月〇日までに届出
③ 計算式:施設基準に規定する透析用監視装置の台数及び J038人工腎臓を算定した患者数の各月の合計を月数で除して得た値を用いて求める
※月の途中で算定を開始した場合は、翌月の1日から12月末日までの実績で適合性を判断する
なお、現時点で出されている「届出用紙(案)」は以下の通りです。
(出典)厚労省資料 Ⅲ―1 通知その6-5 (20180305追加資料)
さあ、皆さんの医療機関様はこの届出の様式に当てはめて計算をされてみて如何でしょうか?
患者数は12か月の平均数で出すようになっていますので、ぜひ一度見られてください。
なお、この資料は正式な通知資料ではありません。正式な通知は3月31日に出される予定となっています。また、今回の改定にて1又は2を算定予定の医療機関様は、4月の届出が必要になりますので、十分にご注意ください。
また、水質確保、品質管理、透析機器安全管理委員会等の設置要件もあります。これは透析液水質確保加算を算定されていた医療機関は対応されていることだと思いますので、加算が本体の加算ということになり、10点に統一され、それと同時に透析の基準の中に組み込まれています。この辺りも非常に厳しいといわれる所以です。
出典:平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅱ (20180305:厚生労働省説明会資料)より
濾過透析についても、時間ごとの評価に代わるとともに、厳しい改定となります。
透析導入を何とかして減らしたい・・・、透析導入を何とか遅らせたい・・・という厚労省の思惑でしょうか?実際に透析が開始されると、週に2回または3回の通院が必要になり、かなりの社会的生活に制約がかかることになります。健康寿命を延ばすという意味合いでも、「透析を予防する努力」、また「透析導入以外の方法を検討する」というところに力を入れていく必要があるのかもしれません。
<参考資料>
◆平成30年度診療報酬改定関係資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000196352.html
◆平成30年度診療報酬改定の概要 医科Ⅱ (20180305:厚生労働省説明会資料)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000197551.pdf
◆平成30年度診療報酬改定の概要(20180305 厚生労働省説明会資料)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000197551.pdf
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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