【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】介護医療院について

長 幸美

アドバイザリー

<参考>【速報】平成30年度診療報酬改定資料 告示出ました!

今回の改定で特徴的な内容の一つが「介護医療院」だと思います。

医療・介護の観点から「地域包括ケアシステム」を推進するために、「病床の機能分化」が進んできました。それと同時に「地域包括ケア病床」をはじめとする医療機能・介護機能について「地域包括ケアシステムの実践するために、医療機関として、介護事業所として、何をしますか?どのようなサービス提供をしますか?」ということを問われているように感じています。

 

今回は、介護医療院についてみていきましょう。

昨年出てきていた3類型の中の下の赤枠の二つが介護医療院として、新たに「医療機関の中の住まい」という形で評価されています。

図1

出典:介護療養型医療施設及び介護医療院(参考資料) 社保審介護給付費分科会第144回

介護療養病棟、医療療養病棟の25対1の医療機関、老健(転換型老健含む)にとっては、現状の入院患者や入所者をもとにシミュレーションを行い、医療圏内の医療・介護の状況を充分に分析して、どのような方向性に持っていくのかを検討する時期に来ています。

 

この3年間は移行に関して様々な説明を必要とし、その手間について1日930円の加算がついています。ご褒美のようなものですね。この920円、バカにできる金額ではありません。

50床の病棟を仮に転換した場合、単純計算ですが、月140万円、年間1600万円の金額がついています

3年間、さらに算定できる期間は、1年間の時限付きの加算ですので、介護医療院をお考えの療養系、老健をお持ちの医療機関は、ぜひ経過措置がついているこの半年にしっかりとシミュレーションをして考えていかれることをお勧めします。

 

【介護医療院の基準について】

介護医療院については、社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」の議論の整理において、以下の二つにサービスに整理されました。

Ⅰ型 ・・・介護療養病床(療養機能強化型)相当のサービス

Ⅱ型 ・・・老人保健施設相当以上のサービス(Ⅱ型)

この二つのサービスの「人員・設備・運営基準等」については以下のとおりと決められています。

 

<人員・設備・運営基準等>

ア.サービス提供単位

介護医療院のⅠ型とⅡ型のサービスについては、介護療養病床において病棟単位でサービスが提供されていることに鑑み、療養棟単位で提供できることとする

ただし、規模が小さい場合については、これまでの介護療養病床での取扱いと同様に、療養室単位でのサービス提供を可能とする

※    1有床診療所や1病棟しか取れない病院の場合が該当するものと思われます。

 

イ . 人員配置

開設に伴う人員基準については、日中・夜間を通じ長期療養を主目的としたサービスを提供する観点から、介護療養病床と介護療養型老人保健施設の基準を参考に

ⅰ 医師、薬剤師、看護職員、介護職員は、Ⅰ型とⅡ型に求められる医療・介護ニーズを勘案して設定し、

ⅱ リハビリテーション専門職、栄養士、放射線技師、その他の従業者は施設全体として配置をすることを念頭に設定することとする

ウ.設備

療養室については、定員4名以下

1人あたり床面積を8.0 ㎡/人以上とし、

療養環境をより充実する観点から、4名以下の多床室であってもプライバシーに配慮した環境になるよう努めることとする。また、療養室以外の設備基準については、介護療養型医療施設で提供される医療水準を提供する観点から、診察室、処置室、機能訓練室、臨床検査設備、エックス線装置等を求めることとする。その際、医療設備については、医療法等において求められている衛生面での基準との整合性を図ることとする。

※    あくまでも医療施設としての配慮がなされたようです。

エ.運営

運営基準については、介護療養型医療施設の基準と同様としつつ、他の介護保険施設との整合性や長期療養を支えるサービスという観点も鑑みて設定することとする。なお、これまで病院として求めていた医師の宿直については引き続き求めることとするが、一定の条件を満たす場合等に一定の配慮を行うこととする。

オ.医療機関との併設の場合の取扱い

医療機関と併設する場合については、医療資源の有効活用の観点から、宿直の医師を兼任できるようにする等の人員基準の緩和や設備の共用を可能とする。

カ.ユニットケア

介護医療院でもユニット型を設定することとする。

以上の基準を一覧表にして、介護療養型病床と転換型老健との比較をしたものが、以下の表となります。

図2

図3

出典:介護療養型医療施設、介護医療院の報酬・基準について 社保審介護給付費分科会第152回

介護医療院の基本報酬としては、Ⅰ型、Ⅱ型ともに3段階に分かれることになり、基本料金の設定も出てきていますので、ここで整理しておきましょう。

 

【介護医療院Ⅰ】

基本報酬は、次の表のとおりです。介護療養病床がベースになっています。

図4

図5

 

*1 重篤な身体疾患を有する者とは・・・

NYHA分類III以上の慢性心不全の状態

Hugh-Jones分類Ⅳ以上の呼吸困難の状態又は連続する1週間以上人工呼吸器を必要としてる状態

各週2日以上の人工腎臓の実施が必要であり且つ、次に掲げるいずれかの合併症を有する状態

なお、人工腎臓の実施については、他科受診によるものであっても差し支えない

イ 常時低血圧(収縮期血圧が90mmHg以下)

ロ 透析アミロイド症で手根管症候群や運動機能障害を呈するもの

ハ 出血性消化器病変を有するもの

ニ 骨折を伴う二次性副甲状腺機能亢進症のもの

Child-Pugh分類C以上の肝機能障害の状態

連続する3日以上、JCS100以上の意識障害が継続している状態

現に経口により食事を摂取している者であって、著しい摂食機能障害を有し、造影撮影(医科診療報酬点数表「造影剤使用撮影」)又は、内視鏡検査(医科診療報酬点数表「喉頭ファイバースコピー」)により誤嚥が認められる(喉頭侵入が認められる場合を含む)状態 等

 

*2 身体合併症を有する認知症高齢者とは・・・

「身体合併症を有する認知症高齢者」とは、次のいずれかに適合する者をいう

a 認知症であって、悪性腫瘍と診断された者

b 認知症であって、次に掲げるいずれかの疾病と診断された者

⒜ パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病)

⒝ 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群)

⒞ 筋萎縮性側索硬化症

⒟ 脊髄小脳変性症

⒠ 広範脊柱管狭窄症

⒡ 後縦靱帯骨化症

⒢ 黄色靱帯骨化症

⒣ 悪性関節リウマチ

認知症高齢者の日常生活自立度のランクⅢb、Ⅳ又はMに該当する者

 

図6

 参照:「今後認知施策方向性 ~ ケア流れを変える」より

なかなか厳しい基準が設けられていますが、機能強化型の基準とほぼ同じものになっています。

医療機関なので、「医療提供」を行うことを「実績として求められているものと考えられます。

 

次に「介護医療院Ⅱ」に基準についてみていきましょう。こちらは「転換型老健」の基準がベースになっています。

 

【介護医療院Ⅱ】

基本料金は以下の通りです。これは「転換型老健」がベースになっています。

図7

 

基本報酬にかかる医療処置又は重度者要件(Ⅱ型基本サービス費の場合)

1.下記のいずれかを満たすこと

喀痰吸引若しくは経管栄養が実施された者の占める割合が15%以上

著しい精神症状、周辺症状若しくは重篤な身体疾患が見られ専門医療を必要とする認知症高齢者の占める割合が20%以上

著しい精神症状、周辺症状若しくは重篤な身体疾患又は日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ専門医療を必要とする認知症高齢者の占める割合が25%以上

2.ターミナルケアを行う体制があること

介護医療院は、これからの3年間は「療養型、転換型老健」からの転換が認められており、4年目以降は15対1などの他の病床からの転換、さらに6年目以降は一般の事業体からの参入も認められるようになることが決まっています。

但し、転換上ネックになっていることは、「病床ではなくなる」ということでしょう。

医療機関としては、どうしても「病床」かどうかというところが大きな問題となってきます。

 

確かに、介護医療院は病床ではありません。しかしながら、この「介護医療院」という名称に「介護と医療を融合させた施設」という想いも込められているのではないでしょうか。

今回の改定は、「そもそも・・・」「何を求められているのか」という本来の意味合いをしっかりとみていかなければ、判断を誤ってしまいそうです。

 

現在の介護療養病床は要介護度(ADL)の状態は低く、手がかかる状況があるが、医療区分は低く、時に医療行為を行っていないということもわかっています。医療機関の昨日としては「医療行為」「医療管理」が必要であることが客観的に求められています、そしてその医療行為については「アウトカム(成果・実績)」が求められています。

では、介護医療院の実績とはなんでしょうか・・・

これが、上記の重症者の受入れや認知症の受入れ、看取りということになります。

 

始めにご説明した「移行促進のための加算」のほか、

・排泄支援加算    100単位/月

・低栄養リスク改善加算  300単位/月

 

その他、以下のような加算が認められています。詳細は白本が出て、通知の中で疑義解釈の中で明確になってくるでしょう。

現時点でわかっている加算関係を以下に示します。

基準は単純には算定できる状況ではないと思います。しかしながら、介護医療院に求められている機能を追求し、地域ニーズや利用者ニーズに応じていくためには必要なものであり、これらの加算関係は取得を検討されることをお勧めします。

図8.1

図8.2

 

<参考資料>

〇中央社会保険医療協議会 総会(第389回) 議事次第

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000193003.html

 

〇別紙1 診療報酬の算定方法 1 医科診療報酬点数表(鍼灸対照表)

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193524.pdf

 

〇社保審-介護給付費分科会 第 158 回(H30.1.26) 別紙 「平成30年度介護報酬改定 介護報酬の見直し案」

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000192311.pdf

 

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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