どうかわる? 平成28年度診療報酬改定
長 幸美
アドバイザリー2025年いわゆる『団塊の世代が全員75歳に到達する時期』まであと10年を切っています。その頃には、3人に1人は高齢者、そして、85歳を超えると2人に1人は認知症を発症するとも言われ、『地域で暮らす人をどう支えていくのか?』ということが大きな課題となってきます。
昨年から『病床機能報告』が義務化され、レセプトの電子請求データ(NDB)とDPCデータ提出により、医療機関はガラス張りとなっています。これらのデータを駆使して都道府県ごと、二次医療圏ごとの医療の状況や必要病床の推計表が出されていますが、これは病床数を削減することが目的ではなく、自院の状況をきちんと把握して、立ち位置がどこなのか、きちんと判断することにあるとされています。地域の調整会議を行い、『地域に住まう「おひとり様」・「老老介護」をどう支えていくのか?』ということを考えていく、地域包括ケアシステムの構築が重要課題であるとされています。
それと同時に地域の中での医療・介護の需要と供給を考えていく、つまり平成28年度の診療報酬改定はその『地域医療構想を後押しする』改定であると位置づけられています。地域医療構想が実現すれば病院の『病気を治す』機能が劇的に変化します。つまり、単に治療するだけではなく『治し、支える医療』の提供が必要になり、在宅医療のスタンスが変わってくるでしょう。また、患者さんの流れもそれに伴って変化してくることが予測されます。
介護保険では「要支援」の方の介護サービスが、平成29年度までに自治体が行う『総合事業』に移行することが決められ経過措置の期間となっています。「おひとり様」や「老老介護」など地域の『お互い様(互助)』の心がないと生活は困難です。この『地域医療構想』を実現するためには『地域包括ケアシステム』は必要で、それは、地域の中で暮らし続けることができるための『街づくり』であると解されます。「退院後どう支えていくのか?」「慢性期疾患を抱えた高齢者をどう健康管理していくのか?」問題は山積みです。地域の中で暮らしていくためには、入院患者には安心して在宅に戻るための『退院支援』が必要です。また、地域の中で生活を続けるためには、『多職種連携によるチーム医療』を在宅にも導入し、医療・介護の垣根を越えた『支え手』が必要になります。
今回の改定は、3年後に控えている医療・介護の同時改定を視野に入れた改定であることがポイントです。「どのような医療を提供するのか?」ということを考える時期に来ています。医療機関に勤務される医療職の皆様、「病院だから介護の事は関係ない!」と思わないで下さい。介護を知らなければ『退院支援・在宅支援』はできません。同様に、介護事業所の方も「診療報酬改定は関係ない!」というわけにはまいりません。医療保険が変われば、患者の流れが変わります。
私共、佐々木総研では、医療機関・介護事業所の皆様にいち早く診療報酬改定の情報をお届けしたいと思っています。できる限り早い時点で情報を提供してまいります。
佐々木総研ホームページの改定速報を、是非ご活用ください。
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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